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アイドルと弁護士


<参考資料>
日本加除出版「地下アイドルの法律相談」
深井剛志・姫乃たま・西島大介/著 

深井剛志 X アカウント @TSUYOSHIFUKAI
https://twitter.com/tsuyoshifukai
寺嶋由芙 Xアカウント
@yufu_0708
https://twitter.com/yufu_0708



寺嶋 podcast「アイドルと法律」!
この番組では、ソロアイドル11年目、フリーランスのソロアイドルとして働く、ゆっふぃーこと寺嶋由芙が、アイドルの労働問題に詳しい弁護士としてご活躍の深井剛志先生から、アイドルが知っておくべき法律を学びます。日本加除出版株式会社から発売されている「地下アイドルの法律相談」著者でもある深井先生が、働くアイドルゆっふぃーに、アイドルが直面しがちな労働問題をわかりやすく説明してくれます。

整えよう、あなたの推しの労働環境!

というわけで皆様こんにちは。古き良き時代から来ました真面目なアイドル。真面目にアイドル!ゆっふぃーこと寺嶋由芙と、

深井 弁護士の深井剛志です。

寺嶋 よろしくお願いします。

深井 よろしくお願いします。

寺嶋 今回はまたちょっと趣向を変えて、いろいろと深井先生にお話を聞いていく回にしようと思うんですが、その前にSNSでまた感想いただいてるので、そちらお返事しようと思います。
【#猫とタイカレー】さんですね。いつもありがとうございます。

深井 ありがとうございます。

寺嶋 「労働問題と関係ないので質問しそびれていたことを。以前は名誉毀損の裁判のほとんどが週刊誌関連というお話がありました。そもそも芸能人の交際とか浮気とかがスクープとして報じられちゃうのはなぜなのか、ずっと不思議に思っています。プライバシーの侵害には当たらない?」ってきてます。

深井 はい。芸能人の交際とか浮気とかが週刊誌ネタとしてね、よく報道されるのは、それを欲してる人がいるからってことだと思うんですよね。

寺嶋 本当にいるんですかね?

深井 どうなんですかね。やっぱりそういうネタでいつも面白おかしくそういうのを消費してる人がいるから、やっぱそういう雑誌も売れるしってことなのかなと思ってるんですけど。

寺嶋 でも私、「芸能人のゴシップが載ってるからこの雑誌買おう」って思ったことないです。

深井 まあ普通の感覚だとそうかなと思うんですけど。

寺嶋 でも、そう思う人がいるのかな。

深井 どうなんですかね。本当にすごく人気のある女優さんとかアイドルさんが、スクープあったってなったら、どうなんだろう。見てみようってなるんですかね。やっぱり。

寺嶋 でも、買うのか?ってなりますね。

深井 買ってまで?っていう。

寺嶋 うん。今はね、ネットニュースとかがあるから、それで見ちゃったら同じなのかもしれないけど、わざわざ買ってまでとか、そこにお金を払ってまで人のニュースを見る感覚があんまりわかんないから。なんか他の目当てがあって買った雑誌にたまたまそれが載ってたとかだったらわかるんですけど、どうしてこれが商売になってるのかは正直よくわからない。

深井 結構ね、浮気とか不倫のニュースが出た後って、結構その芸能人、すごく叩かれたりするじゃないですか。なんかそういう、叩いたりすることをエンターテイメントとして消費している人が一定層いるのかなということは考えたことありますけどね。

寺嶋 でも、その「一定層」が結構多いってことなのかな。これだけの規模のことが(続くってことは)。

深井 そうですね、国民的な女優さんとか芸能人とかだと、結構そういうのに興味ある人も多いのかなという気はしますが。

寺嶋 あと、今インプレッションでお金になるとかありますからね。そういうことで暴いちゃうっていうか、話題になったら収益になるって思ってる人もいるのかな。

深井 そうですね。

寺嶋 で、これ、「プライバシーの侵害には当たらない?」って質問ですけど、どうなんですか?

深井 当たるものもあるっていうことになると思います。プライバシーが法律で…法律でっていうか、裁判上ね、裁判例上定義されているんですけれども、そのプライバシーの定義に当てはめると、ほとんどの週刊誌は当たるものが多いんじゃないかなという風に思いますけど。

寺嶋 でも、(ゴシップの週刊誌報道が)続くってことは、プライバシーの侵害には当たるけど、罰せられてない?どういうことですか?

深井 プライバシーの侵害に当たるかどうかっていうのは、この前の名誉毀損とは違って、刑事上の罰はないので。民事の責任しか発生しないので。

寺嶋 じゃあ、損害賠償?

