見出し画像

産業・組織心理学をざっくり学ぶ

ざっくり心理学を学ぶマガジンにて、心理学に隣接する学問を書籍「高校生に知って欲しい心理学」に沿いながら、6回に分けて心理学に関する学問について学んでいます。

前回は、発達心理学についてざっくり学ぶについてざっくり学びました。本章では、産業・組織心理学についてざっくり学んで行きます。

■ 第3章の構成
第1節 脳からこころを探る (生理心理学)
第2節 認知心理学にAttention Please! (認知心理学)
第3節 社会の影響を科学する (社会心理学)
第4節 ヒトの心の発達を理解する (発達心理学)
第5節 社会や集団における心理を理解する (産業・組織心理学)
第6節 こころを測る (心理統計学)
- 引用: 高校生に知ってほしい心理学

- - - 

第5節 社会や集団における心理を理解する (産業・組織心理学)

## 産業・組織心理学


### 組織心理学とは何か

以下2点のような検討や研究を行う学問である。

1.集団や組織に関連した課題を取り上げ、集団の中で生じる心理的働きや行動のメカニズムについての検討

2.産業によってつくられる商品やサービスに対する消費者心理や行動について検討

■産業・組織心理学が検討しているテーマ
・どのように集団において人材を育成するのか
・集団で意思決定するときに、何が起きているのか
・人はどのように商品やサービスの情報に注目したり、購買を決定しているのか

本節では、特に「集団での意思決定」と「消費者の心理」という2つのテーマを取り上げる。


## 集団での意思決定


### ものごとを集団で決定するということのメリット

集団の意思決定が行動を変化させやすくなる。

a.関与の高まり

講義を受けることに比べて、自分たちで話し合いをするということは、積極的な参加を必要とします。その結果、テーマに対する関与が高まり行動が変化しやすくなる。
b.情報の多さ
話し合いにより、色々な人の意見や考えに触れることで新しい視点やアイデアを得ることができる。また、変化に伴う問題に関して話し合うことは、一人ひとりの不安を和らげる働きも果たす。
c.規範の範疇
全員で決めたことだから、それを全員で実施しようとするようになる。行動を変化させるという規範が集団メンバーに共有されていく。


集団の意思決定は良い結果を生むといえるが、集団で決めることで問題が生じる場合もある


### リスキー・シフトについて

集団で意思決定することによって、1人での意思決定に比べて冒険的で危険な決定がなされること。

#### 例:1962年 ウォラックらの研究

「ある電気技師がまあまあな給料をもらえて将来も安定的に思える今の会社にとどまるか、給料は高いが将来安定的かわからない別の会社に転職するか選択しなくてはならない。別の会社で成功する確率がどのくらいなら、転職に踏み切るか。」
出典:Wallach et al.(1962)

※別の会社で成功する確率が低くても転職を選択すると回答することが、冒険的(リスキー)な選択となる。

- 集団で意思決定することにより、リスキーな選択の方に回答がシフトした

ウォラックらの研究では、その確率について個人の判断と集団での判断を比較して検討。その結果、グループで話し合うと、1人で回答していた確率よりも低い確率になることが示された。

- 考えられる要因

 a.責任の拡散
 1人で決定するよりも、集団で決定する方が一人ひとりの責任が軽くなる。そのため冒険的な判断がなされるから。
b.リーダーの影響
集団になるとリーダーの役割を担う人が出てくる。冒険的な選択をする人がリーダーになると、集団内でそのひとの発言力が大きいため、集団の意思決定がリスキーな方向に向かうと考えられるから。
※ウォラックらの研究でも、もともと冒険的な回答をする人が集団での話し合いで大きな影響力を持っていたことが示されている。

### コーシャス・シフトについて

元々の判断が集団意思決定により保守的で慎重なコーシャス・シフトという現象も見られる場合もある。リーダーの役割を担う人がいないときに生じやすいと考えられている。


### 集団極性化

リスキー・シフトもコーシャス・シフトも、集団意思決定をすることで判断が極端になる現象であるため、集団極性化と呼ばれている。

日常生活において、私たちが意思決定を迫られる問題には正しい回答がないものが多い。したがって集団での話し合いによって判断が極端になったとしても、それが必ずしも悪い結果をもたらすとは限らない。ただし、例年の売り上げに基づく予測をせずに楽観的な意思決定をとってしまうと、結果が赤字になる可能性がある。

