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海外企業経営者の僕が従業員に伝えた「ニューノーマル時代に身につけたい3つのこと」

みなさん、こんにちは。

これまで、12年ほど国内外で経営者やマネジメントのキャリアを積んできました。また、アメリカやカナダ、シンガポール、フィリピンで留学や仕事などで長期在住をしてきました。

自己資金で新たなビジネスを起業したり、既存のベンチャー企業を引き継いだり、グローバル企業の海外拠点を率いたり、様々な種類のマネジメントを経験させてもらってきました。

現在は事情があって日本で休養をさせてもらっているものの、あるグローバル企業のフィリピンオフィス(首都マニラ)をマネジメントに従事しています。

はじめに

ご存知の通り、今は世界中が先行き不透明な状態になっています。

そんな中、今日は僕が先日マニラにいる従業員に対して話したことをシェアさせてもらえたらと思います。(写真は僕と従業員達、昨年のクリスマスパーティーより)

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僕が彼らに対して話したことは、「今後、今までとは全く異なる時代『ニューノーマル』を迎えるにあたって、身につけたい3つのこと」でした。

フィリピン現地は当時ロックダウンの真っ最中で、基本的には外出禁止(生活用品や食料など、ベーシックニーズの調達は除く)でした。交通機関も経済も全く動かず、社員は皆口を揃えて「これからいったいどうなっていくんだろう」と不安感に苛まれていました。

その不安感を解消するには、何らかの方向性を示してあげなければならない。

僕は常々、従業員には「今いる組織だけでなく、数年後、数十年後も、社会で通用する人になってもらいたい」と思っています。なので、「この規制だらけの状態でどうやって売上を伸ばすか」という足元のことを考えるより、「ニューノーマルで彼らに身に着けて欲しいこと」を伝えたほうが、彼らにとってタメになる、と考えました。

そして、「ニューノーマルで彼らに身に着けて欲しいこと」は、何よりも自分へのメッセージでもありました。ロックダウン突入は、いわば暗闇のトンネルの中に強制的に入れ込まれたようなもの。その中で「どの方面に行けば良いか分からない」状態で彷徨うのが一番危険。「まずは今の現在位置を把握し、自分たちなりに仮説を立て、どの方向に進むかを決断する」ことで、従業員に安心感を与え、結果的に余計なコストを小さくすることにもつながります。

「正しい答え」は何年考えても見つからない。まずは「仮説」を立て、道筋を可視化していくことが当時は重要でした。

ニューノーマルとは?

では、そもそもニューノーマルとは何なのか?

Wikipedia英語版では以下のように定義されています。

A new normal is a state to which an economy, society, etc. settles following a crisis, when this differs from the situation that prevailed prior to the start of the crisis. (ニューノーマルとは、有事によって経済や社会の情勢が変化し、その変化後の状態を指す。)

元々この言葉は2007-2008年に発生したリーマン・ショック後の金融業界の変異後の状態を指す時に主に英語圏で使用されました。今回のCOVID-19発生時には、より大きな社会や経済の情勢変化が見込まれることから、特に英語圏で真っ先にニューノーマルという言葉がメディアで使用されるようになり、日本でも徐々に一般的に使用されつつあります。

では、今回のニューノーマル後に予測される変化とは何でしょうか?

マーケターや生活者研究者向けの情報発信サイト「Intage Gallery」によると、以下9つの変化が見込まれるとのことです。

<中期的な変化>

Stay Home Comfortably(より快適なおうち時間)
Less Frequency & More Stocks(回数を減らして・ストックする買物)
Support Each Other(感謝・支援活動)

<長期的な変化>

Hygiene vs Ecology(予防・衛生 vs エコ・環境)
Shopping Behavior Shift(買物行動の変化)
Daily Life Update(日常生活の更新)
Work Style Reform(働き方の見直し)
Strong Influence of SNS(SNSの影響力拡大)
Monitoring Government & Organization(政府と企業への監視の目)

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これらの変化項目はあくまで予測に過ぎないものの、コロナ発生後に起きたことの延長として考えると、大きくハズレることは無いかと思います。

この変化項目をもとに、3つのテーマが重要であると考えました。

①クリエイティビティ

②ロジカルシンキング

③心理学

ニューノーマル時代に身に着けたいこと①:クリエイティビティ(創造力)

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人と人が接触を避ける時代において、何をすれば良いのか。時代が大きく変わる今こそ、クリエイティビティ(創造力)が極めて重要です。

2019年頃までとはまるで異なる生活パターンになる「ニューノーマル」においては、働き方も買い物の仕方も一切変わります。Twitterなどの企業は既に今後長期に渡り在宅勤務を認めることを発表していますし、日本企業もどんどん在宅勤務やテレワークを推奨していくでしょう。

また、「Zoom飲み会」も徐々に定着してきていますし、日本では「オンラインキャバクラ」なるものも出現してきています。スポーツ業界ではプロ野球やJリーグが1試合5000人までの観客数制限を設けているものの、フル集客が出来る見通しは一切立っていません。来週8/15にはプロ野球の横浜DeNAベイスターズが「オンラインハマスタ」と銘打って、バーチャルスタジアムの企画を実施予定するなど、エンターテインメントの形態もどんどん変化を見せてきています。