深井 請求をその暴かれた人がしない限りは裁判にならないということなので、基本的に、その暴かれた人が裁判を起こしてないから、これまでずっと野放しになっているという側面はあるかもしれないですね。

寺嶋 なんで裁判起こさないんだろう?

深井 それはちょっとね。芸能人の立場で裁判を起こしてますっていうののイメージの悪化とか、そういうものもあるかもしれないですね。

寺嶋 そっか。「裁判を抱えてる」っていうことがマイナスイメージになっちゃうからスルーしちゃおうってことなのか。

深井 そういう人はいましたけどね。これまでにも「裁判やりますか」って聞いた時に、そこまで有名な方じゃないですけど、「やっぱり裁判やってるってことで今後の活動に影響しちゃうんで」っていう風に言った人はいたので。

寺嶋 そうですよね。

深井 やっぱ気にするところなのかなと思いますけど。

寺嶋 なんで裁判抱えてるとイメージ悪い感じするんだろう?だって、自分が被害を受けたから、正当だってことをちゃんと主張したくて、なんも悪いことしてないけど、裁判になっちゃうことあるじゃないですか。

深井 そうですね。

寺嶋 でもなんか「裁判抱えてる人」みたいな(偏見)ありますよね。

深井 そうですね。僕の感覚だと、もう弁護士だからかもしれないですけど、裁判なんてもう日常茶飯事なんで。で納得いかないこととか、権利が実現されてないことがあったら、そういうものは裁判やってでも実現するというのは普通のことなので、イメージ悪化するっていう風に思わないんですけど。だから一般人の感覚からしたら、むしろね、寺嶋さんの方が、そういうの近いかなと思うんですけど、裁判やってるって言ったらイメージ悪化するって思わないですか。

寺嶋 裁判の内容によると思います。訴えられてる側で、「なんかこんなひどいことしたから訴えられてます」ってことがバレれば悪化するけど、巻き込まれてるだけの人っているじゃないですか。そっち側の人にとっては別に悪化しないんだからやってもいいのかなとは思うけど。大変そうだなとも思いまますけど。

深井 労力はかかります。お金と労力、時間、精神的な負担、その辺りはすごいんで、僕もあんまり自分ではやりたくないなと思いますけど。だから、裁判をやることを躊躇しちゃう人の気持ちはわかる。わかりますね。やってるだけに。

寺嶋 そうですよね。やりたいかって言われるとやりたくはないもんな、私も。できればそうならずに解決できたら1番いいんだろうなとは思いますけど。ありがとうございます。【#猫とタイカレー】さんのコメントでした。というわけで、今ちょっと話にも出たように、なんとなくその、法律に関係のない仕事をしてる…関係なくはないんだけど、弁護士さんとかじゃない限りは、なんか裁判難しそうだなとか、大変そうだなとか、イメージでなんとなく敬遠してること多いじゃないですか。

深井 そうですね。

寺嶋 それをですね、ちょっとでも身近に感じる、弁護士を身近に感じようという回で、今日は深井先生に「弁護士って普段何してるんですか」みたいな話をいろいろ聞こうと思いますので。はい、よろしくお願いします。「弁護士怖くないよキャンペーン」です。

深井 それはありがたいですね。すごく。

寺嶋 怖がられます?

深井 怖がられるというよりは、敷居が高い。この「敷居が高い」って多分誤用なんですけど。

寺嶋 「ハードル高い」ってことですよね。

深井 そういう風に思われてる節はやっぱありますよね。

寺嶋 うん。なんかの回でも話したけど、やっぱ「最後の手段」感というか、「ここまでおおごとにならないと弁護士さんには頼んじゃいけない」っていうハードルはある気がする。

深井 そうですよね。

寺嶋 なので、特にアイドルとか、私と同年代よりもっと年下の子が多いから、弁護士さんに頼むだなんて思いもよらないっていう。

深井 そうですね。アイドルの人が頼る相手として、弁護士ってのは多分もう相当後ろの方ですよね。優先順位としては。

寺嶋 そう。自分の人生でお世話になることがあると思ってない人も多分多い気がする。

深井 うんうん。

寺嶋 でも、そうじゃないんだぞと、味方になってくれる人なんだぞっていうのをね、知っていただく回にできたらなと思うんですけど。じゃあ、まずは1番最初の回にちょっと聞いたと思うんですけど、深井先生はなんで弁護士になったんですか?っていうところから。

