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話題のパワーアシストスーツを調査・分析してみた

今回はパワーアシストスーツの開発動向を調査・分析してみました。
パワーアシストスーツ、または、パワードスーツ、パワードウェア、マッスルスーツなど様々な呼ばれ方がありますが、重量物の持ち運びにかかる負担を軽減するアイテムとして、現在注目が集まっている製品の一つではないでしょうか。日経トレンディの2020年ヒット予測にも「人間拡張ギア」としてランキングされ、話題になっています。

パワーアシストスーツは、身体に装着することで使用者の動きをサポートしてくれる機器です。大きくは歩行支援やリハビリを目的とした「自律支援型」と、工場などで運搬作業の重労働を補助する「作業支援型」に大別されます。使用者が全身サイボーグに扮したかのようなになる大掛かりな製品もありますが、最近は特に腰への負担軽減を狙い、手軽に着用できる製品が多く出てきました。例として、今年あったニュースを何点か取り上げてみました。

JALの手荷物・貨物搭載作業現場にATOUNのパワーアシストスーツが導入(2019.2.12)

台風19号 「HAL」で復旧作業 サイバーダイン 大子町に6台提供(2019.10.21)

イノフィスが10万円台のアシストスーツ、腰痛防止に「1家に1台」の時代に(2019.9.24)

今後、東京オリンピック・パラリンピックに向けた準備もありますし、作業支援型のパワーアシストスーツの需要はますます拡大していきそうです。今回は作業支援型のパワーアシストスーツについて、各社の取り組みの調査や分析を行ってみました。

パワーアシストスーツの基本原理

まずは基本的なパワーアシストスーツの動作原理をTech Structureにしてみました。

Tech Structureとは何かをご存じでない方は、先にこちらをご覧ください:
https://note.com/yugo_chikata/n/n81e835e53811

図1

「重量物を持つ際の腰の負担を軽減する」ことは、すなわち、「腰や膝を曲げた使用者を直立姿勢に戻す」ことです。これは、「フレーム・ベルト」が「スーツと身体を固定する」他に、「腿や背中を引き上げる」といった機能を果たすことで実現されます。また、そのためには「トルクを発生させる」といった機能を持つ「電動モータ」と「電力を発生させる」といった機能を持つ「バッテリ」が必要となります。

このようなパワーアシストスーツですが、現在は多数の企業が取り扱っており、それぞれの製品には異なる特徴がありそうです。以下では、先ほどのニュースにも取り上げられ話題性の高い3社(ATOUN社、CYBERDYNE社、イノフィス社)の製品の内容を調査し、その特徴を比較してみます。

ATOUN

パナソニックグループのATOUNの製品は、「フレーム」が「カーボン樹脂」でできており、軽量化が図られています。これにより、「快適に使用できる」という付加価値が生み出されました。また、同製品は「角度センサ」を搭載しており、これは「身体の傾きを検知」し、「左右のモータを個別に制御する」といった機能を持っています。これにより、「適切なタイミング・スピードで動く」ことができます。これも「快適に使用できる」という付加価値を向上させるアイディアと言えるでしょう。

図2

ATOUNの製品コンセプトは、「あうんの呼吸で腰をたすける」とあり、物流・倉庫、建設、農業などの分野での現場作業を支援することを想定されているようです。

CYBERDYNE

CYBERDYNEは筑波大学発のベンチャーで、ロボットスーツ『HAL』はパワーアシストスーツの先駆けとも言える製品です。様々なシリーズが発表されていますが、各製品には「サイバニック随意制御システム」というコア技術が共通して用いられています。これは、「皮膚センサ」により「生体電位信号(脳からの信号)を読み取る」といったもので、これにより「使用者の意思に従って動作する」ことが可能となっています。こちらは、「適切なタイミング・スピードで動く」といった要求を実現させるための別のアプローチと言えるのではないでしょうか。

図3

イノフィス

現在最も話題になっている製品の一つが東京理科大学発のベンチャーであるイノフィスの『マッスルスーツEvery(エブリィ)』ではないでしょうか。タレントの浜田雅功さんによるCMが展開されたり、家電量販店に陳列されたりと、一般消費者向けの製品としても注目され始めています。こちらの製品の最大の特徴は、電動モータではなく、空気圧式の人工筋肉が駆動源に用いられていることです。開発者の小林氏によると、「力強く、かつ滑らかに動かせるもの」を第一に考えた結果、こちらの技術を採用することになったそうです。

図4

電気を用いないシンプルな構造を実現しているため、価格の観点でも優位性があることが、一般消費者向けの利用を想定できる要因にもなっていそうです。

まとめ

3社のTech Structureを比較すると、それぞれの製品の中での同じ点・異なる点が理解しやすくなったのではないでしょうか。従来のパワーアシストスーツをベースに使いやすさを追及したATOUN、生体電位信号検知という独自技術をコアとしたCYBERDYNE、空気という新しい駆動原理を開発して一般消費者向け製品を実現したイノフェス社、といったところだと思います。

図5

今回取り上げた3社以外にも、ジェイテクト社が自動車のステアリングで得た知見を活用して業界に参入してくるなど、今後まだまだ色々な企業が出てきそうです。

調査結果を眺めていると、効果の感じ方に個人差がありそうなこと、腰ではなく腕の負担は低減できないこと、などが今後の改善すべき課題として思い浮かびます。もし、あなたがどこかの企業の製品の購入を検討しているのであれば、ぜひ今回のような分析をしてみてください。Tech Structureを活用しながら各社の製品を分析すると、業界全体の開発動向や重要視すべきニーズなどを把握することができます。

また、同様の考え方で、アライアンス先の選定もできると思います。分析した結果の中から新しい潜在ニーズや自社とシナジーのある技術を発見することができれば、そこが事業拡大の糸口にもなるのではないでしょうか。

Co-cSでは、Tech Structureの考え方を通じて、様々な業界でのモノづくり情報を調査・分析した事例があります。一緒にモノづくり・コトづくりを加速させていきましょう!



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