集団での意思決定には周りの人の影響、すなわち社会的影響があることを考慮する必要がある。集団で話し合いをする際は、自分の意思決定がどのような影響を受けているのか意識してみると良い。

## 消費者の心理


現代社会において、多くの人はお金を払って商品やサービスを購入し生活を営んでいる。私たち消費者は毎日さまざまな情報に接しているが、そうした外部からの情報によってどのような影響を受けているのか。

例えば新しい清涼飲料の広告を見て「飲んでみたい」「今度買おう」とか、興味を持たない場合もあるが、その違いがどこから生じているのかを知るためには、消費者の情報処理過程、すなわち記憶や判断などの仕組みについて検討する必要がある。


### 消費者の情報処理の過程

人は多くの情報の中から、特定の情報に対して選択的に注目したり、その情報を理解しようとしたりする。こうした過程は実際には一連の流れを持っているが、ここでは「情報への接触」「注意」「解釈」の3つの段階に分けて考える。


- 例:炭酸飲料の広告をテレビで見る場面

①情報への接触(清涼飲料の広告を見ること)
- 情報の入力
    - 資格や聴覚に刺激情報が入力される
- 感覚記憶
    - 情報の記憶は数秒間持続
- 短期記憶
    - 注意を向けられなければ意識されずに消失。
    - 注意を向けられた情報は数分から数十分程度記憶に保持

②注意
- テレビを見た人の要因が影響を与える
- 「広告に登場するタレントが魅力的」という広告側の要因や、「喉が渇いているというような受け手の要因が影響を与える

③情報解釈
- テレビを見た人の知的構造(スキーマ)が大きな役割を果たす。
  -炭酸飲料と無炭酸飲料の知識がなければ認識できない
    - 「その清涼飲料は炭酸飲料なのか、そうでないのか」

▶︎ 「解釈された情報」は繰り返し「注意」が向けられることにより、長期記憶として保持され、飲料を買おうとする際など、必要なときに記憶が取り出され、検討されることがある。


### 消費者の情報処理過程に関する概念


各段階では消費者のニーズや選好、価値観、感情などさまざまな要因が影響を与えている。

#### 「消費者の感情」の影響について

感情は、私たちに現在の状況やとるべき対処に関する情報を提供する。

肯定的な感情状態:
状況や環境が安全であるシグナルとして機能するため、そうした感情状態にある人は認知的努力の少ない(あまり深く考えない)処理スタイルをとる。
否定的な感情状態:
何か問題があることや、適切な行為が取られるべきことのシグナルとして昨日して、認知的努力の多い処理スタイルを促す。

受け手の感情状態によって情報処理の深さに相違が生じると考えられる。

- 例:テレビで清涼飲料の広告を見る場合

お笑いバラエティ番組を見て、明るい気分の場合:
広告タレントの魅力など商品とは直接に関係のない周辺的情報の影響を受ける可能性がある
ニュース番組を見て、暗い気分の場合:
商品の成分や小需要などもっと中心的な情報を理解しようとする可能性がある

- - - 

AIDMAや、AISASなどの名前を聞いたことはあるが具体的なイメージが付いていないことが多々あった。「本当にユーザーは、そのような思考フローを通して、物事の意思決定しているのだろうか」ユーザーインタビューをすればするほど、人のことがだんだん曖昧に感じていく中で、身体的にも精神的にも限界を迎え自分自身がインタビューができなくなっていったことを思い出した。

画像1

引用:AIDMAの法則とは?AISASやAIDAなどの広告反応モデルとの違い

人間の思考フローは、自分が思っているよりも、複雑で全てを掴み取ることはできない。その中でも、できるだけ簡略化したのが先人たちの思考モデルなのかもしれない、と枠組みの偉大さを知識を得ることで改めて理解することができた。ただただ新しい情報を発見して、曖昧な検証のまま組み込んだとしてもやはり実体験を持って語るのは難しいのではないか。

改めて、ユーザーとたくさん会話していく上で仮説ができ、シンプル化していく複雑なフローに自身が飛び込んでいける体力をつけていけたらいいのかな、と思うようになってきた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?