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寺嶋由芙の“まじめ”なオフィシャル・インタビュー③

第3回目は、ゆふぃすと代表で、ニッポン放送「ミューコミ+」にもご出演された、keiさんです!

アルバムのリリース、おめでとうございます。シングル5枚も出してきたので、そろそろって感じだったのかなと思うんですけど、コロナ禍で、制作とか、プロモーションの制約も大きい中で今出そうと思ったきっかけとか、タイミングとか、もしくは、実はもっと前に出す予定だったけど、とかそのあたりのことを教えてください。

寺嶋:もっと前に出す予定があったわけじゃないけど、もうちょっと早いタイミングでも良かったかなとは思っている。ただ、去年はコロナもあったし、私がディアステージ やめますとか、色んな変化があったから、一発目がアルバムよりは、変化したときにちゃんと新曲出して、「あたらしいわたしです」っていうのを見せてから、それまでのものをまとめる方がいいかなっていうのがあって、1回シングルを挟んだっていう経緯はあります。

「あたらしいわたし」を出した時のトークイベントで、コロナ禍で否応なしに変化を押し付けられる中で、能動的に「あたらしい」っていう言葉を今、掲げる意味・思いは聞いていたので、すごく得心がいきます。事務所が変わるタイミングでのリリースと言う意味では、「いやはやふぃ〜りんぐ」から「わたしになる」ときもそうでしたね。
アルバムタイトルはこれまでの”人称シリーズ”の法則があった、「わたしになる」、「きみが散る」に連なる形ではなかったんですが、「サバイバル・レディ」をアルバムのタイトルにした思いを教えてください。

寺嶋:一人称もちょっと考えて、それこそ本当に“わたし”、“きみ”ってきたから、“あなた”にしてみるとか。あとは“彼”とかね。でも一旦そこから離れて、ただし曲から取るっていうのはできれば踏襲したいなと思っていて。なんとなく、そのアルバムの顔になる曲が出ていて、このアルバムの話をするときこの曲が頭の中に流れるみたいな、全体を通しての顔になる子がいた方がいいなっていうのをちょっと思って。それを誰に頼みましょうかねって思ってたときに、サバイバルレディの歌詞が来て、“君に決めた”って感じです本当に。うん。でもいつもそう。「わたしになる」の時も収録曲をばーって並べたときに「わたしになる」にしようって思ったし、「きみが散る」のときは最果さんの歌詞見て、「きみが散る」っていうコンセプトがいいなと思ったし、結構迷いなく。「サバイバル・レディ」がくるまでは、みんなでどうしようかって言ってたけど、(「サバイバル・レディ」が)きてしまったら、君だねって感じでした。“ガール”じゃなくて、“レディ”したのは、トミヤマ先生と話して、“サバイバル・ガール”っていうのは、他の人が使ってたんだよね。でもトミヤマ先生は最初“サバイバル・ガール”がいいんじゃないかって言ってて、でも、「かぶるんでどうします?」って言われたときに、「“ガール”っていう感じじゃないかもしれないです」って伝えて。ジェーン・スーさんの「貴様いつまで女子でいるつもりだ問題」のことを言ったら、トミヤマ先生も全く同じこと仰ってて。とはいえあまりにも大人の女性になっちゃうのも違うから、「サバイバルして、レディに今、なりつつある」っていう感じが出せるこの語感が1番いいんじゃないかって言ってくれて、「サバイバル・レディ」になりました。

ぴったりですよね。
続いて、楽曲としての「サバイバル・レディ」についてなんですが、トミヤマ先生との対談も収録されたアーティストブック、「まじめ」のキャッチコピー「地味なんじゃない、地道なだけ」が歌詞に入ってるんですけど、作詞家では無い先生に歌詞を依頼しようと思った時は、こんな感じで作ってくださいって要望したのかというのと、曲のイメージは怒髪天の上原子さんにおまかせでお願いしたのか、80年代の歌謡曲ソングっぽさっていうオーダーを加茂さんなり、由芙ちゃんからしたのかっていうところはどうでしょうか?
※ちなみに、トミヤマ先生の旦那様のMOBYさんがドラマーのScoobie Doの2019年の楽曲に「サバイバルファンク」と言う楽曲がありました。「サバイバル」と言うキーワードに、トミヤマ先生は思うところがあったのかもしれませんね。

