見出し画像

中小零細企業がフェラーリから学べること

僕自身は、そこまで好きでもないのですが、フェラーリというブランドはすごく面白いなぁと思ってます。

フェラーリは、多分、一応、自動車メーカーであり、自動車のブランドだと思うのですが、明らかに他の自動車メーカーとは立ち位置や事業スタイルが違います。

フェラーリの在り方は、僕らのような中小零細企業でも参考にできることは多いなと感じます。

ということを言うと、富裕層をターゲットに、超高級プロダクトを作る、ラグジュアリーブランドを志向する、みたいに捉えられるかもしれませんが、そういう意味ではありません。

あくまでも、立ち位置的なものや、ビジネスモデル、在り方とか、そういう領域で、フェラーリから学ぶべきことが沢山ありそうだなということです。

昨対で販売数量が増えると株価が下がる銘柄

フェラーリは、昨年より車の販売数量が増えた場合、株価が下がるという珍しい銘柄です。これは、普通の自動車メーカーとはまったく逆ですね。トヨタにせよGMにせよ、フォルクスワーゲンにせよ、販売台数というのはすごく重要で、販売台数がいかに伸びたか、どの規模なのかということが、ある種の、競争での自分たちのポジションを表す指標になっています。

でも、フェラーリの場合、沢山売れちゃダメなんですね。フェラーリのブランド価値の一つには、希少性があるから、対前年で何%アップとか、そういうビジネスをしちゃダメなわけです。

これってもう他の自動車メーカーとは戦ってる土俵が全く違う。むしろ戦ってない。しかし、株式公開をしている以上、事業として成長させていくことは必須です。販売台数を増やさずに事業を成長させるというのは、実際のところはかなり難しい戦いです。

販売台数を見ると、ちょっとづつは増えてるんですよね。でも、来年は何%アップ、みたいな目標を掲げて邁進するというような感じでもないですね。実際、代表が変わって、その手の発表したら、途端に株価が落ちた、みたいなこともありました。フェラーリにとって急成長は悪です。

フェラーリが株式市場にいること自体が少し不思議ですが、所謂、成長率だけじゃないところで評価されたりするのが少し面白いです。立て付けは自動車メーカーなのに、自動車を沢山販売すると駄目という、かなり不思議なビジネスです。自分たちの事業やプロダクトに当てはめて考えて見ると、その異常さは分かると思います。

フェラーリの売上規模は4700億ぐらいでしょうか。トヨタは30兆円ぐらいなんで、トヨタの1.5%に過ぎません。2020年はコロナの影響もあり、減収減益だったみたいですが、それでも通期純利益は770億で、きちんと利益を確保していました。

事業モデル的には30%近くがライセンス収入というのも、フェラーリの特徴でしょう。あのカラーやロゴの使用権で年間1000億円ぐらいの売上を上げてるのですから、凄いです。ライセンス収入って、基本、原価はほとんどかからない。うまくコントロールすれば陳腐化も防げるし。ここで30%ぐらいの収益があるのは、かなり大きいんじゃないかと思います。

フェラーリファンはフェラーリの何が好きなのか?

フェラーリを好きな人は、フェラーリのどこが好きなのでしょうか。何に惚れてあんな高い車を買うんでしょうか。自分がお金持ちであることを誇示したいがためでしょうか。そういう人も中にはいるかもしれませんが、フェラーリは、どちらかというとかなり熱狂的なファンに支えられてるブランドです。フェラーリを愛して病まない人が、世界には多数います。

フェラーリを愛する人は、フェラーリの何を愛してるのでしょうか。エンジンの音が良い、速い、かっこいい、色々理由はあるでしょうが、そういう個別の理由に還元できるものだけで、フェラーリを愛してるのでしょうか。多分、そうじゃないはずです。そういう理由は、別にフェラーリじゃなくても、満たすことができるものばかりです。

フェラーリを愛する理由は、それがフェラーリだからです。なんかただのトートロジーになってますが、「フェラーリだから」としか説明がつかないものが、フェラーリを愛することの正体だと思います。それが、ブランド力みたいなものなのでしょうか。

そして、フェラーリは、長い時間かけて、それを築き上げてきたんだと思います。事業として拡大や成長よりも、ブランド力を築き上げることに力を注いできたのだと思います。

熱狂的なファンに支えられる強いブランド
そのブランド資産の活用

これは熱烈なファンを抱えるブランドの特徴だと思います。ラグジュアリーブランドに限らず、価格的には安価なものでも、そういう代替のなさ、唯一無二性が強いブランドなんじゃないかと思います。

その代替のなさや、唯一無二性みたいなものも、決して、スペックや機能や便益の積み重ねや掛け算で成立させてるのではないということも、すごく重要です。言語化できない、理由づけできないけど、どうしようもなく好き、他より好き、という感覚。

僕らは、「差別化」というときに、つい、競合他社との機能比較で〇×つけたりして、競合が✖のところで〇を取ろうみたいな、違いの出し方をしがちです。でも、フェラーリの差別化って、そういうことじゃないと思うんです。そもそも、そういう競合他社と比較できる要素での戦いには加わってないわけです。フェラーリが、自社の車を他車との性能比較で語ってたら、なんかちょっと違うなと思うんですよね。

ビジネス的にも、そのブランド力をライセンスという自動車ビジネスとは全然違うところで活かしてます。でも、これは自動車製造やレースへの挑戦があるから成り立ってるビジネスです。仮に、フェラーリが自動車の製造を止めたり、レースから撤退して、ライセンスだけの商売を始めたら、フェラーリのラインセスは今のような価値を保てるでしょうか。多分、保てないはずです。

この辺の組み立ても面白いなと思うんですね。
自動車会社としての本業は車を製造して販売するところです。でも、フェラーリは、どんどん新車を出して、どんどん販売台数を増やしてという戦略は取れない。

一方で、そうやってオーナーであることを価値を維持しつづけることや、F1などのレースへのチャレンジなどによって、そのブランド力を保つ。そして、そのブランド力を、リバレッジが利くビジネスに活用する。何か中小零細企業にもヒントになりそうじゃないですかね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?