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高機能素材Weekに行ってきた ~CFRP/CFRTPについて~

先週、幕張メッセで開催された高機能素材Weekに顔を出してきました。今年は1000社を超える会社が出展していたそうで、会場の端から端まで歩くだけでも大変でした。様々な材料や製造設備、検査装置などが展示されていましたが、その中でも特に注目度合いが高かった分野の一つであるCFRPおよびCFRTPについて、今回はTech Structureによる整理を行ってみたいと思います。

Tech Structureについてはこちら:
https://note.com/yugo_chikata/n/n81e835e53811

CFRPとCFRTPの違い

まずは、CFRP(carbon fiber reinforced plastic / 炭素繊維強化プラスチック)のTech Structureを作成しました。

図1

CFRPは、「軽量である」と「高強度・高剛性である」といった特性を併せ持つ「炭素繊維」を「母材となる」材料と組み合わせた、自動車や航空向けの部材として活用されている材料です。母材には主にエポキシ樹脂のような「熱硬化性樹脂」が用いられていますが、これは熱硬化性樹脂が「炭素繊維に含浸しやすい」という機能を持っていることが理由です。
2種類以上の材料を一体となるように組み合わせ、それぞれの特徴を活かせるようにした材料は複合材と呼ばれますが、CFRPもカーボン系の代表的な複合材と言えます。

さて、それでは次に、CFRPにある課題を解決できる材料として注目されているCFRTP(Carbon Fiber Reinforced Thermo Plastics / 炭素繊維強化熱可塑性樹脂)について考えていきましょう。

CFRPとCFRTPの違いは、熱硬化性樹脂ではなく「熱可塑性樹脂」を用いる点にあります。熱可塑性樹脂には、「複雑な成形に対応できる」「短時間で成形できる」「リサイクルできる」といった機能があります。「短時間で成形できる」「リサイクルできる」といった機能は、「量産品に対応できる」ために必要な機能です。これらの機能が付加されれば、自動車や航空といった分野以外にも、より民生品に近い分野での活用を期待することができそうです。

図2

しかし、熱可塑性樹脂には、母材として必要である「炭素繊維に含浸しやすい」という機能がありません。これでは、そもそも複合材を形成することができなくなってしまいます。この問題をどうやって解決するのか、材料開発のポイントと言えそうです。

色々な解決策が世の中では検討されているようですが、今回の展示会の出展企業には、「開繊技術」を導入している企業が見受けられました。開繊というは、繊維の束を解きほぐし、薄い形状に加工することです。これにより、「樹脂を十分に含浸させる」という機能を炭素繊維に付与させることが可能となりました。

図3

このようにして、炭素繊維と熱可塑性樹脂とが組み合わされた材料がCFRTPになります。含浸しにくい熱可塑性樹脂であっても、炭素繊維の方に工夫を施すことで総合的な改善を図ることができた、というのが興味深いのではないかと思います。

CFRTPの用途

今回は展示会でCFRTPを紹介していた各社に、想定している主な用途をヒアリングしてみました。結果は以下の通りです。

企業A:簡易チェア、スパイク、楽器
企業B:スマホケース
企業C:ロボットアーム、治工具、スピーカーカバー
企業D:導電マット、断熱材
企業E:自動車、ドローン

企業Aや企業Bは、「複雑な成形に対応できる」「量産品に対応できる」というCFRTPならではの特徴を活かした用途展開を検討しているようです。特に企業Aはチェアメーカー、靴メーカー、楽器メーカーなどと連携し、各商品の共同開発を進めているそうで、自社で積極的にアイデアやパートナーを探索しながら、市場の獲得・拡大を検討している姿勢が印象的でした。

企業Cは、「複雑な成形に対応できる」という特性を活かして、自動車や航空の分野以外で産業向けの展開を進めているようです。高剛性であるという特性を活かすと、ロボットアームや治工具の位置のブレを低減することができます。また、同様の特性を活かして、CFRTPをスピーカーのカバーに利用するというお話もありました。カバーが振動しない分、より綺麗な音を出すことができるということで、某大型テーマパークにも採用されているそうです。

企業Dや企業Eは、従来と同じ産業向け部材としての用途になりますが、「リサイクルできる」といった点が、既存のCFRPよりも優れているというアピールをしていました。天然繊維やグリーンコンポジットを利用することを自動車メーカーから要求されることが増えており、その対応に追われている様子です。

各社とも色々な検討をしていますが、どの機能を活かすか、といったところで材料開発の方向性や想定する用途が異なっているところが面白いですね。

おわりに

今回は展示会(高機能素材Week)のテーマを題材にCFRP/CFRTPの開発動向について書いてみました。
技術調査という仕事柄、色々な展示会に頻繁に顔を出していますが、昨今のWEBで手軽に情報が手に入る時代における展示会の在り方には考えさせられるものがあります。その辺の思う所についても、また今度お話ししたいと思います。


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