曲については、80年代ぽさ、歌謡曲っぽさ、アイドルっぽさみたいなことを、伝えはしたけど、基本はもう怒髪天さんの色でっていうのは伝えてあったと思うんです。上原子さんにはたしか"明菜ちゃんにした”って作ってもらって、そのメロをもらってから、最初私が歌詞を書くっていう話があって、私が書いたんですよ。ファミレスで朝から、夕方4時まで粘って、で、書けなくて、何日かそれを粘ったけど、「やっぱり本人が本人について歌うのは厳しい気がするぞ。すごい自己完結感が出て気持ち悪いな」と。もうちょっといい距離感で見てくれてる人に頼みたいなって思ったときに、トミヤマ先生だったらいいなっていうのがなんとなく頭に浮かんで。そしたら加茂さんが「トミヤマ先生に歌詞を頼むのはどうですか?」って、私が書けないで悩んでるっていうのは知らずにね、言ってて、それはなんか、いい意見の一致だなと思って、「私もそう思っていました!」ってなって、トミヤマ先生に頼んだの。
トミヤマ先生には、「書こうと思ったけど書けなかったんですけど、こういう気持ちが載せたかったんです」っていうことで、その、今までアイドル活動やってきたこと、自信や誇りも生まれてきたけど、やっぱりまだまだ不安だったりとか、30代にいくにあたって、もうちょっと地に足つけて頑張りたい気持ちとか、なんかそういう部分をいろいろ伝えて、具体的なフレーズを使って欲しいとかは言わなかった。けど、私や私世代の、女の子になっちゃうのかもしれないけど、その働く上での背中を押す曲になるといいなみたいなことを伝えました。

ちなみに、トミヤマ先生に依頼したのは「まじめ」での対談より後ですか?

寺嶋:全然!あの時点ではまだ何も決まってない。

そうだったんですね。で、詞先か曲先かっていうのはどうですか?

寺嶋:「サバイバル・レディ」は曲先です。

なるほど。
では次の新曲は、「冬みたい、夏なのに。」について。加茂ファミリーの仲間としての付き合いは長いかと思いますが、デシちゃんにお願いしようとなった話の流れとか、制作のときのエピソードとあれば教えてください。

寺嶋:デシちゃんにずっと頼みたかったし、実は何曲かデモも前からもらってて、この曲じゃなくていろんなタイミングで、加茂さんから「にゃんぞぬが、ゆふちゃんに曲を書いてきましたよ」って言って、聞かせてもらった曲も何曲かあったんだけど、なかなかちょっとリリースに、その曲が選ばれないままになっちゃってたのが、今回、改めて1回ちゃんとやってみましょうって、今回用に、発注して作ってもらって。ストックからっていうよりは、新たに書きますよって決まって。私の歌い方の、ちょっとなんか、語尾が上がる感じとかをデシちゃんすごい好きでいてくれるらしいから、それが活きるメロにしましたっていうのは本人すごい言ってくれてました。最初はもうちょっとかわいい片思いの曲だったんだけど、自分も大人だし、なんかせっかく曲がかわいいから、歌詞もちょっと捻った方が面白いかもねっていう話を加茂さん含めてみんなでして、単なる片思いじゃなくて、割と救いのない感じの片思いっていうことにしたりとか…。デシちゃんと、面白いことあったかな。でもなんかずっと面白かったよ。めっちゃ褒めてくれるのとか。ちょっと歌っただけで褒めてくれるから、面白かったです。

そして、「Best Honey」は…ラジオで聴いて、めちゃくちゃびっくりしました。だって絶対にバリバリのロックンロールかと思って…

寺嶋:私もそう思ったよ。

でも、佐々木さんもアレンジ聞いて、びっくりしたってツイートしてたから。

寺嶋:みんな思いも寄らない方に転がった(笑)

こんな方向性でっていうのは、加茂さんなり由芙ちゃんから、ケンカイさんに伝えていたのでしょうか?

