脱落者

『脱落者 』を読みました。


脱落者


著者: ジム・トンプスン
翻訳:田村義進


内容紹介
テキサスの西、ビッグ・サンド(大きな砂地)の町原油採掘権をめぐる陰謀と死の連鎖、未亡人と保安官補のもうひとつの顔――


ジム・トンプスン。
この作家についてさほど知っているわけではない。
調べたところによると、

評論家のジェフリー・オブライエンにより「安物雑貨店(ダイムストア)のドストエフスキー」と評された。
などとできた。

いわゆる『暗黒小説』という部類の作品を残したことで有名な作家で、ハードボイルドであり、主人公が探偵などと違い、犯罪者であることが多い。
日本で言えば、大藪春彦や馳星周などがそれに当たる。

なにげなく手に取った『ポップ1280』がおもしろすぎたので2冊目。
本作の主人公トム・ロードは保安官補だ。

特に悪徳警官といわけでもなければ、評判もいい。

そんな男が町に来た、採掘会社の現場監督にいきなり因縁をつけ、ぶん殴ってのしてしまう。

急展開な暴力描写。

これこそこジム・トンプスン作品の特徴であり、魅了といったところだろう。(まあ、2冊しか読んでないから言い切るのもおかしな話なんですけどね)

トムには裏の顔がある。

親から受け継いだ土地。
そこを油田会社が借り受け、石油採掘するという契約を交わす。

採掘の費用は会社持ち、石油が出ればそこからパーセンテージで収入が入る。

しかしいっこうに掘られることがなく、当てにしていた金も入ってこない。
その現場監督はロードと契約を交わした男で、『あの話はどうなってるんだ』といわんばかりに殴られたのだ。

それからさらに揉め、殺害まで手を伸ばしてしまう。

読んでいて思ったのは、

『この主人公はサイコパスなんじゃないだろうか?』

ということだ。

世間一般認識のサイコパス、というのを説明しろと言われれば難しい。

それでもつたない知識から思うサイコパスに当てはまっている気がした。

口が達者で魅力的なところもそうだし、なにより、良心がない、と言うより悪心もなく、あるのは個人。

自分勝手と言ってしまえばそれで終わってしまう。

自分のルールがあってそれにしたがって生き、そこに良心も悪心もなんら影響していない。

そもそもそんなものは持ち合わせていないのだ。

それがトム・ロード。
そんな感じがしました。


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