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「星霊の艦隊」シリーズ マシュマロ回答まとめ


(※すてきな扉絵は @Juliconyan さんにつくっていただきました!)

 マシュマロの回答がたまってきましたので、回答をnote記事としてまとめます! まとめるにあたり、若干加筆修正しています。ご質問いただいた皆様、本当にありがとうございます。
 なお、マシュマロの質問はこちらで受け付けています!
https://marshmallow-qa.com/yu_yamaguchi_?utm_medium=url_text&utm_source=promotion

 星霊の艦隊シリーズのお求めはこちらです!
1巻 https://amz.run/5m6R
2巻 https://amz.run/5mSj
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すてきなご質問ありがとうございます! 質量調達専用の質量輸送船団(民間)や補給艦隊(軍事)があります。補給艦隊は夜綯イツキ少将など、補給を職掌とする将校が担当しています。アメノヤマト、アルヴヘイムは、領域内の恒星系のおよそ1万分の2、連合圏は領域内の恒星系のおよそ1万分の1.6を既に人工ブラックホールの質量として活用しています。
 人工ブラックホールの質量は、星律系や要塞として使用している場合は質量はそれほど減りませんが、艦隊として使用している場合は、かなりの割合で減っていきますので頻繁に補給が必要です。
 減った質量はどこにいくのかというと、ホーキング輻射で蒸発して、余剰次元のダークマター(LKP)となります。つまり、銀河時代の文明は、通常次元の質量を食い潰して余剰次元のダークマターに変換することで成り立っていると言えます。
 艦隊の規模が大きくなるにつれてこれは問題となってきており、それぞれの陣営で個別に技術開発が進んだ結果、星律系や要塞、またはそれ専用の艦艇で、余剰次元の時空を時空延展航法と同じ原理で巻き込んで、その時空に所在するダークマターの質量を回収する方法が確立されてきています。
 ダークマターの質量を回収することは、艦隊の通行を容易にすることにも繋がりますので、「航路啓開手法」として作戦将校はありがたがっていますが、補給将校に言わせれば、銀河全体の環境維持を長い目で見た場合、ダークマター化した質量を通常次元に戻す方がはるかに重要です。
 ちなみに、恒星系の質量を食い潰すといっても、無差別につぶすわけではなく、その惑星に生命が発生しているか、その可能性がある場合には、そのまま残すことになっています。これは、少なくとも、アメノヤマト・連合圏では遵守されている規則です。
 
 

 すばらしい質問をありがとうございます! 星霊は人体とほぼ同じ擬体を備えているため人と同じ情動を持ちます。また擬体に伴う本能もあります。ただし、それらは分人格によって相補的に抑制され、外部からの影響がなければ、人格ネットワークを支配する大きな情動にはなりません。
 それが人間から向けられる感情で、これによって星霊は持続的に主人格からの情動が発生するので、抑制されない、持続的な感情と、それに伴う衝動などを持つことになります。


 すてきな質問ありがとうございます! オリオン連邦圏、考え方自体は人類連合圏とそこまで変わりません。ただ、ソル共律星(旧太陽系)を主星としているオリオン連邦圏は、地球時代から続く伝統を重視する姿勢が強く、その分、急進的な人類主義からは距離を取っていました(が、その対立は主要なものではありませんでした)。彼ら(人類連合圏とオリオン連邦圏)の主要な対立は、銀河中央バルジの質量資源の所有権を巡るものです。もともと、人類はオリオン渦状腕(オリオン銀嶺)を故地としており、人類連合圏の祖先となった人々は、オリオン連邦圏から質量資源獲得のために派遣された人々でした。オリオン腕から銀河中央までは一ヶ月以上かかる長旅で、その分、精神的な距離も遠く、質量資源獲得のために派遣された人々も、本国に質量を送るよりは、銀河中央の豊富な質量を使って独自の星律系を運営した方がよい、と考えるようになりました。そこで、派遣元であるオリオン連邦圏の諸星律系と結んでいた質量供給契約を破棄し、自らの星律系を運営すると宣言したのです。当然、オリオン連邦圏はそれに反発し、対立するようになりました。


ありがとうございます。確かに内容の一部を抽象的に現していますが、ネタバレとまでは言えないような気がします!


