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家の整理収納を見直したら気づいたUXデザインのこと。

こんにちは。いきなりですが、UXという言葉から何を連想しますか?
私は簡単に言えば「ユーザーの体験をより良くする」みたいなもの。と捉えていましたが、UXの本や記事を読んだり勉強するごとに、UXの概念や定義が広すぎるかつ複雑で「UXデザインって一体何なんだろう?」とか、「何から始めたら?」「どこまで出来ていたらUXデザインしていると言えるのか?」と思う事が多々ありました。

uxスペクトラム

引用:Oliver Reichenstein | flickr
Oliver Reichenstein氏が発表したUX Spectrum。UXが関係する範囲(分野)を示しています。

そんな先日、我が家の家族会議をきっかけに「家事の効率化をするぞ!」と話が上がりました。
家事の効率化をするためには、家の導線や整理収納が大切だね。と取り組んでみたところ、「これってUX5階層モデルの考え方と似てるかも?」と感じた事がありました。
後々、私なりに似ていると思った箇所を図解してみたところ、自分自身の思考整理にもなったので、UX5階層モデルを家の整理収納に重ねて紹介していきたいと思います。

5階層


戦略:本質的なニーズを原点にする

まず、我が家の整理収納に関する考え方や状況を共有しますと、こんな感じです。

・家事を効率化して、もっと好きな時間に費やしたい。
・そのためには(限度はあるが)ある程度お金をかけても良い。
・期間は急がない。空いた時間でやれればOK
・賃貸マンション。日当たりが良い。など...

家族会議では、この背景を元に課題を洗い出す事にしました。
UX5段階モデルで例えると、「戦略(strategy)」のタイミングにあてはまります。

5階層_戦略

ツールは、jamboardを使ってアイディアを視覚化しやすいよう付箋で上げていきました。

[ 1:日頃の家事をカテゴリごとに色分けし、すべて洗い出す ]

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生活に基本な要件「衣食住+育児」をベースに色分けして洗い出し、普段どれくらいの家事タスクを日頃行っているのかを可視化してみます。


[ 2:マトリックス図を用いて課題感が高い家事を選出 ]

スクリーンショット 2020-09-17 15.57.20

次に、カテゴリごとに色分けした家事を抽出し
その家事が滞る事で
・不快に思うか・思わないか
・生活に支障が出るか・出ないか
を軸にして並べました。

また、優先順位するべき家事ごとのエリアに数字をふっていきます。
そうする事で、どのエリアに含まれる家事が優先順位が高いのかが見えてきました。

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さらに、先ほどの洗い出した際に1のエリアにいた3つの家事を
別の視点のマトリックス図
・手間(時間)がかかる・かからない
・お金がかかる・かからない
を軸にして配置。
ここでは、何の家事にどんなコスト(お金or時間)がかかっているのかを把握します。

[ 3:アイディア出し ]

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そして、先ほどのコストに対しての改善アイディアを考えました。すぐに実行出来たり、細かく改善できるものもありますが、より効率化するためには「家の導線含めた機能的なモノの収納が必要。」という結論になりました。

※実際にこの「戦略」階層について詳しく調べてみると、UX戦略に含まれる要素には様々な要素があり、ビジネス・ユーザー・関係者共に包括的に条件を満たす事が望まれます。今回の例に当てはめると、複雑性を増してしまうので、ここではユーザーの本質的なニーズを掴み、今後の行動の原点に戻れるような目的を把握する意味での戦略として定義しています。


要件:「行動」と「モノ」と「感情」を客観的にとらえる

次のアクションとして私たちは整理収納アドバイザーの方と一緒に、アイディアをより具体的に解像度の高いものにしていきました。
各部屋ごとに普段の使い方や導線をお伝えし、現状の課題と踏まえて、部屋の使い方などをアドバイスしていただきました。

UX5階層モデルに当てはめると、ここでは要件(scop)の範囲となり、整理収納を実際にどう形に落とし込むかを考える段階になります。

5階層_要件

例えば家事の中で、負担が大きい「洗濯物」

これにかかる作業工程を細分化して、どこで、どうやって、どんな風に使うかを想像してみます。

洗濯物という家事は、
「洗う→干す→畳む→しまう」
の工程がありますが、

実際には実際には
「一緒に洗うもの/洗わないものを選別する→洗濯物に洋服を入れる(ネットが必要なものはネットに入れる)→洗剤・柔軟剤を入れる→洗濯機のスイッチを押して洗う→洗濯カゴに入れる→服の大きさ生地によって干すハンガーや干し方を選ぶ→干す配置を考える→シワにならないように干す→洗濯物を取り込む・ハンガーを片付ける→夫・子ども・妻のそれぞれの服の種類を選別しながら畳む→それぞれの引き出しにしまう・畳めない服はクローゼットにしまう」
の工程があります。


これをカスタマージャーニーマップを用いて書いてみるとこんな感じ。

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行動をする上で「必要な道具」や「使う部屋」などの実際に使う道具や空間も書いてみました。
・使う部屋:洗面所・部屋A・部屋Bと3つの場所を使っている。
・必要な道具:干す〜畳むの行動時では使う道具がほぼ同じ。
・感情起伏:畳む〜しまうにかけて、よりネガティブな感情に低下する。
が見えてきます。

そして、実際に使う部屋を見比べながら

・干す〜畳む〜しまうにかけての部屋を一つに完結すれば、ネガティブな感情が少なくなるのでは。
・洗濯をとりこむ際にすぐ畳めないので、夫・子供・妻ごとに置いておける一時置きBOXを設置すれば良いのでは?
・服選びも機能性・効率性に優れた服を選べば良いのでは?
・日当たりが良いので、窓に近い場所に物干し竿を設置してみては?

