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【読みました】『IQ』

『IQ』
著:ジョー・イデ

内容紹介
ロサンゼルスに住む黒人青年アイゼイアは‶IQ〟と呼ばれる探偵だ。ある事情から大金が必要になった彼は腐れ縁の元ギャング、ドッドソンからの口利きで大物ラッパーから仕事を請け負うことに。だがそれは「謎の巨犬を使う殺し屋を探し出せ」という異様なものだった! 奇妙な事件の謎を全力で追うIQ。そんな彼が探偵として生きる契機となった凄絶な過去とは――。新たなる‶シャーロック・ホームズ〟の誕生と活躍を描く、新人賞三冠受賞作!


群像劇、という表現技法がある。
一人称であろうと二人称であろうと、本来主人公は一人だ。
それを複数人で、交互に話を進めていくやり方のことだ。

群像劇の小説はなかな難しいと思う。
例えばAとBとCの三人がおり、Aの話が進み、続いてBパート、そしてCパートが終わるとまたA。
そこまではいい。
読んでいる方として困るのは、Aの話が盛り上がってきたところでBパートになってしまうコトだ。

めちゃめちゃいいところで続きますというのはクリフハンガー(ぶら下がり)というやり方だ。

さっさとB、Cパートを読み終えてAに戻りたい、なんて思ってたら、今度はBやCパートが盛り上がったりするのだ。

そうなったら作者が仕掛けた罠に完全にはまってしまっているとコトだ。

しかし上手く盛り上げていかないと、読む方としては辛いだけになってしまう、だから難しい。

『IQ』は群像劇とは呼べないかも知れない。
なぜならあくまでも主人公はアイゼイア・クィンターベイ、通称IQ一人だからだ。

探偵であるアイゼイア(探偵というか凄腕のなんでも屋みたい。幼稚な表現だけど、ホントそんな感じ)が、機微に気づいて事件を未然に防ぐところから話が始まる。

導入部分としては文句ひとつ無い。

そこで入ってくるのが内容説明でもある、『そんな彼が探偵として生きる契機となった凄絶な過去とは』部分、つまり過去の話になるのだ。

ラッパーからの依頼を解決しようとする話と、彼が今に至る経緯、過去の話が交互に進む。

『過去の話は2作目とかにしとけばええんちゃうの?』

と思ったりしたけれど、この部分が重要だったりもする。

現在と過去、両方に登場する相棒ドットソン、この男がかなりいいキャラをしていた。
アイゼイアと言い合いになり、

「言葉に気をつけろ、おい。おれの肩に止まっている天使じゃあるまいし、肩にはもう先客がいるし、そいつがおれになにを囁いているかはお前のしたことじゃねぇ」

などといった上手い言い回しをするので魅力的だ。

主人公が黒人。相棒も黒人。依頼人のラッパーも黒人。ということで黒人社会のことが少しは知れた、かもしれない。




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