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『堕ちた英雄 「独裁者」ムガベの37年』を読みました。


堕ちた英雄 「独裁者」ムガベの37年


著者:石原孝


内容紹介
人種差別闘争の闘士から、腐敗した権力者に、そして最後は41歳差の妻の暴走をとめられず体制転覆、異国の地でひっそりと息を引き取った。
世界史上、独裁政権は枚挙に暇がないが、これほど絵に描いたような軌跡を辿った「独裁者」は類例を見ないだろう。
超長期政権、容赦ない粛清、ハイパーインフレ。名だたる独裁者のなかでもジンバブエの元大統領、ムガベの特異性は際立つ。
英雄はなぜ、独裁者となったのか。盤石の体制はなぜ、唐突な終焉を迎えたのか。
徹底取材でその世界史的意味を探った、最強の独裁者を追うノンフィクション。


独裁者ムガベ。
名前ぐらい聞いたことあるだろうか。

クーデターで辞任した。
なんかそんなニュースは聞いたな。

ジンバブエ。
それは知っている。でも、名前だけでアフリカのどこにある国かは知らない。

じゃあ、ネルソン・マンデラは?
それは知っている。

南アフリカでアパルトヘイトを撤廃した英雄でしょ?

でも、アフリカではマンデラよりムガベのほうが人気がある。
なんだそれは、読んで確かめなくては。

という感じで購入した。

ムガベは強行派で白人から独立を勝ち取り、言いたいことを言う。
マンデラは穏健派で、言ってみれば白人におもねっている。

白人からの影響力が否が応でもある日本では、ムガベは悪い印象の強い独裁者で、マンデラは英雄というイメージがある。

外から見るのと、じっさいに現地で見るのとでは、違って見えるモノだ。

ただ、ことはそれほど単純ではないようだ。

ムガベ自身、元々は穏健派のグループに属していた。
しかしこれでは自由は勝ち取れないと強行派に移り自由を勝ち取った。
独立したとき、穏健派も、さらに言えば白人達とも共に手に手をとってよりよい国作りをしていかなければならない、的なことを言っていたのだ。

それが嘘のように、野党である穏健派の粛正を行い、殺害した。

いや、しまくった。


裕福な白人から土地を取り上げるのも、現地の人からすれば胸のすく思いであっただろうが、土地はあっても農作業の知識や技術がなければ意味が無い。

更に、無意味な戦争。
41歳も離れた妻の浪費で経済はドン底まで落ち、失業率は90%越え、10兆紙幣を発行する超ハイパーインフレまで引き起こした。

37年におよぶ支配から解放され、喜び合ったのにも関わらず、ムガベが帰って来て欲しいと思う国民も多くいた。

本書を読んで、ムガベという人物がどういう人物であったのか、というのがどうも捕らえずらい。

例えばここに四角がひとつあるとする。
それはただの四角だけれど、横から見てみれば、四角柱だったり、四角錐だったりするかもしれない。

人も物も出来事も、多角的にみなければその本質は見抜くことは出来ない。

しかし、多角的に見れば見るほど、ムガベという人物の姿がわからなくなるのだ。

答えではなく、疑問を読者に残すのが良質な本。
なんて言葉を以前どこかで聞いたことがある。

これは、そういう意味では良質な本だと思う。





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