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ゆべしちゃん
2018年11月30日 22:30
イヴォカ、君の右目は焼け、爆ぜ、鞣したようなピンクの肉芽。 ぼくはずっとそこに触れたかった。君はそこ以外なら何処でも触らせてくれたのにね。 ああ、イヴォカ。ぼくが君に殺されてから99年たつ。 ここは冬の海の底のように暗く、静かで、冷たい。いつも前髪に霜がおりて、鼻の先には氷柱が垂れ下がる。 時々何かの力がぼくの魂を上へ引こうとする。優しい光とぬくもり。そこに行ったらぼくはもう決してイ
2018年9月9日 02:40
潮騒に混じる呼び声で目が覚めた。「旦那さま、旦那さま…」まだ夜が明けぬ暗闇の中、目を凝らして声の主を見極めると、一ヶ月前から行方がわからなくなっていた飼い猫のハルが枕元にいた。「起きてくださいまし」そのハルが口を利いている。私は一瞬、行方のしれぬ老猫を心配し続けたせいでおかしな夢を見ているのかと思った。しかし肌を切るようなニ月の寒さはまさしく現実のものであるように感じられた。