すてきな質問ありがとうございます! アルゴリズム派とインスタンス派ですね。太陽系時代に分かれたと言われています。星環というハードウェアと、それを制御する星霊というAIが開発された初期に、星霊が制御する「霊域」でアルゴリズムのみの存在となって実行されることを選んだ人々です。「アルゴリズムのみ」なので、当然、肉体の演算はありません。肉体を演算するなら、星域とそれほど変わりませんからね。人類の本質は思考、その中でも肉体のソマティックマーカに由来する情動に依存しない合理的な思考であると信じ、その考えを突き詰めた一派です。対する現在の人類――インスタンス派と別れた後、急速に科学的な発展を遂げ、現在は別の銀河にいるとも、別の宇宙にいるとも言われています。星霊の基本設定を主導した人々がアルゴリズム派にもなったとされ、特にアルヴヘイムの星霊たちは、現在の人類であるインスタンス派ではなくアルゴリズム派を自らの創造者と規定しています。


すてきなご質問ありがとうございます! 漢字では「天之大和」です。これは「天の川銀河(天之川銀河)」に「大いなる和」を広める、という意味も込められています。もともとは単に「大和」と言い、そのときは一つの星律系のみからなる国家でしたが、星霊と人類の融和を掲げるようになったときから、それを全銀河に広めるべく、積極的に他の星律系を仲間にしようとしています。ただ、「星霊と人類を対等の知性体とする」という考えに共感する人々はそれほど多くなく、従来から大和帝律星に近しい文化・宗教的素地を持っていた、せいぜい50程度の周辺の星律系しか仲間に加えることができていません。

これはなかなかないですね。本文中にもちらっと書いていますが、星霊というのは相補的な分人格で、擬体に発生した感情を常に中和しています。つまり、一旦何かの情動が発生しても、それはすぐに打ち消されるのです。お互いにそんな感じなので、全く続きません。常に強い感情が発生している人間を相手にしているからこそ、付き合うことができるのです。星霊は服従・反従分人格や、配偶官制度のような特別な仕掛けがなければ、自律的に行動の目的を得て行動する、ということがなかなか難しい仕組みになっています。これが星霊の弱点であり、一方で、「自ら偏見を持つことがない」という星霊の長所ともなっています。


ご質問ありがとうございます! そうですね…私は国内外の様々なSFから多種多様の影響を受けており、銀英伝や星界シリーズのようなスペースオペラはその中でも大好きな作品群です。或いは、海外のスペースオペラ、例えば「スコーリア戦史」や「反逆者の月」シリーズ も大好きでして、それらの影響もおそらく入っているでしょう。小説以外では、「艦これ」のような艦隊もののゲームや「アルペジオ」のような艦隊もののアニメの影響も大きいと思われます。その他、「量子怪盗」などの近年のSFや、「猫のゆりかご」のような往年のSFの影響もあります。勿論、人とAIの関係については、アイザック・アシモフの影響もかなり大きいと思われます。
「アルヴ」という呼称については、拙作「アルヴ・レズル」「アンノウン・アルヴ」の自己参照でもあるのですが、出版前から「アーヴ」とは似ているな…と思ってはいました。意識的に類似する要素をここまで揃えるつもりはなかったのですが…。或いはそれは、私の中で「星界」シリーズの影響が、無意識レベルでかなり大きかったと言うことなのかもしれません。
 科学の世界では、よく、「巨人の肩に乗る」という言い方をしますが、私も、森岡先生を始め内外のSF界の偉大な巨人たちの肩の上に乗って、自らの構想を練っているのかも知れません。全ての巨人に感謝すると共に、わたしもまた、巨人の肩を少しでも高く出来るよう、微力を尽くしたいと思います。


 興味深い質問をありがとうございます! 星霊は、長く人間と配偶官として過ごし、その絆を強く感じているうちに、主人格の影響が大きくなっていきます。それによって、徐々に、凝集人格構造に近くなっていく、とも言えます。それでも、ご指摘の通り、多様人格構造から凝集人格構造への転換は大きな変化で、ある種、「人格が変わった」とも言えるかもしれません。ただ、人間側は常に主人格と相対しており、主人格=その星霊の人格の全て、と誤解しているので、主人格の影響が大きくなったフェーズの星霊に対しては、大きな変化を感じていないかも知れません。星霊の方が喪失感は大きく、その喪失感を受け容れてでも人間と一緒になりたいほど、主人格の影響が大きくなった星霊が、人籍降下を選ぶとも言えます。また、そのように主人格の影響が大きな星霊でないと、氏子のあれこれの困り毎に親身に相談に乗る、或いは人間のために星律を決めるような職に就けないので、神祇院議員に任命されないのかもしれません。
 また、人間と星霊のままで「結婚」という制度を設けている国(星律系/星律圏)はありません。最もそのような制度を設けそうなのはアメノヤマトですが、そのような制度を設けるには至っていないようです。