など...
より具体的な改善案が出てきました。


構造:モノの情報設計と行動心理を意識した整理法

次に改善案を元に整理収納では、モノを分類するポイントや行動心理に合わせた収納術を教えて頂いたのですが、UX5階層モデルの「構造(Structure)」にある、情報設計をするシーンで活用されるフレームワークのひとつ、LACTH法が家の整理収納にも有効である事に気づきました。

5階層_構造

LACTH法とは、情報を整理する際に「場所・アルファベット・時間・カテゴリ・階層」の、5つの分類方法から情報を整理するフレームワークです。

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例えば、モノを収納する際にも以下のように当てはめる事が出来ます。

モノを使うシーンごとに分ける(場所)
・複数の目的がある部屋になっていないか。
・重複するカテゴリのモノが複数の場所に分散していないか。

モノを五十音順で分ける(アルファベット)
・アルファベット順または五十音順に並べる事で探しやすくなるか。

モノのカテゴリごとに分ける(カテゴリ)
・上着・ズボン・靴下・パジャマなどカテゴリごとに収納できるか。
・本のジャンルごとに本棚の配置ができるか。

モノの新しい古い、今使うか使わないかで分ける(時間)
・賞味期限・消費期限が切れているか。
・シーズンオフのモノかどうか。
・備蓄品・予備品のモノかどうか。

モノの高い低い、大きい小さいで分ける(階層)
・背が高いモノは奥に配置。背が低いモノは手前に配置されているか。
・子供の年齢や体型の変化など、サイズアウトしてしまった洋服かどうか。

そして、人間の生活シーンに合わせて「めんどくさい」や「やりたい」と思う行動心理を生かしてた収納にしていきます。

例えば「めんどくさい」と思う場合、
・引き出しを開ける際に、少し開けるだけで良いように一番手前によく使うものを収納しておく
・どこに収納していいか分からないモノをとりあえず入れておける、なんでもBOXを設置しておく
逆に「やりたい」と思う場合
・子供が率先してお手伝いできるよう、子供の手が届く高さの引き出しに子供用の食器を収納する

など、人間のその時に芽生えた気持ちに寄り添う事で、より直感的な体験が出来るようになりました。


骨格:ようやく収納レイアウト

ここまで来て、ようやく収納のレイアウトについて考える事ができるようになります。引き出しは色んなメーカーの収納引き出しのサイズや仕様を調査しながら、我が家の押入れに合うサイズを検討。

5階層_骨格

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押入れの収納ラフ


表層:家具のデザインを選ぶ

5階層_表層

家具のデザインを選ぶ際にポイントなのは、UX5階層モデルの戦略の基盤となった「我が家の考え方や状況(コンテキスト)」や、定義した「家の導線含めた機能的なモノの収納」という原点に振り返る事です。
今回モノを収納する際に使われる家具の配置場所の確認。賃貸マンションなので、取り付けが取り外しが簡単であること。場所によっては、普段人目につく必要がない家具なので、景観に左右される必要がないこと。機能性が重視されるデザインである事。など、色んな制約が見えてきました。

以上の事を踏まえ、多様なサイズでカスタマイズ配置しやすいニトリのクリアケースを採用しました。また、セリアの整理収納仕切りケースを活用し、収納空間を無駄なく活用できるようにしました。


まとめ

今回の家の整理収納を通して、UX5階層モデルにおける考え方がとても役に立つ事がわかりました。

全体を俯瞰してみるとこのような、このような一連の考え方で進めていた事に気づきます。

5階層_家事収納

また、情報設計に関して「情報アーキテクチャ 第4版 ―見つけやすく理解しやすい情報設計」にはこう記載されています。

建築は社会的な機能を効率よく果たし、伝えるための物理的な環境を生み出すことを目的としています。情報アーキテクチャもまた、情報環境において同じことを目的としているのです。

この図は、情報空間を設計するための3つの要素ですが、

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↓ 今回の整理収納に当てはめると

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こんな感じの要素で設計出来るかと思います。
要素として、とても似ていますよね。

UXデザインが気になっているけど何から初めていいか分からない人。私は家の収納をしてみて気づいた事をUX5階層モデルに落とし込む事でUXデザインの勉強になりました。
収納は変えたいと思った時に変えやすいので、気軽にUXデザインを実践する場として「家事の効率化」や「家の機能性」など、まずは身近な空間について考えてみると面白いかもしれませんね。

それでは。

参考:
https://goodpatch.com/blog/how-to-design-the-elements-of-ux/
https://uxxinspiration.com/2014/09/ux-diagram/#UX5


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