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再会。

その再会は決して望んだものではなかった。会わずにすむならそうしたいと心の底から思っていた。

だって、彼女は稼いでいて、私は稼いでいないから。より詳しく言うと、経済的自立をしているか、していないか。

会えばきっと劣等感に火がつくと思っていた。何か傷つく言葉を投げかけられるとも思っていた。

こちらのエッセイにも登場する妹のことだ。私のことが好ましいはずもない。年が近いからか何やかやと比べられてきたのだ。例えば成績とか、そういったものを。

成績で妹が私に勝てたことなんて、あっただろうか。小学校の通知表の「友だちと仲良くできる」の項目に限って言えば、妹には◎が、私には△がつけられていた気がするけど、そんなので模試の偏差値が上がるわけもない。

私がいなければ妹は成績を比較される相手がいなかったか、もしくはそこそこの成績を取っていた他のきょうだいですんだ。つまり私がいなければ、妹はもっと楽に子ども時代を過ごせたのだ。勿論、元凶は私ではなく比較をする親だけど、妹が私の不在を願ったことがないわけがない。

その証拠に、「口紅が合っていない」の嫌味だ。

その妹と、私は約3年ぶりに会った。会いに行ったとか会いに来てくれたとかではない。結果として会った。それだけなのである。

今も仕事疲れのたまった妹が寝る部屋の隣でこれを書いている。

黒髪から茶髪へと変わった妹は黒い服に身を包み(一番楽なのだそうだ)、私を見て、「久しぶり」と言った。

同じように返して、そしてしばらく見つめあった。

「あれ、髪染めた? 前より暗いね」

「染めてないけど……また濃くなったのかな」

アルビノの私の髪は未だに濃くなり続けているようだ。

妹の前に立っても思ったより劣等感は燃え上がらなかった。何故かは知らないけれど。

そしてまた、沈黙が訪れた。外部からの助けなしには私達は姉妹の会話すらもできないのだった。積み上げてきたものがないから。

でもそれはきょうだいを比較し続けた親のせいであって、私のせいじゃない。妹のせいでもない。

またLINEも行き交わない日々がやってくるだろう。そして正月まではきっと声も交わさない。

執筆のための資料代にさせていただきます。