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twilight

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2019年8月の記事一覧

最初から上手く出来るなんておもってなかったさ

 薔薇を枯らしたかも知れない。

 通勤中、花壇の逞しさを妬ましく思わない日はなかった。

 根がいかんかったかも知れないし、うどん粉病を警戒して、何かしらこう、「殺す薬」を全体的に浴びせかけたのが原因かも知れない。

 いや、鉢石が何のためにあるのか分からなかったので入れないという、そもそもの間違いがあったかも知れない。

 あの日、部屋のドアを開けた時一際香ったのは最期のSOSだったのかも知れ

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きっとはじまらず、おわらず、つながれないものたちに告げる、わたしはスキを諦めない

「きっと何者にもなれないおまえたちに告げる」から始まる長く苦しい死闘が『さらざんまい』の軽妙で終えた観があるので言祝ぎたい。

『さらざんまい』、最高にかっこよかったですが、絵面はマジでどうしようもなく最悪で(真顔)、それでもかっこよかったのですごいって思いました。

 本当に、どうにかならんかったのか、絵面。カタルシスの本来の意味は「排泄の悦楽」なので、それはそうなんだけど、本当に、どうにかなら

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Enter, enter mission

「ガルパンはいいぞ」

「ガルパンはいいぞ」

 ……という身内による凄惨なリンチ死が横行した浅間山荘事件ですが、物語が西住みほの成長に主眼を置く限りにおいてはそのような牧歌的な話で済んだのです。この記事には激しいスポイラーが含まれています。

 西住みほ率いる大洗女子を思い出してみましょう。戦車でドリフト、戦車に戦車を乗せる、戦車を飛ばす、戦車を橋にする……などなどなどなど、敵として戦うにおいて

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唯一罪があるとすれば、それは己の欲望に譲歩することだ

「唯一罪があるとすれば、それは己の欲望に譲歩することだ」というのはジャック・ラカンの罪の定義ですね。『さらざんまい』を履修しているのでメモとして残しておきます。今四話。お尻の話が多くない?

 幾原邦彦は恐らく同じことを何度も何度も執拗に繰り返して螺旋状に己を突破していく作家とお見受けします。うん、『廻るピングドラム』でプリンセスが取り出すアレ、モロにジャック・ラカンの「対象a」ですよね?

 そ

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伝道師よ、世界は遊びとは言えない殺し合いのようなキャッチボールなんだ

 大槻ケンヂに「泣き疲れた君と真夜中、植物園に忍び込んだ」という幻想があります(実際、夜間開園というものもあるらしく、それはたいそう心躍るものでしょう)。『Guru』という曲です。

 リズムとか凄くよたよただけど、これを成さねば、生きる意味がないというか、最早上手い下手の問題ではないのです。ライブだとカンペ見ながらでも歌詞が飛ぶけれども。あと「あ」が多い。「あ、やがて彼は本を読むようになり……」

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キャロルの国のジョナサンとルイス

 「名刺代わりの小説十選」を挙げよということになったので、険しい表情でええいままよと下記を挙げて、当たらずも遠からずだなぁと苦笑したのでご報告したい。

笠井潔『熾天使の夏』
ドノソ『夜のみだらな鳥』
エルロイ『ホワイト・ジャズ』
ランズデール『罪深き誘惑のマンボ』
津原泰水『綺譚集』
サリンジャー『ナイン・ストーリーズ』
夏目漱石『夢十夜』
坂口安吾『夜長姫と耳男』
秋山瑞人『猫の地球儀』
ドス

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おっおっおっおっおぃ、ぽ、ぽぃ、だぁ。

 正気です。いえ、掲題の句は予言者カッサンドラの台詞で、カッサンドラは狂っていますが。何某かの強迫観念に囚われて『アガメムノーン』を履修したので記しておきます。

 「おっおっおっおっおぃ、ぽ、ぽぃ、だぁ」とは、嘆きを意味するそうです。その後「おぉポローン、おぉぽローン!」と続きます。これはアポローン神への呼びかけの様子。予言が降りて来る時はこのように悲鳴を上げそうな気が、確かにします。

 予言

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同棲未殺人事件

 あの時は本当にどうかしていた。いや、本当に、どうかしていた。何なら今もどうかしている。魔がさす、とはまさにこのことか。この国の法律は心理学を根拠に設計されているため、意識をコントロール出来ない状態にあったと判断される場合、減刑されます。

 ああ、違う、違う……。

「水は、(どの程度)あげるべきでしょうか」
「枯れちゃいますからね」
「土、土は」
「専用のものがよいでしょう」
「そうですか。こ

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死神と赤い戦車

 完全自殺マニュアルがあるように完全自殺防止マニュアルがある。わたしにとって『赤い戦車』がそうであったし、そうである。

It's not more red than my hard will.

 『赤い戦車』が何故わたし(或いは他の誰かも)を救うのか、それは恐らく誰も、本人も、この詩以外の言葉を使って説明することは出来ないだろう。

 キャンバスとキャンバスを前にした画家の対立が、ここで起こる

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命の燃える場所

 今はなき畏友が是非にと勧め、かの偉大な書に於いても「何は無くとも読んでおけ」と書かれていたところのアリストテレスの『詩学』が全くもって不可解だったし不快だったので『はねバド!』の話をしましょうね。

 そのシャトルの初速は新幹線と同じであり、視認して対応しようとして出来るものじゃないし(スマッシュを打たれる時点で作戦失敗だし、そのような事態になると察した時点で着弾地点に既に居る必要がある)、その

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