深井 そうですね、その時に言ったのは、高校の時に、進路迷ってて、法律面白そうだなと思ったところからが始まりなんですけれども。なんで法律やりたいなと思ったかっていうと、うちの学校は、国旗とか国歌をやらないっていう風にずっと決めてた学校なんですね。それ、別に先生が決めてたわけじゃなくて、生徒会が決めることができたんですね。で、国旗は掲げない、国歌は歌わないと。そういう学校だったんですけど、僕が高校2年の時に国旗国歌法ができて、全国の公立の小中高、学校ではやるようにと。卒業式、入学式でそういうおふれが出たので、揉めるわけですよね。先生としては、やりなさいと。

寺嶋 国が言ってるんだから。
 
深井 はい。で、生徒会はやらないと決めたと。で、揉めて。で、校長としては、生徒の自主性を重視したいんだけど、でも、職務命令としてやらせないといけないということで、板ばさみにあってて。僕、1番気の毒だったのは校長なんですよ。そうすると、その校長の思想、良心の自由とか、そういう憲法的な権利が結構問題になってるなという風に肌に感じて、ちょっと憲法とか勉強したいなという風に漠然と思って、岩波新書とかで出てるそういう本、いろいろ読んで、こういう勉強もしたいなと思って、法学部に入ったということですね。で、大学で、憲法のゼミとかを取って勉強してるうちに、その時までは別に弁護士になりたいと思ってなかったですけど。

寺嶋 そうなんだ。

深井 うん。大学3年生ぐらいの時に、進路決めるって段階で、もちろん就活もできたし、いろんな道があったんですけど、弁護士やってみようかなと思ったというところです。

寺嶋 「やってみようかな」って思って、実際なるには何をしたらいいんですか?弁護士さんは。

深井 弁護士になるには、最終的には司法試験を受けなきゃいけない、受かんなきゃいけないってところになるんですけれども。僕の時代は、一般の人がイメージしてる司法試験受験生って、司法試験に毎年挑戦しているような…

寺嶋 八浪とかする感じ。鉢巻きをして、もうなんかしゃかりきに勉強をする。

深井 はい、それはですね、僕の代よりちょっと上ぐらいまでの人です。なんでかっていうと、僕の代ぐらいで、ちょっと司法制度の改革があって。「合格者を増やそう」…

寺嶋 へえ!

深井 というのが進んだんですね。弁護士になるために八浪とかして、その人の人生、ちょっとね、壊れるってわけじゃないけど、影響が出るような制度はやめようと。だから、ちゃんとしっかり勉強していれば、多くの人がなれるような、そういう試験にしようっていう風に制度が変わって、その代わり、しっかり勉強する制度を教育機関として作ると。それが法科大学院いう大学院です。大学出た後に、2年か3年その大学院に通って、ちゃんと勉強する。そうするとね、司法試験を受ける資格を得るんですね。

寺嶋 司法試験を受ける資格を得るための大学院。

深井 うん。

寺嶋 その資格がない人は、いきなり司法試験は受けちゃいけない?

深井 その時はそうでした。今はちょっと制度違うんですけど。

寺嶋 また変わったんですか?

深井 うん。僕の時代は、法科大学院を出ないと、司法試験を受けられないっていう制度に変わりつつあった時期です。

寺嶋 じゃあ、もうそのタイミングで「弁護士になりたい」って思った人は、大学を出た後、法科大学院に行くことがマストだったってこと。

深井 そうですね。僕ぐらいの時は。僕よりちょっと上だと、まだ昔の司法試験が残ってて、それは誰でも受けれる試験、昔ながらの司法試験だったんですけど、僕より2つ3つぐらい上の代から、ロースクールに行かないとダメになった。

寺嶋 ん?法科大学院は、ロースクール?

深井 そうですね。法科大学院、別名ロースクール。

寺嶋 へえ、かっこいい!ロースクール!ロースクール、法科大学院出て、そしたら司法試験が受けられる。

深井 そうです。

寺嶋 合格者を増やすためにってことは、その司法試験自体の難易度が下がったとかではないんですよね?

深井 僕は難易度上がったと思う。

寺嶋 上がったの!?

深井 うん。

寺嶋 なのに(なんで合格者)増えるんですか?

深井 受けて受かる人を増やした、合格者数を増やした。これまでは大体司法試験って1万人受けて、はい、500人しか受からないとか、そのぐらいの試験だったんです。それを合格者2000人ぐらい、あげたんです。

寺嶋 どうして?どうしてそんなことが起こるんだ???

