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水曜日の湯葉62 ◆ ストレスフリーよりもステートレスな人生

株式会社 LIXIL さんの「未来共創計画」にて、短いSF小説「我が家の壁内細菌フローラ」を寄稿させていただきました。同社では『誰も見たことのない「豊かな暮らし」』をテーマとしたアイデアを募集しており、最優秀賞には賞金30万円が出るそうです。よろしければ下記サイトからご覧ください。

僕も順調に「親戚の何やってるのかわからん人」枠になってきたのですが、このように知名度の高い企業と仕事をさせていただけると、正月の帰省時などに親を安心させるネタになって大変助かっております。



この有料日記「水曜日の湯葉」の収益はもちろん課税所得なのだが、みなさんの課金を税務署にピンハネされるのは腑に落ちないので、iDeCo に突っ込んで所得控除対象にしている。

iDeCo というのはつまり個人で運用する年金なので、最終的にこの金は僕の老後資金になる。最近知ったのだが僕にも「老後」というものがあるらしい。なんとなく40歳くらいでバラード調の音楽とともにスタッフロールが流れて社会からフェードアウトしていくものだと思っていた。

たまに投げ銭をくれる人が「美味しいもの食べてください」といったコメントをくれるが、それも同様に老後資金と化している。老後に美味しいものを食べて約束を果たしたいので、せいぜい健康には気を遣おうと思う。糖尿病とか気をつけよう。病名は変わるみたいだけど。


2月8日 水

事情あってレンタカーを借りた。バイク乗りがたまに四輪に乗ると「すげえ!荷物置けるし寒くないし雨でも全然平気じゃん!」とテンションがだだ上がるが、数キロ走ると「やっぱ二輪の方が楽しいな」となってくる。四輪は駐車が面倒なので「道中に面白いもんがあったから停めよう」がしづらいのだ。停まることが想定されている場所にしか停まれない。そのあたりがどうにも自分の思想と合わない。

仕事用メールに新規の問い合わせが2件来る。どちらもやったことのない内容である。仕事の幅が広がっているのは純粋に嬉しい。デビュー直後は「自分は何十年も同じことができるタイプじゃないので、落ち着いたら新しいこと始めないとな」と思っていたのだが、なんか依頼のほうが勝手に変わっていくのでちっとも落ち着かない。社会の変化に追従していくだけで人生に飽きない。

自分は短編作家気質だと前々から言っているが、もっと言えば http サーバーみたいな労働が似合っている。相手からリクエストがパッと来たらできるだけ短時間でレスポンスをポッと返して終わる、みたいなやつ。人間同士のつながりの糸に何かを蓄積させていくのは肌に合わない。ステートレスがいい。


2月9日 木

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文章で生計を立てる身ですのでサポートをいただけるとたいへん嬉しいです。メッセージが思いつかない方は好きな食べ物を書いてください。