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アーティストになりたかった自分が経営者になった今 (Vol.02)

アーティスト(革作家)としてではなく、ブランドづくりを選んだからには、ある程度の数が作れないことには成立しません。

手染めのグラデーションのカラーをブランドのアイコンとしていくことに決めましたが、全ての工程が手作業であることによる生産性の問題が、売上拡大に紐づく最も大きな課題の一つでした。

デザインは真似されるが、技術は簡単に真似できない。
また、モノマネはできてもモノマネ止まりとなるよう、今の技術に甘んじること無く、常に進化をさせていく。そうした結果、真似できない技術となる。
理論的には簡単に言える話ですが、正直、技術の革新は簡単ではありません。
まぁ、簡単だったら直ぐに追いつかれ追い越されるわけで...
ただ、この技術は、自分の持って生まれた感覚があったからこそ成し得ることができたのですが、自分の得意分野を活かせた結果となりました。
生産性の問題として、染色できる職人を育てる必要がありましたが、新しい工芸として職人を育てることは、労力が多大にかかるため誰もやりたがらないことです。

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それだけではなく、そこにはいくつもの大きな壁がりました。
それは、自分を除く誰しもが未経験…であるということ。
例えば、家具職人であれば、「学校で学んでました。」「他の工房でやっていました。」のような経験者がいますが、全くの新しいジャンルの仕事になるので、経験者というのは世の中を探してもゼロ...
採用基準をどうするか...最初はそれが分からなかったために、鞄作りの学校卒や、知り合いの紹介など、ものづくりしたい気持ちを優先し採用しましたが、やはり向き不向きもあり、なかなかうまく行きませんでした。

さてどうする...
そこに答えとなる人物が現れました。
芸術系の大学で絵画を学んだ経験を持つ一人が履歴書を送ってきたのです。
「これだ!!」自分も絵画から着想して染色しているのですから、絵画経験者が適任ではないか!!
今考えれば、気付くのが遅いですよね。

まず、色に対する感覚と革との対話が出来ないことには、職人としての成長も見込めませんが、ただ、伝統工芸などの職人技術の様に「見て学べ、見て盗め。」では、自分の思い描くブランドには到底届かないでしょう。
技術の習得については、感覚以外の部分の技術マニュアルを作るのが、手っ取り早いのは分かっていても、まだ発展途上の技術においてマニュアルを作成してしまうと、技術の進歩を止めてしまうのではないかとも考えていました。

さてどうする... Part2(笑)
そこで、生まれた仕組みが、このようになります。
自分が開発を行い、職人が量産すると同時に、作業を分担する中で必要なマニュアルを作り出すというのもです。
この頃より、自分は職人として毎日のように手を動かすことを止め、デザインと頭を働かせることだけにシフトしていきました。
担当が分かれたことにより、よりスムーズに動き始めました。
それがyuhakuにとっての組織化への第一歩だったのでした。
まぁ、こんなふうに書いていますが、自分の能力不足に呆れて、マニュアルづくりをしてくれたというのが現実です。
この染色部のマニュアル作成が日常化したおかげで、現在ではびっくりするくらいしっかりとしたマニュアルがあり、まるで教科書レベルです。
そのマニュアルの存在がyuhakuのクオリティを守り、お客様の信頼を保っています。

注釈:マニュアルには利点だけではなく欠点もあります。こちらはまた、後ほど。

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次に、前職では実績を作っても一切反映されなく悔しい思いをした事を思い出し、能力と実績に対する評価に関して考えました。

さてどうする... Part3(苦笑)
仕事に見合う正当な給与が与えられれば...
職人仕事とは、何年やってどこまで成長すれば、給与が上がるのか?幾らもらえるのか??不明瞭な部分が多い職種です。自分は、そこが明確になっている職人仕事はそれまで聞いたことがありませんでした。調べても出てきません。
基準が見えないということで人間は不安になり、成果にも繋がらない。
そこで、着実に付いていく実力に対する報酬の見える化が必要になってきます。
手仕事なのでもちろん一気に大きな成果は得られませんが、安心とやる気には繋がります。
職人仕事としては異例であるかもしれませんが、異業種での常識をヒントに、人事制度を取り入れ、明確な報酬形態を作ることにしました。
5年後の未来は、社員全員が一般企業に就職するよりも、高いやりがいと、それに見合う給与がもらえる企業になる計画をしています。
まずは、このコロナ禍に耐えることが最優先ですが、この困難を乗り越えてこそ、それが100年企業にも繋がるというものです。

続けられる企業づくりをすることで、歴史を変えるえること。
まだその時は来ていませんが、、、
設立100年のときには何を商売としているかは分かりませんが、会社が社員を育て、社員が会社を育てる思想であればyuhakuはきっと存在しているでしょう。
文章では、すんなり問題もなくここまで来れたような書き方ですが、理想を現実にするには時間も費用も多大にかかります。
しかも、小さな零細企業。取捨選択を誤れば直ぐに沈んでしまう小さな船です。
あらゆる問題が波のように降り注いできましたが、高い目標があったからこそ、乗り切れたのでしょう。

今だから言える事としては、今までの人生で一番ラッキーだったのは、本当にたくさんのアンラッキーがあったことです。

不運は、自分の甘さ、無知が生んでいることを学びました。
しかし、その不運こそが自分を育て、この様な思想に至るまで成長できたことに感謝しきりです。

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本題に戻りますが、今回のキーワードは、「組織化」「企業化」です。

・個人としてでは成し得ないことばかりであり、ブランド構築には企業としての力が絶対的に必要である。
・ブランドとして社員を育て、社員が会社を育てる理念が必要。
・全員が同じ方向を見て行ける指針が必要。


そこで、創業から10年の年にようやくながら理念を掲げました。
遅いことは百も承知ですが、

・変化する世の中と共に変わる自分の考え
・変えないと生き残れなかった過去
・自信を持てなかった過去の自分のでは断言する事が到底できなかったこと

今であれば言葉にすることが出来る!!
10年間ぶれていない思想はないかと考えました。
その言葉は、すぐに頭に浮かびました。
何度考え直してもこの言葉だけでした。


それは、

「想像し創造する」


ゼロイチを作るにあたり、最も大切な考えと行動が伴った言葉です。
また、ブランド理念として、「日々の暮らしに彩りを」と掲げました。

yuhakuは、毎日の暮らしの中にyuhakuの色が一輪の花のように添えられることで、心豊かになるものづくり、コトづくりを理念としていきます。


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