深井 だから、元々のコンセプトが、弁護士の数を増やして、国民に法的なサービスをちゃんと行き届かせるようにしようというための司法制度改革なので、弁護士の数を増やすためには合格者を増やさなきゃいけない。だけど、質が低下したら困るから、ちゃんとロースクール、法科大学院作って、そこでちゃんと教育して、そこを卒業した人だったらみんな質的に大丈夫だよって担保を作って、で試験受けさせようと、そういうコンセプトです。だから、司法試験受けるってことは、ロースクール出てるってことだから、ロースクール卒業するだけの実力をみんな持ってるよと、そういう担保があるんですよ。

寺嶋 だから、その質の高い教育を受けた人が受けるから、合格者も増えたってこと?

深井 そういうことですね。

寺嶋 うーん、すごい。じゃあ、今、日本で弁護士さんは結構増えてるんですか?

深井 その制度の改革が始まる前よりは急激に増えてます。

寺嶋 じゃ、頼みやすくなってるのかな。我々からすると。

深井 探すことは困難にはなってないと思いますよ。昔よりは増えてるはずなので。ただ、都市部、東京とかに集中してるとか、そういう問題はありますけどね。

寺嶋 そうですよね。それも地域格差があるのか。

深井 そうですね。だから、ゼロワン地区とかって言って。弁護士が0人、もしくは1人しかいないみたいなのがたくさんあったんですよ、昔。で、そういうところにちゃんと弁護士を送り込むと、そういうコンセプトで始まったところなんですね。

寺嶋 そうなんだ!確かに自分の身近にいなかったら頼りようがないですもんね。

深井 そうですね。頼むのにすごい時間かけて、今みたいにリモートとかない時とかは会いに行かなきゃいけなかったりしたんで。

寺嶋 大変だ。じゃ、今は割と人数も増えつつありっていうところなんですね。

深井 そうですね。

寺嶋 そうやって弁護士になられた深井先生が、なんでアイドルの事例を多く扱うようになったんですか。

深井 僕の入った事務所は、さっき弁護士になった理由を言った時に言ったように、僕、人権とか、そういうのに興味あったんで、どっちかというと、弱い立場の人とか、労働者側とか。被害を受けた側につく事務所なんですね。で、その中でも特に労働事件をすごく盛んにやってる事務所で。全体の事件の中の半分ぐらいが労働事件っていうような事務所なんですよ。一般の人がどういう感覚かわかんないんですけど、自分が持ってる事件の半分がある特定の分野の事件っていうの、弁護士からしたらかなり特殊で。

寺嶋 そうなんですか。

深井 普通はそういう弁護士はあんまいないです。

寺嶋 えー、いろんなのやるんだ!

深井 いろんなのやるのが一般的。

寺嶋 逆だと思ってました。労働問題の人は労働問題ばっかり受けて、離婚とかの人は離婚ばっかりやって、殺人事件の人は殺人事件ばっかりやるんだと思ってた。

深井 離婚っていうのは、基本的にもう弁護士だったらどんな人でもやるような一般的な事件ですね。

寺嶋 そうなんだ。

深井 はい。で、殺人事件だけっていうのは。おそらくそれだけだと無理で。

寺嶋 うん?

深井 なんでかっていうと、事件が少なすぎるから。

寺嶋 あ、少ないんだ!

深井 刑事事件の数自体はそんなに多くないので、刑事事件だけで食べていくとか、それは多分無理です。

寺嶋 そうなんだ。

深井 うん。なので、いろんな分野を幅広くやって稼いでいくっていう弁護士が1番一般的な日本の弁護士。専門があって、この専門の事件しかやらないってのは、どっちかっていうと特殊な人。

寺嶋 そうなんだ。過払い金は?

深井 過払い金はもう弁護士だったら普通にみんな一般的にやる事件の1つですね。

寺嶋 じゃあ、いろんなことができるし、いろんなことをみんなやってるのに、深井先生は持ってるものの半分が労働事件っていうことですね。

深井 で、ちょっと話それちゃいましたけど。なんでアイドルの事例を多くっていうことで言うと、労働事件やってたので、いろんな類型の労働問題やるわけですよね。で、その中で、とあるアイドルの依頼をとある筋から受けて。アイドルの事件持ったんですよ。で、それは普通に解決して、よかったねで終わったんですけど、その後、社会でいろんなアイドルの労働問題について、なんかニュースになったりとか、ある事件が起こったりとかした時に、僕、Twitterやってるんで、それで、いろいろ書いてたりしたら、とある投稿がですね、結構バズって。で、結構広まったんですよ。そしたら、いろんなところから取材を受けるようになったりとか、雑誌とか新聞とかから取材を受けるようになったりとか、「地下アイドルの法律相談」ですね、その編集者さんにそのツイート見てもらって、で、その後書いた週刊誌の記事なんかも見てもらって、「ぜひちょっとこういう本を出版してくれませんか」という風に依頼をもらって、で、書き始めた。で、出版するようになってから、どんどん、どんどん、そういう本が広まったり、新聞記事が広まったりして、アイドルの方が依頼してくるようになった。

寺嶋 うーん!

