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誰かの命に関わるかもしれない、医療・ヘルスケアの情報発信にPR視点で関わるという事

医療・ヘルスケア領域における広報

私は新卒入社した前職のPR会社に在籍していた時、主に医療・ヘルスケア領域を担当していました。

クライアントは、病院で処方される医薬品を提供している製薬会社や医療機器メーカーが中心で、日頃から企画を考えたり、セミナーを開催したり、記者へ情報提供したり…… と、多岐にわたる広報業務をこなしていました。

また、扱う病気は聞き馴染みのある生活習慣病から、一般には知られていない希少疾患、かなり重篤な症状のものまで幅広く、一つひとつの病気がどのようなものなのかを勉強するところから毎回始まります。

そんな医療・ヘルスケア領域の広報活動をする意義ですが、

「まだ一般的には知られていない病気の認知を獲得することや、病気を抱えながらも医療機関を受診していない潜在患者に治療するきっかけを作ることが大きな役割」

なのだと、かつて会社の採用サイトに載っていた私は申していました。

「あまり知りたい情報じゃないし、困ったらお医者さんに聞けばいいじゃん」と思う人もいるかもしれませんが、とはいえ病気にはかかりたくないし、予防と早期治療がキホンなんですよね。だから、知っておくべき情報なのです。

医療・ヘルスケアに関心を持ったきっかけと醍醐味

医療・ヘルスケアはかなり敷居の高い領域という印象を持たれていて、「難しそう」と敬遠されがちです。(あと、基本的にあまり関わりたくない情報っていうのもあるけど)

そりゃあ、PRパーソンたるもの「やっぱりトレンドの最前線を感じるスイーツだったり商業施設なんかのお仕事をやってみたい!」そういう声も多いと思います。私も一時期ちょっとだけそう思ってました。商品や店舗など、形としてあるものは明確で伝えやすいんですよね。

そんな私は就職活動中に海外でおこなわれた疾患啓発の事例を見て、「医療・ヘルスケアって面白いかも」と漠然と思うようになりました。

”服に付いたシミは気にするのに、あなたの皮膚にあるシミには気を配らないのですか?” ……なるほど(電球)

「難しい情報を分かりやすくして伝える」「誰もが関心を持てる切り口で伝える」そんな思考のプロセスと表現が、この領域の難しさであり醍醐味なのだと思います。形にないものだからこそ、求められる高度な創意工夫。

ただ、素人目線で自由な発想で考えたらOKというものではなく、医療・ヘルスケアに関する法律(薬機法)や独自のトンマナを踏まえて考えなくてはいけません。このバランス感覚が超重要。企画のブレストをしていて、「これはできない、あれもできない」ってアイデアを出した瞬間に却下することは日常茶飯事です。だからこそ、バチっと企画が決まったときは気持ちいいと思います。

医療・ヘルスケア情報の信憑性問題

ここまで書いてきた通り、医療・ヘルスケアに関する情報は他領域と比較して、求められる”情報の質”がかなり異なります。第一に、医学的に正しい情報であること。それは確実に担保されていなくてはいけません。

そういった正しい情報は、新聞をはじめ専門性の高い記者が多く在籍しているメディアから発信されていて、広報活動でもそこが一番の土俵だったりするのですが、ここ数年で一気にその情報流通の環境を揺るがす地殻変動が起こりました。いわゆる「WELQ問題」です。

本来であれば医学的な根拠があり正しい記事が掲載されるべきところに、検索エンジンのアルゴリズムを悪用して、サイトが上位に表示される有利な状況を意図的に作る目的で大量投下された真偽の怪しい記事や盗用記事に対する信憑性を問われ閉鎖に追い込まれた、という事件です。(ざっくり)

詳しくは、サイト閉鎖に至る騒動の火付け役とも言われるバズフィードの朽木誠一郎さん(https://twitter.com/amanojerk)の著書にて。必携です。

この頃から私の関心も、情報の発信より流通環境の整備の方に向いていきました。発信しないでいい訳ではもちろんなくて、「良い情報という種がちゃんと届いて花ひらくためにしっかり土を耕そう」そんなイメージで思ってました。

検索こそが現代の”第一選択薬”じゃないか?という問い

検索アルゴリズムの改善もあり質の高い情報が上位表示されにくくなったとはいえ、インターネット上の医療・ヘルスケア情報は信憑性のないものも混在している状況は変わりません。それに、こんな検索ファーストな時代に「ネットは見るな」なんてあり得ません。

でも、情報を受け取る個々人が取捨選択する力を鍛えること、いわゆるリテラシー向上での対抗は可能だと思っています。検索が情報取得の第一選択になっているからこそ、「どういう構造で自分の手元まで情報が流れてきているか」「その情報がどこから生まれて、どういう意図が働いているのか」そんな視点を持っておくことが不可欠なのだと思います。発信する側に頼りっぱなしにするんじゃなくて、受け取る側の「個人の(情報の)選択力」も超重要だと思います。

なので、近年では正しい情報を見極めるための教育的な取り組みのニーズは非常に高いと思います。と言いつつ、どんな団体でも簡単にできることでもないのですが。例えば、医療スタートアップのメドレーさんの医療事典は、WELQ問題が勃発していた頃、良質なコンテンツを提供しているサイトとしてポジティブに取り上げられていました。インターネットに情報を探し求める人たちの受け皿になり得ると思います。

どのサイトなら頼れるか、その審美眼が一人ひとりに求められます(唐突)

最後に

私は今まで自分自身の健康に関して悩むことはそんなになかった事もあり、子育てをするようになってから、こういった情報にかなりセンシティブになりました。仕事としての医療・ヘルスケア領域から離れ、一生活者として今まで以上に必要性を感じている、今日この頃です。

昨年からは記者などの情報発信に関わる方々を中心とした勉強会(http://medicaljournalism.jp)
も活発化していたり、TwitterなどのSNSでも主体的に情報を発信される医療従事者の方も増えてきたなと感じています。ただ匿名だったりするので、そこがまた難しいところですが…。何はともあれ、少しでも医療・ヘルスケアの正しい情報にアクセスできる、そんな環境が整うことを願っています。

最後が少し雑多になりましたが……、

医療・ヘルスケア領域は、高度な専門性と確かな広報スキルが求められる(そして、関わる覚悟も必要だけど)面白いしやりがい満載の仕事だと思うので、関心を持つ人が少しでも増えたらなと思っています。

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