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#31 優しい嘘はいらない

なんだか今回のタイトルにはパンチがありますね笑

今回は現場でトレーナーとして仕事をする中で、教科書などにはあまり載っていない様な正解がはっきりしない話について書いてみます。

チームの橋渡し役

チームにおけるトレーナーの役割の1つが、コーチ・選手をつなげる橋渡し役であると私は認識しています。例としては、

①選手のコンディションをコーチと共有する
②選手が直接コーチに聞きづらい(伝えにくい)事を聞く(伝える)
③コーチや選手が相手に伝えた内容の意図について十分伝わっていない場合に補足をする

など、コーチと選手という関係だと、お互い気を使う立場のため自分の気持ちを素直に伝えたりすることが難しい場合があります。その際にトレーナーが両者の間に入る機会が増えていきます。(一部のコーチや選手は関係ない方もいらっしゃると思いますが)

そこで、上記に挙げた例について実体験も含めて詳しく説明していこうと思います。

①選手のコンディションをコーチと共有する について

これは基本的なトレーナーの業務になります。

ただし、この共有すべき内容についてはとても悩ましいケースが出てきます。それは、

「選手にコンディション不良(痛みなど)があり、コーチへそれを伝えるとおそらく試合に絡めなくなるから、伝えないでほしい問題」です。

現場でトレーナーをしていれば、必ず何回かは遭遇する問題。

この相談が選手から出てきた際に、私がまず確認することは、その痛みがプレーにどの程度影響するか?です。

サッカーであれば、90分+αを高強度でプレー継続できるのか?90分は難しくても、多少短い時間であればプレーは可能か?

といった事をまず判断します。その判断は傷害の種類によっても変わってきますし、再発や別部位の新たな受傷リスクについて考慮する必要もあります。

その上で、間違いなく無理だと判断できる状況意外であれば、まずは選手と話をします。

「プレーは出来ても、90分は保たない(良いプレーができるかわからない)と思うけどどう?」
「プレーできたとしても、再発や別部位の受傷リスクが高いけどどう?」
「今無理をして悪化したら、今休むよりも復帰までかなりの時間がかかる可能性があるけどどうする?」

など、まずは選手自身にリスクを説明した上で、選手自身の意思を確認します。
ここまで説明しても、リスクはあるがプレーすることを選手が望む場合、まず選手へ確認することは

この内容をコーチと共有しても良いか?です。

あれ、さっき選手からは伝えないでほしいと言われているのに?と思うかもしれませんが、実際にこの様な場面でその選手の言う通りに痛みがある事を隠したとしても、チームや選手自身にプラスになることは何も無いからです。

隠したとして、万が一問題なくプレーできたとしてもそれは「ただの偶然」でしかありません。今回のケースにおいては、今後同じ選択をした場合に悪い結果になる可能性も大いに含んでいますし、そのような偶然を頼りにする様な判断をするトレーナーはそもそも現場にいる必要はありません。

話が少し逸れましたが、以上のような過程を踏んでしっかり説明をして、選手との信頼関係が築けていれば、コーチへ伝えて良いかについてダメと答える選手はほとんどいないと思います。

その承諾が得られた上で初めてコーチと共有をすることになります。

ここでコーチと話すことは、先ほど選手と話した内容とほぼ同じで、
・悪化、他の傷害受傷リスクについて
・通常のパフォーマンスが担保できる時間について
・本人の意思
などについて共有し、あとはコーチ陣がその選手と直接コミュニケーションをとったりしながら、プレーをさせるかを決定していく作業になっていきます。


通常のパフォーマンスが担保できる時間については、傷害部位やその程度によって判断が異なるので、ここでは説明を割愛させていただきます。(そもそもこれがいちばん正解のない難しい問題なのですが・・・苦笑)

②と③ について

②選手が直接コーチに聞きづらい(伝えにくい)事を聞く(伝える)
③コーチや選手が相手に伝えた内容の意図について十分伝わっていない場合に補足をする

この2つはほぼ同じで、トレーナーの仕事の成果としては見えづらい部分だけれど、とーーっても大事な仕事です。

お互いの言っている事を、そのままダイレクトに伝えるのでは意味がありません。
伝えた事によって大きな問題に発展してしまうケースもあるからです。

双方が、どのような意図を持っているか?
その意図をどんな言葉で伝えればうまく理解してもらえるのか?

を考えながら、時には相談しながら必要と思われる事のみ伝えます。

ここで間違ってはいけないことが、何でもかんでも間に入ることはしなくても良いってことです。

できる限り最初は見守ることが大事

基本的に問題が起こったときなどは、自身で悩み、考え、行動に移す を繰り返すことでより成長できると思っているので、余計なお世話はしないようにするスタンスが大事だと思っています。

相当信頼関係が出来上がっていたとしても、その「信頼関係」が「依存関係」になってはいけませんから。

以上、ざっくりではありますが、先日学生の方々から質問をされた際に答えた内容を記事として書き留めておく意味でまとめてみました。
質問を受ける機会をいただくと、答えていく中で自分の考えがまとまったり、新たな考えが浮かんだりするので、とってもありがたいです。

では、よいクリスマスをお過ごしください🎄

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