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Abema Prime出演後に感じたことまとめ

先日、「Abeme Prime」に生出演させていただきました。

コロナ禍でオンライン化されたアイドル業界で可視化されつつある問題について、が大きなテーマでした。 アイドル、特に「地下アイドル」と呼ばれる規模で活動しているアイドルに関しては、以前より、曖昧な契約のもと働いている子が多いと問題視されていました。今回のコロナ禍においてますます厳しい立場に置かれていることもあり、特集していただいたかたちです。

 とはいえ運営側も、この突然の状況に対応しながら社員さんにお給料を払い、アイドルの面倒も見て…と、どう考えても大変な状況です。しかし「社員」ですらないアイドルにとっては、仕事ができない期間は、イコール収入がない期間となってしまうのです。 

 そんな状況の中、経済的な理由で活動を諦めるアイドルが少しでも減ってほしい、との思いで、私は、5月11日、アイドルでも申請できる可能性のある「持続化給付金」についての動画をYouTubeにUPしました。

私自身、アイドル活動を始めた頃は収入もなく、学生生活と並行してバイトもしていて、アイドル活動を「仕事」と言っていいのか悩んでいました。
けれど、大学在学中にたまたま受講した「女性の労働問題」に関する授業の中で、働く女性の悩みと当時の自分の悩みに共通点を感じたことから、「今自分が取り組んでいる活動はきっと『仕事』になりうるんだ、ちゃんと『仕事』だと胸を張れるように、自分の労働環境を整えよう」と決意し、活動形態や所属先を変え、紆余曲折を経て今に至ります。 

環境の変化を経てアイドル一本で生きていけるようになってからは、アイドルを「仕事」だと思っていましたし、好きなことを仕事にできた自分が誇りでした。
けれどこのコロナ禍で一気に活動が制限され、収入も減り、「仕事」だと信じてきた大切なものが世間一般でいう「不要不急」の最たるもののように思えて、胸が潰れそうな思いをしました。自分の存在価値が揺らぐというか、不安な気持ちで、なぜか世の中に対して申し訳ない気持ちになるなど、自信を喪失していた時期がありました。
給付金の説明動画の後半でお話している内容は、撮影時は「蛇足かな」と思ったりもしたのですが、あの当時、自分に言い聞かせていたことだったりもします。

 私のものはまだまだ素人編集ではありますが、このように、これまであまりやったことのなかった配信コンテンツに力を入れるアイドルが増えてきています。しかし、配信機材を自分で準備したり、照明や動画編集アプリを自分で購入したり…細かいことを言えば、配信時に着用する私服やメイク道具も自費で用意したものですし、背景の飾り付け、通信費等もかさみます。そもそも「自宅から配信をする」ということ自体、ある程度リスクのあることです。

 しかし、ライブができない中、少しでも自己PRにつながればとの気持ちから、それらの負担を承知の上で自力で頑張っても、配信に関する契約が曖昧だったり、そもそも定められていないために、本人にお金が入らないことがあります。あるいは入ったとしても、いただいた投げ銭の多寡にかかわらず低額の固定給しか入らないなど、本人の負担に対して金銭的に受け取れるものがあまりにも見合っていないことも。それはすなわち、「アイドルを応援したい」と投げ銭をしたファンの気持ちも蔑ろにされていることになります。

 さらに、こうした契約上の問題がクリアになったとしても、YouTubeは相当数再生されないと収益には繋がりにくく、配信アプリはアプリ側への手数料もかかるなど、そもそも配信で得られる利益がそんなに大きなものではないという事実もあります。悪意があって搾取している事務所は言語道断ですが、そうでなく本当に、オンラインで得られる収入が少ないという場合もあるのです。 

こうした複雑な状況の中、今回「Abeme Prime」に出演させていただくにあたって、どういったお話をしたらいいのだろうか。予習として「地下アイドルの法律相談」という本を拝読しました。お友達でもある姫乃ちゃんがコラムを書いてらっしゃるこちらの御本は、法律的にも気持ちの上でもアイドルに寄り添って書いてくださっている、とても優しい本だなと感じました。

「地下アイドルの闇!」などと面白おかしく煽ることなく、丁寧に誠実に、アイドル業界の抱える問題を「労働問題」と捉えてくださっていて、それってすなわちアイドルを「仕事」だと認めていただいていることの表れな気がして、こういった立場に立ってくださる本を読むのは初めてだったので、すごく嬉しかったのです。最後に法テラスなどの相談機関一覧がまとまっていることにもすごく感激しました。

