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旅路1

独り、電車に揺られている。
あと30分もすれば京都に着くらしい。
終着まではまだまだ時間がかかりそうだ。
右を向けば山、左を向けばすぐ海が見える路線。
雪深かった風景が次第に溶けるように熱を帯びて、数時間前までいた場所が本当に同じ国なのかと錯覚する。
吹雪で遅延した影響で目的地への到着時間が4時間も伸びてしまった。現地で過ごせたであろうこの4時間の後悔はきっと復路の電車内で重くのしかかるのだろう。今はそれを忘れるように耳の中に直接爆音のノイズを流している。頭の片隅で充電が切れないことを祈りながら。
あと20分。
欲張って持ってきてしまった大量の荷物をチラ見するたびに「またこれを持って歩かないといけないのか...」と絶望している。あ、もう滋賀。
家族に黙って一人旅をするのはやっぱり楽しい。
このご時世だからこそ一人旅はしやすい。
マイペースな自分にとっては誰かと一緒に行動することは知らないうちにストレスになっていることが多いし、自分のマイペースさで誰かに迷惑をかける心配もない。やはり独りは楽だ。勿論現地に着いてからの独りでなくなる時間も楽しみではあるものの、永遠に複数人か、独りかを問われたら迷わず後者を選ぶ。
あと10分。
途端に雪深くなった。こっち側も意外と雪って降ってるんだね。さっきまで見えていた左側の風景はすっかりホワイトアウトで見えなくなっている。右を見ると全く同じ形をした一軒家が幾つも並んでいて、少し気持ち悪い。
腹が鳴った。4時起床でここまで来ているのだから仕方がないか、と思う。お腹が空きすぎたら気持ち悪くなるんですよね。なりませんか?なりませんか。
もうそろそろイヤホンを外さないと...
毎回そうだが、イヤホンの電源を切った瞬間にいきなり現実に引き戻される感じが気分を害する。
案の定今回もそう。聞こえてくるのは車輪の悲鳴だけ。
あと5分だけど京都ってこんなに雪降ってるの??
もっと少ないと思っていたので軽くカルチャーショックを受けている。
もう降車準備をしなくては。
次は海を渡る時に筆をとるつもり。
充電があれば。

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