中田敦彦のYouTube大学とトンデモ本

新井紀子の『AI vs.教科書ふが読めない子どもたち』が中田敦彦のYouTube大学で紹介されていた。

オリラジが好きなのでよく見ているけど、以前に彼は【AI・人工知能①】〜AIを知れば未来が見えてくる!〜という動画も上げていて、ニューラルネットワークのドロップアウトについて解説するなど、技術的なことにも少し踏み込んだりしていて内容は割といいものだった。

今回はその真逆の新井紀子の本を取り上げているので、中田さんの YouTube大学は本の中身云々よりも、書いてあることをそのまま読み上げる番組なんだといまさら気が付いた。

1日で準備してそのまま撮影・編集までやっているようなので、そのクオリティなのは仕方がないと思う。

大学の先生が何かを教える時には、一つの文献だけに依存して何かを語るということはない。

数学や科学のような分野でも丁寧に異なる文献同士を突き合わせて、 授業では間違いがないように気を付けている。

また 中田敦彦のYouTube大学は、中田さんが自分の好きな本を紹介する番組だと勝手に思っていたけど、いつのまに監修や協力が付くようになっていて、頼まれた本の宣伝をする番組になっていたようなのは残念だった。

宣伝ならば宣伝と動画の最初で言ってほしい。

100日後に死ぬワニの後味の悪さが最近だといい例だけど、広告として見るのと純粋なコンテンツとして見るのとでは、受け取り側としては姿勢が変わる。

トンデモ本が広がる世界

新井紀子の『AI vs.教科書が読めない子どもたち』 は世紀末に流行ったノストラダムスの大予言のようなトンデモ本なのだけど、あいかわらず2020年の3月現在でも著者の新井紀子はこの本を奨めている

ノストラダムスの大予言も100万部以上売れたようで、トンデモ言説が広がるのはもはやどうしようもないと個人的にはあきらめている。

悪い言い方をすれば見て見ぬふりをすることにした。

正直自分としては、よく知っている分野だけにかなり心苦しいけど、それに対抗する時間的・精神的なコストが大きすぎるからだ。

そもそも新井紀子教授や中田敦彦さんはお金と生活がかかっているが、こっちはただのボランティアである。

そしてこのトンデモが世の中に広まった最悪のケースを考えても、せいぜい実害は本の内容を真に受けた人が新井紀子の読解力テストを受けに行って受験料と交通費を失うくらいである。

AIに関しても人々がどう信じようが、日進月歩どころか秒進分歩で技術は進化している 。

ノストラダムスの大予言を信じて高校留年した三四郎の小宮さんの話はネタだとしても面白いけれど、 こちらも大きな実害はなかったと思う。

気の毒なのは医療関係である。

こちらは本当に生死にかかわる問題なのに、トンデモ本に悩まされている。

「がんが消えた!?」トンデモ健康本はなぜ出版され続けるのかー医師の視点

なぜ「野菜を食べると健康になる」という本は売れないが「野菜は食べるな」という本はベストセラーになりうるのか?

生死にかかわる分野でこんな状態なのだから、新井紀子の問題なんかはコストをかけて対処できるわけがないという現実に気が付いた。

正直者が馬鹿を見る残念な世界です。

一つだけ科学や技術について詳しくない方に知ってほしいことは、先ほどのリンクの医者の方も言っていますが、 医師や医学博士、大学教授が書いている本だからといって正しい情報だとは限らないということです。

自分の学歴がきちんと書けない新井紀子

以前に新井紀子教授の学歴詐称を指摘したことがありました。

たまたま実家に新井紀子教授の本があったので写真を撮ったのですが、学歴詐称は少なくとも2005年から2018年まで10年以上にわたり行われていたようです。

画像1

イリノイ大学数学家博士課程修了と書いてあるが、以前大学に問い合わせたところ、新井紀子教授は修士号しか取得しておらず博士課程を修了していないことがわかりました。

画像2

誰もが完ぺきではないので間違えることは仕方がないですが、学歴は自分のことなので間違えることはありません。

それを歪めるというのはわざとやっているということです。

『AI vs.教科書が読めない子どもたち』 の内容を検証するのは正直AIを専門にやっている人でも難しいです。

ただ少なくとも、そういうわからない人は欺けばいいという姿勢の人が語ることにどんな価値を見出すべきなのかは考えるべきことだと思います。

中田敦彦のYouTube大学について思うこと

以前にも中田敦彦のYouTube大学は歴史関係で炎上しているようです。

個人的には、科学や技術・歴史など、ある程度専門家の間で合意できるファクトのある分野に関してはあまり触らないほうがいいと思います。

学術論文はその内容がチェックされたうえで出版されます(そしてそれでもSTAP細胞事件のようなことが起こる)が、一般向けの本はそうではないのでその中身に対する信頼性はありません。

もちろん中田さんは慈善事業としてやっているわけではないから、好きにやればいいというのはありますが、その影響力とプレゼン能力の素晴らしさは諸刃の剣だと思います。

一流の芸人の喋りは本当にすごいです。

営業職に就かせたら無敵だと思います。

せっかく最高のプレゼン能力があって、いろんなことに興味がある上に賢いんだから、毎日投稿というようなインスタントなところにフォーカスするよりは、1週間くらいかけて一つのテーマを掘り下げた方が公益性があるのではないかと思います。

書評: 新井紀子 『AI vs.教科書が読めない子どもたち』

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?