 この本の内容も踏まえ、番組内で、「アイドルの労働組合があったらいいのに」なんていうお話も出ましたが、本当に、アイドルが活動上の問題を相談できる場所があったらいいなと私はずっと思っています。 
活動を始めた頃はどなたに相談していいのかわからず、身近な人を頼りがちですが、身近であるがゆえに、相談内容が先方に筒抜けで余計にこじれてしまい、怖い思いをすることも。また、相談した相手の方が法律に詳しいとは限らないので、間違った知識を与えられたり、「みんな我慢してるよ」、「そんなの普通だよ」などと言われて、では我慢できない自分がいけないのか、と余計に悩んでしまうこともあります。 さらには、おもしろ半分で「トラブルも全部エンタメに昇華しよう」などと仕掛けられた炎上商法に巻き込まれてしまうと、「被害者」であったはずのアイドル側が、「運営と揉めてる子」、「どっちもどっちだよね」といった見られ方に変わってしまい、本人がすごく損をしてしまうことも。 どうしていいかわからず最後の手段のつもりでSNSに暴露してしまったことで、想像以上に拡散され、本人の真意が伝わらないまま炎上状態になってしまうこともあります。どれも、相談相手を間違えず、正しい手順で対処していれば起こらなかった悲劇です。

 とはいえ、法律に詳しい人に聞いてみよう、と思って弁護士に相談に行こうにも、そのお金すらない、というところで悩む声を聞きます。金銭面のハードルをクリアできたとしても、弁護士の方が全員、地下アイドル文化やライブアイドル文化に詳しい方ばかりではありませんので、「そんな危ないところ辞めたほうがいい」とか、「アイドル活動よりも身の安全や心身の健康を優先したほうがいい」という、本当に、客観的で的確な「その通り過ぎる!」というアドバイスをいただいたりして…。だけどその子がどうして、そんなにも辛い思いをしながら地下アイドルをやってるかと考えた時に、例えばそれが、メジャーアイドルのオーディションには落ちてしまったから、という理由だったら?何度も挑戦し、全然受からなかった自分がここでならやっとアイドルになれた、という経験から、「ここを失ったら全てが終わる」と思いつめてしまい、我慢しすぎてしまう。そういう子が「健康のために辞めたら」と言われても、なかなか「はい」とは言えないと思いますし、裁判などを勧められても、「裁判を抱えているアイドルとして自分の名前が世に出たら今後の活動に支障があるかもしれない」という恐怖からなかなか踏み切れないということがあると思います。アイドルへの気持ちが強い子ほど声をあげづらい状況は、私はすごく辛いです。

 そして何よりファンに心配をかけたくないという気持ち。事務所を辞めたら、ここまで支えてくれたファンにも会えなくなってしまうという恐怖。 

様々な要因から、いきなり弁護士事務所のドアを叩くのはどうしてもハードルが高いので、もっとラフに、でも真剣に、相談できる窓口があったらいいなと思っています。 

アイドル本人の心身の健康、安全な活動環境を確保し、志のある子が長く続けられるようにしたい。かけている時間や労力に対してあまりにも理不尽に「稼げない」状況だと、成人してからも「仕事」として続けていくことを迷ってしまう方が増えてしまうと思うのです。私が考えている「窓口」が、そのような迷いを持っているアイドルの助けになればいいなと思っています。

 また、アイドルが「仕事」として成立するようになり、長く続けてくれるアイドルが増えれば、運営側も、育てるためにかけた時間やお金を回収しやすくなると思います。そうして看板アイドルが育っていけば、そのアイドルに憧れて、質の高い新人が集まってくる。事務所としての知名度が増し、収入も安定するのではないでしょうか。 (そして、私が考えている「窓口」は、アイドル事務所を立ち上げたいけれど顧問弁護士が雇えない、契約書の作り方がわからない、という運営さんが相談できる窓口でもあってほしいです。契約書は、どこかから引っ張ってきたテンプレートではなく、活動の実態や規模に合わせて柔軟に作られるべきだと思います。)

 何より、問題をアイドル業界の内部で解決することによって、ファンは余計な心配をせずに楽しく応援ができる。誰だって、好きな相手には幸せでいてほしいと思います。応援しているアイドルがいつも前向きに活動に参加できて、それに対して自分たちが支払った金銭やかけた時間、情熱や愛情が正しくアイドル本人のためになっていく。そういう仕組みが当たり前になってほしいのです。 

また、「窓口」は、アイドル業界で働くスタッフの皆さまの相談窓口として機能することも必要かなと思っています。アイドル事務所のスタッフの方にはお若い方も多く、保証や法律についての知識が十分でないまま、長時間のハードなお仕事に耐えてらっしゃる方、その負担から心身に不調をきたす方もいらっしゃいます。残念ながら、上司からのパワハラやセクハラといった問題も耳にします。アイドル側が直面している問題については、今回のAbema Primeのようにメディアで話題にしていただけることがありますが、スタッフさんに関しては取り上げられる機会がほぼないため、外部に気がつかれないまま、限界がきて急にお辞めになる方も少なくありません。この離職率の高さも考えていかなければならないと思います。スタッフさんが長く楽しく働ける職場になれば、経験やコネクションが蓄積され、事務所全体の財産になると思うのです。 

コロナ禍において、様々な問題がよりはっきりと見えてきた今だからこそ、正すべきものは正して、アイドル文化をつなげていけるよう、勉強しなくてはと思っています。今回のAbema Prime、呼んでいただけてとても嬉しかったです。大変な時期ですが、今を乗り越えた先、アイドル業界がもっと楽しく夢のある場所になっているように、すみっこにいる一員として、私も頑張っていきたいと思っています。

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