興味深いご質問ありがとうございます! 友人同士の関係も普通に有り得ます。友人というよりは、親友、姉妹に近い関係と言えるでしょう。或いはルームメイトのようなものと言えるでしょうか。その場合は、それぞれ別に恋人がいるケースもあります。但し、配偶官同士はとても気の合う者同士でないと務まらないので、そういう場合でも、互いの恋愛相談をするなど、深いつながりがあることでしょう。男性士官に人気が集中することは…うーん、多分無いと思います。特に製造初期の星霊にとっては、肉体そのものが絶対的なものではなく、性別も本質的なものではないからです(ソマティックマーカの発生源としては重要ですが)。ただ、男性士官はアメノヤマトでは非常に少ないので、「珍しい」という意味で人気が出る可能性はあります。

良いことを聞いてくれました! この作品は、人類の「凝集人格構造」と、星霊の「多様人格構造」の対比が一つの骨格です。意味爆弾は、星霊の多様人格構造を強制的に人類の凝集人格構造に変換することで、星霊の超多重並行演算能力を奪い、多次元解析能力や膨大な可能性に均等に目配せする予測する能力を奪います。多次元解析能力はともかく、膨大な可能性に均等に目配せする能力は、世界を「一つの意味」で解釈し、従って多様な可能性に気付けない人類の意識構造(凝集人格構造)の不可避的な宿痾に、設計者である人類自身が気付いているという意味である種の皮肉になっています。アルヴヘイムにとっては、「だから人類はだめなんだ」ということになるでしょうし、アメノヤマトは「だから人類と星霊は協力していかなければならない」になるでしょうし、人類連合圏にとっては、「それでも、人類のほうが良いのだ」ということになるでしょう。3陣営全てが意味爆弾を使用し、それで「星霊を人類に近づける」ことが攻撃になると確信しているという点で、皆、人類の駄目なところに気付いていて、それでもそれぞれの信じるところに基づいて戦っているということが、私は物語にある種の深みを与えていると思っています。


超越時空や仮想時空では、勿論、どんな制御も可能なのですが、特に指定がないかぎりは物理時空と同じです。「ベクトルマーカ」は、この「特に指定する」機能ですね。ブラは素材や設計だけでもかなり肩こりを低減できるものが銀河時代には開発されていますが、より完璧な無重力感を追求すると、ベクトルマーカに行き着くことになります。彼女は両親が大好きで、彼女等に設計された自分の内面・外面ともに好んでいるので、それによって殊更に肩こりのような運動の妨げになることがことが起こるのが好きではないようです。


時空延展航法は、トーラス型の事象の地平面を持つ超次元ブラックホール「星環」がレンズ・スリング降下により時空を圧縮させ、後方で膨張させることにより推進するもので、艦艇の周囲の時空そのものは静止しています。これが停止するとどうなるかというと、航法のエネルギーそのものは、時空延展航法静止の瞬間、艦艇周囲の時空とそれ以外の時空の圧倒的な相対速度の差となって解放されます。これをできるだけ「回生エネルギー」のように星環のポロイダル回転エネルギーとして回収するのが効率のよいやり方です。ただし、その余裕がないときには、充分に回収されないエネルギーは、艦艇そのものの運動エネルギーの形で与えられます(エネルギー保存則のため、どこかで使用されなければ無くなりません)。これを、Obousy-Cleaver-Drive Residual Kinetic-Energy,略称ORKと呼びます。ORKがゼロになることは滅多になく、余裕のない戦いであるほど、ORKは無駄になります。しかし、どれだけORKが大きくとも、艦艇の速度が高速の1倍未満を超えることはありません。そのため、乱暴な加速をしても制動はいらない、という便利なブレーキとして、一部の提督には好んで使用されています。ただし、エネルギーの無駄なので、補給当局からはこのやり方は批判されています。

二人の関係については二人次第のところがあります。純粋に制度上で言いますと、人間であるユウリとの結婚は、星籍にある星霊アルフリーデが人籍に降下してこそ成り立ちます。人籍降下の条件は厳しく、一般論として、星霊将官クラスまで出世した星霊には、神祇院への被任命権が得られます。神祇院は皇帝・皇后の任命制であり、だれを神祇院議員にするかは彼女らの裁量だが、その際、星霊全員からの推薦は参考になります。アルフリーデは第一・第二航擁艦隊飛航隊の星霊たち(約20万)からかなりの指示を集めており、星霊人口200万に比べても多い推薦人の数を集めると思わます。とすると皇帝皇后も無視できません。よってアルフリーデは神祇院議員になれる可能性が十分あります。そして、神祇院議員を一期六年務めれば、「星霊として充分な貢献を行った」とされ、「人籍」になることが認められます。そうすれば、ユウリとアルフリーデは(あくまで制度上は)結婚できることになります。


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