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創作に対する妄想力(その4)

第4章 1日100デザイン

たくさんインプットし終えたら、いよいよアウトプットの時間です。
この段階で、ようやく実際にデザインをする対象物の画像や実物を研究します。これまでに詰め込んできたたくさんのデザインと対象物を頭の中で掛け合わせることで、さまざまなデザインが浮かんでくるでしょう。
建築物のシルエットとバッグを掛け合わせて……、虫のディティールとシューズを掛け合わせて……、車の流線形のラインと財布を掛け合わせて…etc.
1章で触れたペルソナを思い浮かべながら「モノに溢れすぎたこの時代に新しいゼロイチのデザインというのは無理に等しい」という前提も思い出してください。無理矢理生み出したものが「今までにない、カードもお札もコインも入らない財布」なんてことにはならないように。。。
財布の基本は財布、バッグの基本はあくまでもバッグ。保たければいけないラインがあります。

オリジナリティを持たせようとすると、段々とコッテリしていきます。面白いデザインではあるものの、美しいデザインとは言えなくなっていく。
自分らしさのコッテリをたくさん出した後はそこからどれだけ引き算が出来るかです。
yuhakuではグラデーションを活かすためにも”シンプルだけど特徴がある”デザインを追求しています。料理に例えるなら、素材を活かした”絶妙な塩加減”を追求しているのです。自分らしさを感じる塩加減の追及こそが、ブランドを作ると思っています。

また、ここでは整ったデザインだけではなく、ダサいと感じるようなデザインも絞り出せるだけ絞り出し、それらのブラッシュアップにも挑戦してみましょう。第1章で培った「こうすればもっと良くなるのに!」の気づきに基づく編集を、自分自身のデザインに当てはめて行ってみるのです。頭ではどうすればいいか分かっているつもりでも、手を動かしてみると実際はなかなか思ったようにいかないものです。※ここで行う試行錯誤がデザイン力を磨いてくれます。
自分が靴の販売のアルバイトをしながらデザインしていた時は「1日100デザイン」を目標に毎回50以上のデザインを書き出していました。もちろん、整ったデザインばかりではなく、イケていないデザインでも思いつく限り描き出しました。
今日はトートバッグ、明日はバックパックなど、形状やジャンルを変えて自分自身に出題してみるとやりやすいでしょう。
毎日の通勤時間や寝る前のひとときにインプットし、月末の休みの日の前日にアウトプットする、というようにルーティンを作ることもオススメです。そして、その100の中から良いものをピックアップし、設定したペルソナに似合うものであれば、世の中に出しても受け入れてもらえるデザインになっているはずです。


そして、何より重要なことはPC上や紙の上だけでのデザインではなく、実物と向き合う事です。二次元では感じなかった光と影、素材とのバランス、構造的に現実的か。またたくさんの壁が出てきます。
ある程度の規模の企業になってくると、1つの製品を生み出すにもクリエイティブディレクター、デザイナー、コーディネーターなどたくさんの役割により分業されていきます。いろんな人の知識や意見により優れたものになることもありますが、伝言ゲームのように段々と自分の構想から外れることもあります。そのため、自分自身の理想が明確なのであれば、最終着地点を生産チームにどれだけ伝えていけるのかがポイントになります。
自分は、これまでに多くの遠回りをしてきたので、革製品の染色と縫製はもちろんのこと、木工、板金、溶接など、さまざまなモノに触れ、実際の作業に携わる機会がありました。そのおかげで、モノづくりにおいてアナログな問題が発生しても、おおよその事であればどのように解決すればいいのか分かりますし、自分自身で解決することができます。
だからといってモノ作りに関わる人の全員が木工や板金、溶接などを習得することは難しいでしょう。まずはゼロから最後まで、自分自身の製品に手を動かして携わることで新たな発見に繋がると考えます。

次はついに最終章「花ひらく妄想力」 (2023年内 更新!)


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