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『ペット・セマタリー(上下)』を読みました。

『ペット・セマタリー(上下)』


著者:スティーブン・キング
翻訳:深町眞理子


内容紹介
メインの小さな町に医師のルイスは、妻のレーチェルと娘のエリー、息子のゲージ、そしてネコのチャーチと引っ越してきた
隣家のジャド、ノーマ夫妻とも良い関係を持て、順調な新生活。
しかし妻が子供二人を連れて里帰りをし、ルイス一人がお留守番をしているとき、飼いネコのチャーチが家の前の道路を走るトラックにひき殺されてしまう。
娘にどう説明したらいいのかと途方にくれるルイスを見て、ジャドは近くにあるペットの共同墓地(ペットセメタリー)の奥にある謎の場所へと案内していく。
そこはインディアンの墓地であり、呪われた土地だったのだった。



■■ネタバレもあり■■


さて、キング祭2冊。
色々と買っているけど、どうも昔見た懐かしの映画の原作を手に取ってしまう俺の愚考である。

昔、子供の頃、テレビでやっていて何度も見たし、去年Blu-ray化されたので久しぶりに観たしもしたし、記憶にも新しい。

前回の『ミザリー』ヨロシク、小説と映画の共通点、違う点、なんかを毎回やろうと思う。

まあ、でも思っただけでやりませんけどね。(そもそも、この後に読もうと思っている『クージョ』なんか映画DVDは高額だし、廉価版も出ていないので手が出ない。中古DVDに数千円も出すのが10万円の正しい使い道かもしれませんがね。えぇ。)

よく、ってほどでないにしろ、昔はテレビで放映されていたので内容もなんとなく憶えている人が多いと思う。

簡単な話、
ペットをインディアン墓地に埋めたら生き返ってきたけど前と違ってさあ大変。

もっと言えば、
ペットが生き返ったんなら人間も生き返ってくんじゃね?
って話だ。

亡くなった家族を生き返らせれる方法を知っていた、あなたはどうします?
なんてのがテーマだろう。

そもそも、妻のレーチェルが、子供に死とは何かを教えたくない。だからできるだけ遠ざけたい。
みたいな考え(そういたった理由はちゃんとある)が全ての元凶で、ネコを大変かわいがっていたエリーがかわいそうだといってその秘密を教えたジャドも戦犯だ。

映画のイメージで読み進めていたので、生き返らせたモノが凶暴になるイメージを勝手に思い抱いていた。

それが原作ではかなり違った。

動物はまだしも、ゾンビとしてよみがえった者は、人を口汚く罵るのだ。

「お前の嫁は男と寝まっくてるぜ」とか、
「お前のかわいがってる孫はお前が死んで保険金が入ってくるのを願ってるからだけだ」とか、
「お前は娼婦買いを今もやってるのか?」とか。

それはまさしく悪魔が宿ってよみがえったに違いない。

そんなことを知っていて、教えたジャドはまさしくA級戦犯だ。

小説のテクニックのひとつに、作者の視点、まさしく神の視点として、たとえば、
「このときはまだ、そのことに気づいていなかった」とか、
「これが彼の人生で一番幸せな一日になるとは」とか、

もっと露骨に、
「このことを後に振り返り」

などと、未来の視点からの文章を入れてくるというやり方がある。

個人的には好きではない。

キングはこれが好きなのか、日本と海外の違いなのか、頻繁ではないにしても、入ってくる。

本書で一番キツかったのがこれで、下巻にはいるといきなり息子ゲージが亡くなっていて、それはいいとしても、トラックに轢かれて亡くなったことと、その葬儀で仲の悪い義父と殴り合いのケンカをした、ということをさらっと触れ、そのあと延々と何が起きるのかわかっていることを読まされたことだ。

「話の内容をわかっていても、おもしろいものはおもしろい」
なんて気の毒な主張がある。

これはそのたぐいの話でもない。

おもしろい話でもなければ、奇想天外なオチや真相でもない。
普通にこれから起きることで、読者を未来人にしてしておいて、つらつらとその場面を展開させていくのは楽しくともなんともない。

あともう一つ言っておくと、リメイクされた2019年版『ペット・セメタリー』これはこれで観る価値あると思うので、オススメしてきます。

特に旧版を観ていない人は、そっちを観てからか、原作を読んでから観た方が、というよりそうしないとダメですね。














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