寺嶋:これは実は加茂さんより山田さんが結構関わってて、「Best Honey」に関しては、佐々木さんがテイチクさんということもあって、加茂さんがプロデュースしたというよりは、山田さん(テイチクの制作担当)が担当だったんですよ。私達は、ロックンロールのつもりで発注したけど、佐々木さんが、アイドルに楽曲提供するのが初めてっていうこともあってか、ご自身の曲とはちょっと違う方向にひねって作ってくださって。デモの時点で既にお洒落だったけど、ケンカイさんに投げたら、途中でSMAPみたいなコーラス入ってるっていう、すごい事になって。なんかそれぞれがこの曲をどう、多分佐々木さんは寺嶋をどう遊んでやろうかって思ってたし、ケンカイさんはケンカイさんで、このデモをどう遊んでやろうかって思ってたしっていう、なんか、みんなが好き勝手やったらこうなりました!っていう感じです。

なるほど、佐々木さんはデモは「2step仕様」だったとツイートされていましたが、ダンスミュージックっぽいトラックだったんですかね。デモバージョンも、何か機会があったら聴いてみたいなと思います。
何ともスウィートでとろけるようなエレクトロ・ウィスパーポップで、この曲は新機軸なので、早くいろいろな人のお手元に届いてほしいなと思いました。

続いて「あたらしいわたし」を1曲目にした理由について。今まで、リード曲、アルバムタイトル曲を1曲目にしてきたので、「サバイバル・レディ」が1曲目なのかな?って思ったりしたんですが。

寺嶋:曲順はあまり迷いがなかった。ライブのセットリストを組むときみたいな気持ちで決めて、加茂さんに聞いたら、「僕は、異論はないですよ」って言われて決まったっていう感じ。スタート感に戻ってくるために「仮縫いのドレス」を最後にしたいっていうのは結構主張しました。「仮縫いのドレス」が最後にいて、CDで、聴いてくれる人たちはそれをリピートしたらまた「あたらしいわたし」が始まるから、その、ちゃんと先が見えてる感じ。ポジティブなイメージがつくから、1曲目と最後の曲はわりと最初に決まりました。

そして、ラストを飾る「仮縫いのドレス」の素晴らしさにやられてしまっています。何とも気品のあるメロディ・アレンジ、そして松井五郎大先生の歌詞「人生はいつも 仮縫いのドレス」ですよ…
※短歌の下の句を全部そのフレーズにしたい、と言う話を先日もしましたね

曲順については、1曲目が1stアルバムを意識しての選曲とすると、ラストの曲は1stのラストが「#ゆーふらいと」だったと言うコンテクストからも「#ゆーふらいとⅡ」かと思いきや…

寺嶋:「#ゆーふらいとⅡ」が最後はやだなっていうふうには思ってたので。それで(アイドルを)やめちゃうように聴こえる感じがして。今までありがとう感が強すぎるから。

確かに知ってる人はあくまで更に前に進むための、あの時点での集大成・アンサーなのだと分かっていても、知らない人が聞いたときにそう思われるかなっていう憂いはあったかもしれないですね。

(「仮縫いのドレス」を)最後の曲にしようと思って、コンセプト含めて、曲調や曲順までも含めて考えて、オーダーしたのか、それとも、出来上がったときにもうこれがラストだなって感じになってるかっていうのはどうでしょうか?

寺嶋:曲が全部出来てから決めました。バランスとかストーリー性とかで並べたらこうなったって感じで。佐々木さんは「Best Honey」が7曲目だったことを、(レコードになった時の)B面の1曲目?だから嬉しいみたいに言ってくれて、いろいろいいところに収まりました。

アナログ良いですね。ぜひ、アナログも、あとハイレゾも出してください。「仮縫いのドレス」は、2番のAメロにタイトルがくるのと、そのフレーズのコードとメロディの絶妙なぶつかりのセンスがたまらないですよね。(※1番とメロが違う)

寺嶋:最初ね、違うタイトルだったんだけど、「仮縫いのドレス」ってすごい、いいフレーズだなと思っていたら、レコーディングの段階になって、やっぱこれをタイトルにしましょうって松井さんが言ってくれて決まりました。


ジャケット・アートワークで、今回のイメージカラーやデザインコンセプトは、あったんでしょうか?
※例えば「わたしになる」のジャケットについて、当時飯島さんが「PJハーヴェイの”Rid of me”みたいにしたい」と言っていたみたいに(結局アレはあんまり似てはいないと思いますがw)