深井 そういう経緯ですね。

寺嶋 じゃあ最初から「アイドルは労働者だから労働問題で解決しよう」っていう、なんかこう、ビジョンがあったとかではなく?

深井 そうですね。僕、別にアイドルに最初から興味あったわけじゃないんで。アイドルに興味あるからアイドルの事件やりたいっていう弁護士さんいますけど。知ってますよ。

寺嶋 元々好きな分野だから応援したいとかいう人もきっといますよね。

深井 うん。そういう人はいますし、現に知ってますけど、僕はそうじゃなかったです。

寺嶋 じゃあ1番最初のきっかけはTwitterだったってことなんですね。

深井 そうですね。Twitterでその投稿がバズって、週刊誌に記事書いて、で、その「地下アイドルの法律相談」に繋がった、ですね。

寺嶋 そしてこのpodcastにも繋がっているということになります。不思議だ。だって、国旗国歌法のことを考えてた時は、アイドルの問題を取り扱う弁護士になろうって思ってなかった?

深井 なかったですよ。

寺嶋 それがこうなるってすごいですね。えー、不思議。でも、別にアイドルの専門になられたわけではないから、さっきも話してたようにいろんな事件を扱ってはいらっしゃいる?

深井 ですね。アイドルの事件は全体僕が持ってる事件の多分1割ぐらいじゃないですか。

寺嶋 そんなに多いわけではない?

深井 ないですね。

寺嶋 でも多分、日本全国のアイドルからしたら、弁護士さんに相談するっていう時に今割と名前が上がるのは深井先生ですよね。

深井 どうなんですかね。

寺嶋 なんかそれ以外のルートがまだわかんないです、私。

深井 僕もちょっとわかんないんですけど、例えばですけど、この前あった話だと、とあるグループを何人かがまとめて解雇になっちゃって。で、3人なんですけど、そのうちの1人は僕に来たと。残りの2人はって言ったら、なんか別ルートで別の先生に依頼したっていう風に言ってたんで。普通に東京の先生に依頼したっていうことなんで。

寺嶋 何かツテがあったんですかね。

深井 ですかね。誰でも彼でも僕に来るわけではないです。

寺嶋 ちなみに、その弁護士さんにお願いしたいってなった時に、弁護士さんって家族とか友達とかの弁護ってできる?

深井 それはできますよ。家族でも問題ないです。

寺嶋 え!そうなんだ。

深井 うん。

寺嶋 なんかダメかなって勝手に思ってました。弁護。なんか、例えば自分の家族、ご両親とかが何かの被害に遭った時に弁護することはできる?

深井 それはできますね。うん。それ、法律で禁止されたりとかはしてないです。

寺嶋 そうなんですね。

深井 禁止されてるのは裁判官の方。裁判官の方は、親族とかそういう人の事件を扱うことはできないって法律にちゃんと書いてあります。

寺嶋 やっぱ公平にしなきゃいけないから?

深井 そう。中立性がなくなるから。

寺嶋 弁護士はそこOKなんですね。

深井 OKですよ、別に。

寺嶋 でもそっか、中立性とかとまたちょっと違いますもんね。

深井 弁護士、別に中立求められてない。

寺嶋 そっか、味方をすることが仕事だ。

深井 依頼者の味方をすればいいってだけですから。

寺嶋 そうなんだ。身内でもOKなんですね。誰からでも、じゃあ、依頼は受けられるってことで。

深井 そうですね。ただ、僕はさっき言った離婚事件とかを、友人とかの離婚事件は受けないです。

寺嶋 気まずいから?

深井 うん。あの、離婚事件って、結構ね、その、プライバシーに関わることも話さなきゃいけないんで、相手も話しにくいだろうし。だから、それはね、受けないようにしてます。

寺嶋 うーむ。他に受けないようにしてる仕事ありますか。

深井 これは特殊なんですけど、うちの事務所、さっき言ったように労働事件多くて。で、どっちかっていうと、被害を受けた側っていうポリシーでやってるので、必ずね、労働者が被害を受けたかっていうとそうじゃないかもしれないけど、基本的に労働者の味方にしてます。なので、会社側は受けない。

寺嶋 雇用主側のは受けない。

深井 受けない。

寺嶋 うーん、そうやって受けた依頼者の方のことは、もう基本的にその方の、なんていうのかな、潔白を証明するために、損害を賠償してもらうために、一緒に戦うわけじゃないですか。……依頼者の人が途中でめっちゃ悪いやつだって気づいたらどうするんです?

