私たちには、背中を預けられる「バディ」が必要だ。
「隣の人と手を組んで。その手を上にあげて見せてください。はい、その相手があなたのバディです」
小学一年生の初夏、プール開き。
人生初めての水泳の授業で、担任の先生がそう言った。
背の順で二列に並んでプールサイドに並ぶ36人に向けて、先生は声を張って、こう続けた。
「バディは、あなたの命を守る人です。あなたは、バディの命を守る人です」
その後、水泳の授業では「バディ!」と先生が言うと、私たち生徒がササッとバディ同士で手を握り、つないだ手を上空にあげて先生に見せるという流れが繰り返されるのだった。
「私たちは無事です。大丈夫です」と。
それ以来、私にとって「バディ」はとても大事な言葉になっている。
ペアでもコンビでも言い表せないような、命を預けるような、何か特別なニュアンスを含むもの。
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湯気という会社を立ち上げて、ちょうど半年が経ちました。
ネットメディアの会社を辞めた二人で作った会社です。共同創業者のやすじろうと私(南)は、「バディ」になるべく文字通り悪戦苦闘する日々です。
湯気の創業前も2年半ほど前職で同僚でしたし、社内で一緒に動くこともたくさんありましたが、新しく会社という船を作り、安心して船出をするべく帆を貼る作業は、想像以上の大変さでした。
このご時世、毎日オフィスに出社し、顔を合わせてさまざまなことを議論しました。お互い、自分にも相手にも苛立ちながら、バディになるまでの時間を待ち続けていた半年だったように思います。
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近年、ビジネスの世界でも「メンター」の重要性が認識されるようになりました。
直接的な上下関係や利害関係はないけれど、いい距離感で並走して話を聞いたりアドバイスをしてくれる人。灯台のような人。
私にも何人かメンターと呼ぶべき方がいて、その感謝の念たるや筆舌に尽くし難いです。
ただ、「バディ」は、メンターとは少し違います。一定の距離感で並走というより、お互いの道がDNAの螺旋構造の様に絡み合っているイメージ。お互いの結果にお互いがコミットしている感じです。
ヤクザ映画的に言うと「サカズキを交わした仲」という感じでしょうか(笑)
「右腕」という言い換えもできるかもしれません。
湯気がお仕事で関わる経営者の方の中には「いい右腕がいない」と、不安を滲ませる方もたくさんいます。本人がそう言わずとも側から見て感じることもままあります。
ビジョナリーな経営者にこそバディ(右腕)は必要で、私が思う「良き右腕さん」は、
やすじろうさんはよく、「お互いに背中を預けられる間柄」と言います。
言葉にすると陳腐にも聞こえますが、「バディ」がいなくて不安を一人で抱え込んでいるビジネスパーソンの方々、かなり、多い気がします。
もちろん、経営層に限った話ではありませんよね。現場でゴリゴリ案件を回す人も、中間管理職もみんな。私たちにはいま、「バディ」が必要です。
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バディには上下関係があったり、受発注の間柄だったり、さまざまな形があると思います。大事なのは「精神的に対等」な関係であること。
湯気の場合はというと、あらゆることをガチでイーブンにして、バディ化をはかってきました。
やすじろうと私は持株も50:50で、両者とも「代表取締役」。
起業経験のある諸先輩方に、「トップを一人に決めた方がいい」「50:50は現実的じゃない」「結局お金で揉める」など、さまざまな温かいアドバイスをいただきました。先人たちがそういうのだから、きっと確率論的にはそうなんだと思います(笑)
そこに抗ってきたのは、青臭く、そして結果的に最も早く、バディになることを目指したからです。
「どうせやすじろうさんの会社でしょ」
「どうせ南さんが決めるんでしょ」
その、1ミリのわずかな責任の勾配を許さず、走ってきたつもりです。
この先、湯気に3人目、4人目の仲間がジョインしてくれたならば、どちらかを「社長」にし、責任の切り分けをしたり、どこかで裁量の勾配を(部分的に・機能的に)つけていくことになると思います。
それでも、急がず焦らず、完全な50:50で「バディ」を目指した期間があるから、今後も一蓮托生でいけるんじゃないかと期待しています。
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ここまでお読みくださった奇特な方には、バディがいらっしゃるでしょうか。
人材の流動性も、テクノロジーの進化も、世界の複雑性も、日増しに著しくなる日々。何事にも「アジャイル思考」を持ち込む発想が求められる今だからこそ、たった一人で踏ん張ろうとしすぎず、二人や三人でバディを組んで、背中を預けあってくださいね。
「こうだよね?」「合ってる合ってる」
「ここは任せた!」「オッケイ!しっかり戦ってこい」
こういう「指差し確認」や「阿吽の呼吸」って、何より、シンプルに楽しいんですよね。
まだまだバディ未満の二人ですが、引き続き、師走に向けて走りたいと思います。
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