寺嶋:この段階でタイトルが決まってなくて。「サバイバル・レディ」って決まってなかったから、曲に引っ張られるとかっていうのはなかったんだけど。逆に決まっちゃってたらもっと戦隊物みたいになってたかもしれないかな。ファースト、セカンドよりも作りこんだ感じでやりたいとか、これまでのはナチュラルゆっふぃーだったから、もうちょっとパキッとした色味でやりたいとか、あとはメイクもいつもよりカラー入れたりして作り込みたいとか、そういう抽象的な意見を言わせてもらったのと、あと衣装はもメイクもいろんな色を入れて、曲はすごいバラエティに富んでるから、ジャケ見ただけでも、いろんな色入ってるからおもしろそうみたい思ってもらえるようにしたいですって言ったら、ジュースを並べるという案をアートディレクターさんが出してくれて。


タイトル決定より前だったんですね…!

では、最後に。
女性が社会で働く事についても、エイジズムやルッキズムへの向き合い方に関しても、ゆふちゃんの学生時代からトミヤマ先生や雨宮まみさんから学んで考えて来たことが、世界・そして日本の社会でもようやく見て見ぬふりをやめ、光を当てて良くして行こうと言う気風が起こっていると感じています。

これまでも雨宮まみさんとの対談や、アーティストブック「まじめ」の中でもトミヤマ先生、大森靖子さんとの対談がありましたが、今度の誕生日を迎えてさらに先に向けてやって行こうっていう中でも、ゆふちゃんは考えて向き合ってきたのかと思うんですけど、その辺りの思ってることを発信する事にためらいや不安もあると思うんです。楽しいアイドル、ハッピーになるアイドルというイメージに対して、「音楽とかエンターテイメントに思想や政治を持ち込むな」なんて言う人もいるのは残念ながら実態だと思っていて。もちろんそれを伝える事が本来の目的では無いし、それを前面に出そうと思ってるわけではないだろうけど、発信することに対してどう折り合いをつけていけばいいかと、もちろん悩んでるんだと思うんですけども、どう考えているのかなっていうところをもし語れるならば教えて下さい。

寺嶋:それに関しては、発信しないことが、もはやちょっと不誠実な気はしている。が、発信できるほど、まだ自分に知識が足りない気もしているっていうのが悩ましくて。エンタメに政治を持ち込むなとかエンタメにこういうフェミニズムとか持ち込むなっていう人たちはもう無視でいいと思うんだけど、その人たちに何か言われることを恐れて言えないというよりは、何か物申せるほどのものがまだ自分の中に確立できてないなっていう、自分の足りなさみたいなところへの不安とか整理のつかなさがまだちょっとあって。それをトミヤマ先生とか、いろんな人の物を見ながら吸収していきたいなと思っているところで。楽しいとこだけ見せたいアイドルだっていうのは間違いないのだけど、楽しくするには、そういう問題と向き合わなきゃいけないような気がしているので。そこを無視して楽しめる人って、むしろ限られるっていうか。いろんな人が「これでいいのかな」って思ってることを、なかったことにして楽しんでる人って、それって強い人たちじゃないですか。しかも、その強い人たちが多数派なのかもちょっとわからなくなってきてる。少なくとも、私が届けたい人はそこにはいない気がする…みたいなことを今すごく思っていて、まだそこで、自分の中で、これは駄目ですとかいう確立したものがないことがちょっともどかしいというか。

成る程。多分そういう思いとか、今悩んでいることは、このアルバムが沢山の人に届いてその手応えが自信に繋がることで先に進めることもあると思っています。なので、売れましょう!沢山の人に聴いて貰える事を願っています。今日はありがとうございました。
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keiさんから感想いただきました!

この度はリリース前の忙しい中、貴重な機会をありがとうございました。淀みない当意即妙な受け答えに感心しきりでした。

文字通りサバイバルして来たこれまでを思い返しながら、またなんとなく「人生は祭りだ 共に生きよう」って台詞を思い出していました。

飛沫防止のアクリル板越しにインタビューする光景を「刑務所の面会みたいだね」と言っていましたが、もしお縄になる事があったら面会に来てくれる特典会やって下さい。特典券何枚要りますか?

色々落ち着いたらパンダ観に行きましょう。あと、牛っぽい犬も。

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