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魔性がヒトに固執した物語:前後編二部構成

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前後編となっているオリジナル。蒼月が人間でないものをまともに書いたレアなものになってます。まあ所詮蒼月のレベルは知れてますけど。
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記事一覧

前編:封印の肖像

前編:封印の肖像

 閉ざされた闇の中、私は青年の亡骸を腕に抱えて慟哭する。私という存在があるならばいるのであろう創造の神に問う。何故彼はヒトとして生を受けたのかと。
 夜闇に溶ける黒の外套を纏う私が佇む街角。酒に酔い水商売の女に囲まれて歩く男に、私の存在は認識されはしないらしい。それは多分彼がそれなりに幸福であるからだ。私は現実に絶望感を抱く者の目にしか止まらない。この存在をヒトは悪魔と呼ぶ。ヒトならざるもの。なら

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後編:永遠の眠り姫

後編:永遠の眠り姫

 ガタン、ガタタッ!
 馬車の激しい揺れと急停車で、伯爵令嬢は体勢を崩しかける。令嬢付きの小間使いは咄嗟にその身を支えようと手を差し伸べるが、逆に車内での転倒を阻んだのは令嬢だった。普段から領民からもじゃじゃ馬レディとの呼び声高いのはやはり伊達ではないのだと小間使いは思った。それしきのことで無礼と騒ぎ立てる人柄ではない事を承知した上での率直な感想だった。
「御無事ですか、お嬢様」
「ふふっ、転びそ

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あとがきと云う名の蛇足

あとがきと云う名の蛇足

 はじめまして、普段は薄い本活動月彩宮の蒼月里美です。この度は閲覧ありがとうございます。
 この二篇の物語は周囲の方によるリクエストより誕生しました。前編、『封印の肖像』はイラストレーター有葉みのり様のポストカード、
『描く人』https://booth.pm/ja/items/1558617 
『魔族の者』https://booth.pm/ja/items/711159  
をモチーフにしており

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