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OKレモンティー侍

OK…。

日曜日、ペドロはそう呟いた。

日本に来て77時間が経過した朝、新宿のホテルに併設されているカフェで、今日乗る山手線について調べていた。秋葉原に行く為だ。

時計の針は7の数字をグサッと突き刺している。
ゆらゆらと香り立つコーヒーに、これでもか
というぐらい砂糖を入れる。
7袋目のシュガースティックに手を伸ばした時、入口から頭に包帯を巻いた男がやってきた。
「いらっしゃいませー。ご予約の佐々木様」
女性店員の高い声が、静かな店内に響く。ご予約の、SASAKISAMAという名前の男らしい。

優しい表情の奥で、今にも噛み付いて来そうな狂犬にも感じさせるその眼差しは、映画で見たサムライそのものだった。サムライはその優しい表情で睨みながら店員を呼び、コーヒーとサンドウィッチを頼むと、頭に巻いた包帯の交換をはじめた。
これがサムライか。とペドロはひどく感動した。

コーヒーとサンドウィッチを待っている間、血で黒く染まった包帯を外しだし、新しい包帯を、頭にぐるぐるぐるぐる巻きだした。
包帯が27周目を巻き終えると、サムライは、頭の大きさがずいぶんと大きくなり少し苦しそうにすら見えた。

そのサムライの席へ、フィッシュバーガーとレモンティーが運ばれた。
オーマイガー!彼はサンドウィッチとコーヒーだろう?
フィッシュバーガー?NO!レモンティー?NO!

頭の中でそう、叫んだ。

確実に運び間違われているであろうフィッシュバーガーにかぶりつき、表情一つ変えずにレモンを種が潰れるまで絞り出した。
それはまるで、映画でみたサムライそのものだ。
どんな映画やねん。

ペドロは少年の様な表情で思わずこう呟いく。

「OK…。Lemon tea ZAMURAI…。」 




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