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お好み焼き

お好み焼き屋でアルバイトをする僕は、いつもの常連客の悩みを聞いたりする中で関係性が近くなっていった。お好み焼き通して二人のきずなが近くなった。

 僕は大学の授業の合間を利用して、静岡のお好み焼き屋でアルバイトをしている。厨房ちゅぼうで調理を担当することが多く、忙しいけれど充実感のある毎日だった。ある日、店内に元気な笑い声が響いてきた。常連客のゆみだ。

「こんにちは!今日は何にしますか?」席に着いたゆみに僕は尋ねた。
「あ、こんにちは!名物のお好み焼きをお願いします!」ゆみはそういって僕も笑顔で返事をした。

 ここの名物のお好み焼きは海鮮を贅沢に使った海鮮お好み焼きだ。その姿はまさに絶品の一言にふさわしく、海の恵みが華やかに彩られていた。

 イカやエビ、ホタテ、タコなど、海の幸が豪快に盛り込まれたお好み焼きの上には、彩り豊かな野菜が散りばめられ、鮮やかな色彩が鉄板の上に広がっている。その上からは、濃厚なソースとまろやかなマヨネーズがたっぷりとかけられ、青海苔やかつお節がトッピングされている。その見た目はまるで絵画のように美しく、食欲をそそるものであった。
 一口食べると、海の恵みが口いっぱいに広がり、プリプリとしたエビやイカの食感、ホタテやタコのうまみが鼻に抜ける。そしてこの心地よい風味が口の中に広がっていく。

 ゆみはほっぺを落としたかのように、幸せそうな顔をしていた。その姿を見た僕はうれしい気もちでいっぱいになった。

 ある日、ゆみがお店に来たとき、彼女は悩んでいるようだった。いつもの明るい笑顔とは違い、彼女の目には何かしらの心配がにじんでいるように見えた。

「こんにちは、ゆみ。少し浮かない顔をしてるね、どうしたの?」僕は心配そうに彼女に声をかけた。

 ゆみは微笑んで座り、深いため息をついた。「実は、大学での授業がなかなかうまくいかなくて…特に数学が苦手でさ。」

 僕は彼女の悩みを聞いて、少し安心した。授業の内容についていけないことは誰にでもあることだし、さらに彼女の悩みなら、解決できるかもしれないと思った。

「そうなんだ。大丈夫、僕数学得意だから、一緒に勉強しようよ!」僕は笑顔で提案した。

 ゆみは驚いた表情で僕を見つめ、そして嬉しそうに頷いた。「本当?ありがとう、助かるよ!」彼女の声には感謝の気持ちが溢れていた。

 その日から、僕とゆみは一緒に勉強することになった。図書館で数学の問題に取り組みながら、僕はゆみに基本的なことから応用的な部分までを丁寧に教えた。問題が解けるごとに表れるゆみの明るい笑顔が、僕の心を癒してくれた。

 これをきっかけに大学の数学の授業が少しずつ理解できるようになり、ゆみの笑顔も増えていった。僕は彼女の成長を見るたびに、嬉しくなった。

 こうして、僕とゆみはお好み焼き屋での出会いをきっかけに、学業の支え合いを通じてさらに絆を深めていくのだった。

 その日から、僕とゆみの会話が増えた。彼女はとても明るく、話しやすい性格だった。少しずつ、僕の中でゆみとの関係が変わっていった。

 忙しい厨房の合間にも、僕とゆみは会話を楽しんだ。彼女の明るい笑顔が、僕の心を和ませてくれた。そして、僕が作るお好み焼きの彼女の好みが徐々に分かってきた。

「やっぱり、ここのお好み焼きは最高だね!いつもありがとう」とゆみが笑顔で言い、僕も笑顔になった。

 彼女はお店に来るたびに、僕に様々な話題を振ってくれた。そして、僕も素直に彼女に自分のことを話すようになった。

ある日、ゆみが深刻そうにつぶやいた。

「どうしたの?何か悩み事でもあるの?」僕が心配そうに尋ねると、彼女は少し困ったような表情を見せた。

「実は、最近友達との関係が上手くいってなくて…」ゆみが言った。

「それは大変だね。話を聞くよ。少しは気が楽になるよ」と言うと、彼女は少しホッとした様子を見せた。その日から、僕とゆみの関係はさらに特別なものになった。彼女はいつも僕に相談し、そして僕も彼女に励ましの言葉を送るようになった。

ある日のこと。お店が閉まりかけた時間に、ゆみがひとりで店内にやってきた。「今日は少し遅くなっちゃったけど、お好み焼きが食べたくて…」ゆみが恥ずかしそうに笑った。

「大丈夫だよ、いつでも来てくれればいいから」僕が笑顔で言うと、彼女も嬉しそうに頷いた。二人きりの時間、ゆみとの会話が特別なものに感じられた。彼女の笑顔が、僕の心を温かく包んでくれた。

その後も、僕とゆみの関係は深まり続けた。お好み焼き屋での日々が、僕たちにとって特別な思い出となっていった。

お店を出るとき、ゆみが僕に向かって微笑む。

「ありがとう、今日は本当に楽しかった。また来るね」と彼女が言うと、僕も嬉しく微笑み返した。

「また来てくれるのを楽しみにしてるよ」と僕が言うと、ゆみも満足そうに笑顔を返した。

その日以来、僕とゆみの関係は変わらずに続いていく。お好み焼きの絆が、二人の心をつなぎ合わせていったのだった。


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