深井 本当に悪いことやってたら、法に触れるレベルのことやったら、ちょっと辞任するかもしれない。

寺嶋 それはできるんだ。

深井 信頼関係を失うようなことがあった場合には、辞任して構わないです。だから、例えば、殴られたとかいうことで、被害を受けたっていうことで来た人が、実は逆で、こっちが殴っちゃって、怪我させたとかっていうケースありました。

寺嶋 そうなんだ。

深井 それはさすがに辞任はしなかったですけど、ちょっとそういうことをやられると非常に困りますっていうことは言いましたね。で、その悪いやつだったっていうのが、単になんか性格が嫌なやつとか、なんかちょっと感じ悪いとか、鼻につくやつだったぐらいだったら、そんなのはもう我慢して普通にやりますけど、

寺嶋 なんかこう、依頼してきた人のことを信用してというか、味方になって親身になってやる仕事ってすごいなと、側から見ると思うんですよ。それこそね、家族とか友達とかがひどい目にあってたら、なんとかしてあげたいなって思うのはすごいわかるけど、その時初めて会う人なわけじゃないですか、依頼人って。その人のことを助けたい…っていうとちょっと違うかもしれないけど、力になりたいみたいなモチベーションってどういうとこから来るんですか。

深井 それはやっぱ僕個人の話になりますけど、僕はさっき言ったように、どっちかっていうと弱い立場とか、被害を受けた側の人の味方になりたいっていう風に思って弁護士になったんで、そういう人かわいそうだなとか、救いたいなって思う気持ちだけですよね。やってる時は。他の弁護士かどうかはちょっとわかんないですけど。じゃあ、会社の弁護してる人がどういうモチベーションでやってるのかとかっていうのは、金銭的なものだけなのかもしれないですけど。仕事なんでね。弁護士も別に公益活動やってるつもりないし、慈善事業やってるつもりもないので。仕事ですから、やっぱお金はもらわなきゃいけないので、別に僕、モチベーションがお金だっていう弁護士がいても全然問題ないんじゃないかなとは思ってますけど。
僕は苦労して弁護士になったから、多少お金はもらいたいですけど、そこはモチベーションじゃないですね、別に。

寺嶋 そうなんだ。

深井 うん。

寺嶋 でも、ひどい目にあってる人たちの話を日々聞くわけじゃないですか。このpodcastでも結構私、「げー(´°ω°` )」ってなるような案件いろいろ聞きましたけど、アイドル関連だけでもそういうの日々見聞きしてて…落ち込む日とかないんですか。

深井 そうですね。かわいそうだなと思ったりとか、気の毒だなと思うことはもちろんありますし、感情移入して泣きそうになったりすることもありますけど、それでなんか日常生活に影響出るようなこととかまではないですね。だからメンタル強くないとちょっとなかなかね、とは思いますけれども。

寺嶋 そうですよね。引っ張られちゃう人だとなかなかできないですよね。

深井 そうですね。それでちょっとメンタル病んでね、休業しちゃうような弁護士、知り合いにもいるんで、やっぱりちょっとね、メンタルに来る仕事ではあるかなと思いますけど。うん。

寺嶋 何で気分転換してるんですか?

深井 気分転換。

寺嶋 その、メンタル病まないコツはなんですか?

深井 まあ、趣味ってことで言うと、野球見に行くことなんですけど。じゃ、野球見に行ってるからメンタル病んでないかって言われると、ちょっとわかんないですね。あとは、お酒は好きなんで飲みますけど。じゃあ、酒に頼ってストレス解消してるってわけでもないと思うし。基本的に、所詮他人事だからっていうような、ちょっとある意味割り切るような姿勢が必要なのかなと思いますね。

寺嶋 でもそれ大事ですよね、絶対。

深井 うん。あまりにも感情移入しすぎると、やっぱ冷静な判断できないし。うん。基本、代理人なんで。

寺嶋 そっか。

深井 うん。法律に基づいて、その人の利益を最大限にするにはどうすればいいかっていうのを、冷静に判断するのが代理人だと思ってるんで、感情移入しすぎると、怒りが先に出ちゃって、冷静な判断がね、失われる可能性もあるから、あんまり感情移入はしないようにって、心がけています。

寺嶋 それはすごく大事なことだけど、難しそうだー。私、多分、すっごい一緒になって怒ったり泣いたりしちゃうと思います。「そんなのひどいよね(><)」とか言っちゃう気がする。

深井 それ、言ってあげればいいと思うんですよね。依頼者に言ってあげるのがいいと思うんだけど、そのペースで事件処理すると、ちょっと痛い目見るかなっていう風に思いますね。

寺嶋 いや、大変な仕事だな。いやはや。それって、周りの弁護士さんも結構そういう人が多いですか?事務所の人とかとどんな話するんですか?

