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私からすれば、センスとはその人の「根拠」に根付いたものだから、自身の何かしらの動かし難い根拠=テーマを周到して、それをモノという表現に昇華すればいいだけのことである

この間、花見を兼ねて神社へお詣りに行ってきた。スナップフォトを撮り終えて、改めて自身の感受性の変化に気付かされた。

Y字のガードレール

今回のスナップフォトの中では、このY字のガードレールの写真が良かったと思われるが、この写真には元ネタらしきものがある。

銀メッキのメカトロウィーゴ
パチ組からのトップコートつや消し

花見へ出掛ける少し前、ベランダで組み立て終えたプラモデル達にトップコートつや消しをスプレー塗布して、乾燥させる為にスノコの上にプラモデル達を置いて、タッパーで蓋をした。この時のメカトロウィーゴのシルバーの光沢感が、どうもY字のガードレールに似ている。
多分、間違いなく、メカトロウィーゴの光沢感や質感の影響を受けて、私は撮影をしている。さらに、プラモデル作りを通して、モノの見え方=撮り方が変化したのを感じている。

「歳を取ると感受性が衰える」とよく言われているが、あれは嘘だ。現に私は写真の取り組みを意図的に変えたし、プラモデルの影響を受けて変わった。
意図的に変えたところは、写真のトーンを落として、色褪せた感じにした。これは単純に、カメラアプリのフィルターを変えたのだが、去年まで私はビビッドな色彩、高コントラストの写真加工をしていた。
そこからわざわざウケが悪いであろう写真加工に変えたのは、私にとってはトーンを下げた方が「自然」に感じられたまでのことで、そろそろデジタルではないな、と。

空母ボーグのプラモデル

私はアクリジョンの筆塗り専用塗料しか使っていない。つや消しでパステル調。塗って乾燥させると積み木のような質感になる。よくよく考えてみると、光沢ツヤツヤに比べて鮮やかな色彩ではない。私がアクリジョンを選んだのは扱いやすいだろうと予想したからだが(実際に私の予想通りに扱いやすかった)、筆塗り専用を選んだのは、アクリジョンベースの全色が模型屋に置いてなくて、店頭で塗料をどうしようか悩んで、何となく筆塗り専用にした。アクリジョン筆塗り専用全5色(当時)はそのお店に置いてあって、5色買ったら全色揃うから追加で買うことはない、従って、これ以上悩まなくて済むな、と。
クレオスがアクリジョン筆塗り専用を5色しか出していないのは(現時点で全9色に増えた)、とりあえずこれだけあれば事足りるだろう、とメーカー側が想定したからだろう。だったら、ユーザーの私は5色だけ買えばいいのであって、アクリジョンの筆塗り専用シリーズが追加されたら、その時々で買うかどうか悩めばいいや、と。

アクリジョン筆塗り専用塗料を選んだのは、たまたまからの閃きだったが、私の心の中にあるレトロ&チープにピッタリチョイスだった。私の中にあるレトロ&チープというテーマ性。

私は「大人」のプラモデルを作りたいとあまり思わない。ポケプラも作る。タミヤの動物セットも作る。スレッタ・マーキュリーも作りたい(まだ作っていない)。それらは、ゴージャスよりもチープな作りにしたい。子供用の玩具のような、積み木のような、ちょっとしたモノの方がいい。
スケールモデルを実際のモデルに出来るだけ寄せて作りたいプラモデラー達が居て、そちらの方が主流なのかも知れない。それは、例えば実際に存在している飛行機のプラモデルを作る時に、根拠となるリアリティを実機に求めているのであって、私におけるリアリティとは異なる。

写真とは言うまでもなくリアリティであり、リアリティとは端的に言えば、存在する根拠である。そこから存在理由に昇華させるのであろうが、存在の本質から遊離している人間には「根拠」が必要になる。その根拠は人それぞれであっていいし、今の時代、それぞれであるべきであろう。

とあるブログで、センスを良くするにはどうすればいいのか、書かれているのを読んだことがあった。
私からすれば、センスとはその人の「根拠」に根付いたものだから、自身の何かしらの動かし難い根拠=テーマを周到して、それをモノという表現に昇華すればいいだけのことである。説得力や存在感はそんなところからしか生まれないだろう。

人様から良いセンスだと言われたいのならば、私は写真の撮り方や加工方法を変えるべきではなかった。去年までは、まだ私はそれでも写真が上手だった。今の私は撮り方が下手っぴで、加工も冴えない。言い換えれば、今の私は多くの人様に分かりにくい写真を撮っている自覚がある。
それでいいじゃない、と思うのは、私にとって私の撮る写真は、自身が作り出す環境音楽やプラモデルに準じているからで、すでに私にとって写真は主役ではなく、脇役でいいからである。

今年の私が撮った写真を見て感じるのは、秋。私の人生は春から夏を経て、秋になったのだろう。その後、冬になって枯れていくのかも知れない。あるいは、黄昏時。私はそういう年齢になった。

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