深井 いや、弁護士はもう本当に性格はもう千差万別で、別に弁護士だからみんなクールだとか、冷静だとかっていうわけじゃなくて、もちろん感情を出すのが得意な人もいますし。だから、みんながみんな僕みたいな性格ではないですけど、普通に弁護士も人間ですから、ちゃんと趣味の話もすれば、家庭の話もするし。全然、流行ってるドラマの話とかもしてる人もいます。

寺嶋 とらつば(虎に翼)の話します?

深井 僕が観てないから、あんまりしないですけどね、虎に翼の話は。でも、流行ってるんで、うちの弁護士でも見てる人多いから、たまにしてるのは聞きますけどね。

寺嶋 なんか、あんまり想像がつかなかったので。何話してるのかなって、普段。多分アイドルの楽屋トークとは違うじゃないですか。

深井 うちの事務所、僕も野球好きだけど、野球好きな人結構多いんで、野球の話が飛び交ってる時とかありますよ。たまに。

寺嶋 なんか思ってるよりおかたくない話もするんですね、すみません。

深井 します。

寺嶋 そうなんだ!いつも法律の話してるのかなと。

深井 いや、もちろんね。事件の処理について議論してることの方が多いですけど。あとは、「こういう事件、どういう風に処理すればいいですか」みたいな感じで先輩に聞いたりとか、「この法律解釈どう考えますか」みたいな感じで意見交換したりとか。それは結構ありますけどね。

寺嶋 近くにそういう、勉強の話とか意見とか聞ける人がいるっていいな。じゃあ、そろそろまとめなんですけれども、最近のご活動について伺うとしたら、最近はどんな事件を担当されてるんですか。

深井 最近の事件。

寺嶋 言える範囲で。

深井 と言ってもね、50件ぐらい持ってるから。

寺嶋 うん???

深井 労働事件が多いですけど。

寺嶋 今50件やってるんですか???

深井 今50件並行してやってます。

寺嶋 なんでそんなことできるんですか???

深井 だって、1件終わるのに1年2年かかるから。

寺嶋 だって、1年2年かかるものを、1年2年かけて一生懸命やるんじゃないんですか???

深井 だけど、それだけだと生活できないじゃん。1件で何百万円ももらえるわけじゃないんだから、1件で数十万しかもらえなかったら、それで2年間食い続けられるわけじゃないので、そしたら、何十件も受けないと生活できないですよね。

寺嶋 でも、50件ってすごい!

深井 特にね、刑事事件のドラマとかでは、1つの事件を1話で完結するように、弁護士がその事件にすごく取り組んでるように描かれてますけど、そんなこと全然なくて。

寺嶋 そうなの!?

深井 うん。弁護士、並行して何十件も事件持ってますから、

寺嶋 1個が解決するまでそれに向き合うんだと思ってました。

深井 それで生活できる人はいいですけどね、そうじゃないんで。そこ誤解ですよね。だから、弁護士が例えば裁判所で、「この事件について次こういうのを提出してください」って言われた時に、傍聴行くと、「じゃあ1ヶ月ぐらいください」とか、「2ヶ月後に次の期日入れてください」とかっていう風にいう人多いんですけど、最初は「なんでそんな時間かかるんだ」って思うかもしんないけど、30件、40件も持ってるから。

寺嶋 そうなんだ!1ヶ月かかって資料を全部集めるのかと思ってました。

深井 それぐらいかかる事件もあるかもしれないけど、他の事件もたくさんやってるから。

寺嶋 そっか、スケジュールが詰まってるのかね。

深井 そういうことですね。

寺嶋 なるほど。

深井 うん。

寺嶋 でもそれ、頭切り替えるの大変ですね。

深井 そうですね。だから1日に扱う案件は10件は平気で超えるので。でも1個1個はそんなに多くないですよ。この書類を書いて出す、30分とか。この件で電話する、10分とか。そしたら次のに取りかかる。またメール書いて20分とか。

寺嶋 私、今何件持ってるかな、仕事。今度のワンマンのことと、7月のライブ、6月もまだやってないのあって…でもそっか秋まで入ってることとかも数えれば一応いっぱいはあるのか。そういう感じですか?

深井 そう。で、その1つの案件が、1年、2年かかるってことを考えると、その1年、2年のスパンで、アイドルが何件案件持ってるかって言ったら、何十件にもなる。

寺嶋 そっか。

深井 で、そういうもんじゃないかなって思うんですよね。だって、収入だって何百万もらえるわけじゃないじゃないですか、ひとつの案件で。そうすると、1年、2年ちゃんと稼いで、自分の生活と事務所の維持をするためには、やっぱりそれぐらい持たないとっていうことなんです。

寺嶋 全然そこイメージしてなかったです。モードが(案件ごとに)その時その時で違うんだと思ってた。「今はこの事件のことをやってます」(キリッ)。

深井 まあ確かにね。大きい事件だとそれにかかりっきりにならなきゃいけない時期とかはありますけどね。

寺嶋 いや、だいぶ聞いてらっしゃる方も「思ってたのと違った」みたいな話、今日は多かったんじゃないかと思います。最後に聞いてらっしゃる皆様に何かメッセージがあればどうぞ。

深井 弁護士楽しいですよ。やってて。やってて楽しいから、なんかもうちょっと目指したいなっていう人が多くなってもいいのかなと思ってて。最近人気ないんで。

寺嶋 なんで人気ないんですか?大変だから?

深井 大変なくせに、あんまり稼げないってイメージがすごい先行してあって。

寺嶋 そうなの!?

深井 だからさっき最初に言ってた、弁護士の人数増やそうっていうプロジェクトのおかげで弁護士増えたんですけど、逆にその、事件の取り合いみたいな、パイの取り合いみたいな感じになっちゃってて、収入は下がってるんですね、平均収入。なので、やっぱり人気がなくなってるっていうところはあるんですけど、僕は結構楽しい仕事だなと思ってやってるので、もっと目指す人が増えてもいいなって思うし。弁護士のイメージが変わるようなドラマとか、結構最近多いんで、それはありがたいなと思ってますけどね。あんまりなんか、実際に僕の話聞いて、弁護士もこういうやつなんだって思ったと思うんで。

寺嶋 どういう意味ですかそれ。

深井 そんなに頭良さそうなやつばっかりじゃないんだなって思…

寺嶋 ぜんぜん!むしろハードル上がってると思いますよ、私が何聞いてもちゃんと返事返ってくるから。

深井 だから、まあ、そんなにね。ハードル高いと思わないで。

寺嶋 高いよ(゚ω゚)‼︎

深井 気軽に相談しに来てくださいということを最後に言いたかった。

寺嶋 あああ。でも、そうですね。頼っていい人なんだっていうことはね、きっと皆さんも、聞いていらっしゃる方も思われたかと思いますし、これまでの話も通して伝わっているかと思いますので。
ありがとうございました。今日はいろいろお話を聞かせていただきました。この番組のご感想などは、ぜひ #アイドルと法律 でポスト、ツイートしてください。また、この番組でお話した内容は後日ノートで公開予定ですので、そちらもぜひご覧ください。noteでは補足情報とかプラスの感想を有料部分でお読みいただくこともできるので、ぜひチェックしていただけると嬉しいです。

そして、深井先生に相談したいことがあるよっていう方はDMを開放していらっしゃるので、そちらに相談をしていいんですよね。

深井 はい。DM送ってくれれば答えたいと思います。

寺嶋 あとは、番組で取り上げてほしい匿名相談などありましたら、そちらも深井先生にDMをしてください。

深井 はい。

寺嶋 私、ゆっふぃーに話したいぞっていうことがある方は、ぜひinfoのメールアドレスにメールを送ってください。お願いします。
それでは、今回もありがとうございました。次回のテーマは「取り返そう!未払い」です。

深井 はい。

寺嶋 未払い賃金の取り返し方について教えてくださるということで、これはアイドルももちろんですけど、そうじゃない立場でお仕事されてる方にとっても大事なことかなと思いますので、毎日悩まれてる方いらしたらぜひチェックしてください。

深井 はい。

寺嶋 それでは、今回もありがとうございました。ここまでのお相手は、ゆっふぃーこと寺嶋由芙と

深井 弁護士の深井剛志でした。

深井・寺嶋 ありがとうございました。




以下、有料部分では、収録後の感想や補足情報をお読みいただけます。

深井先生からは、最近相談を受けたアイドルさんの「弁護士」への反応と、弁護士怖くないよキャンペーンの続き、ゆっふぃーからは、職業へのイメージの話から、「アイドルはこういうこと言われがち」の話をご紹介しております。併せてお楽しみください。

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応援ありがとうございます(゚ω゚)更新頑張ります!