変化には抗うのではなく、柔軟に対応する。特に今回の変化はとてつもなく大きいものです。

柔軟に対応するためには、どうしてもクリエイティビティが求められます。

僕が従事している不動産仲介業は、購入や賃貸検討者が現地に出向き物件やその周辺を内覧する、というのが重要ステップなのですが、ニューノーマルにおいてはなかなかそれを率先して行うことができない。

そこで導入したのが、現地バーチャル内覧ソフトやドローン撮影や中継でした。バーチャル内覧ソフトはMatterportという部屋の隅々まで見ることができるサービスがあり、ドローンは多少制限があるものの都市部以外においては十分可能でした。ドローンで撮影した動画をいち早く編集し顧客候補に見せる。ロックダウン中にも関わらず、成約できた案件も多くありました。

クリエイティビティを発揮する際に気をつけたいのが「ルールや常識や前例に縛られすぎない」ということ。当然法律や現地自治体が決めた条例に従うことは重要です。しかし、それらを重要視しすぎて行動に移せないのはNG。また、「前例が無いから」と言って諦めてしまう、というパターンもNG。ニューノーマルという新たな時代に入るわけですから、「常識は自分たちで新たに作る」くらいの気概も大切かと思います。

これまでは、そこまでクリエイティビティが求められなくとも、やっていけた時代ではあったと思います。経済発展によって作られたマニュアルやルールに沿っていけば、創造しなくても生きていけた。しかし、世の中の変化が大きくなり、テクノロジーがどんどん導入されてコスト削減に各企業が動いていく以上、自分の仕事や役割が奪われないためにも、創造力醸成を否定せずに自分の頭で考えて行動していくことは極めて重要です。

ニューノーマル時代に身に着けたいこと②:ロジカルシンキング

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見方によっては、「クリエイティビティ」とやや相反するのが、この「ロジカルシンキング(論理的思考)」です。

今は既に情報過多の時代ですが、感染症リスクや感染症そのもの、政治動向、経済動向、海外動向など、今後は更に多くの情報に触れ、その情勢を分析し先読みしながら行動していくことが肝要です。

そうなった時に重要なのが「なぜこういう情報が流れているのだろう?」と考え抜くことです。

メディアから発信される情報は、あくまで「メディアが発信したい情報(または国によっては政府がメディアに発信させたい情報)」であり、必ずしもあなたに役立つとは限りません。

例えば、日本のメディアは新規感染者数のみをセンセーショナルに発表していますが、情報ひとつをとっても、それを鵜呑みにせず、「なぜ重症者や軽症者、無症状者など詳しい数値を発表しないのだろう?」と考えて仮説を立てることが大事です。

新規感染者数やグラフを見れば「うわー日本めっちゃ感染広がってるやん!」と思うでしょう。しかし、もし無症状者が増えていたら?もし重症率が減っていたら?もし死亡率が減っていたら?これらの数値は他国と比べてどうなの?そもそもPCR検査って、本当に正確なのか?違うウイルスに反応してたりしないか?など、多方面からの視点を持ち、自分なりに「感染者数は増えているが、必要以上に恐れる必要は無い、なぜなら〜〜」と論理的に説明ができるようになれば、情報の取捨選択や整理ができ、より効果的な行動に繋がっていきます。

また、「在宅ワークは我々にとって本当に効率性が良いのか?」とか「本当に夜の街は危ないのか?」など、普段から「疑問を持つクセ」を持っておき、論理的説明をするために必要な情報を入手することも重要です。

ニューノーマル時代に身に着けたいこと③:心理学

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先行き不透明な時代においては特に、「お金(経済)」や「健康」は大切なテーマですが、僕はそれ以上に「心(精神)」の部分が大切だと感じています。

これからは「自分が何を決め、どういう行動を取るか」が重要ですが、「何を決め」の部分の大半を占めるのは、心です。

変化が激しいと、心はどうしても揺れ動きます。今年に入ってから、あっと驚くビッグニュースの連続で、それを見ているだけで疲れる、という方も多いのではないでしょうか。

「コロナうつ」という言葉があるように、コロナ関連で大きなストレスを受けやすい状態で、正常な判断をするのが難しい状況です。

人間の心も、ストレスを溜め込めるキャパシティがあり、そのキャパシティを超えると精神疾患などになりやすい、と言われています。

そんな時、自分の心との向き合い方や自己診断の仕方、さらに心の整え方を教えてくれるのが、心理学です。

ここで言う心理学は、よりよい生き方に結びつけるため、人間の心理について学ぶことを指しています。

僕は心理学の専門ではないですが、心理系の本を読むのは好きです。自分自身心の病気を経験して否が応でも自分の心と向き合いざるを得なかったのですが、新たな学びを得てそれを実行することで自分の成長を実感できるのが魅力です。

本のおすすめはいくつかあるのですが、以下は特にオススメです。

この2つの本を読んで感じたことは、「今、この瞬間に集中すること」の大切さです。

変化の激しすぎる今後においては特に、このマインドセットは非常に大切だと感じています。

僕は普段1日に必ず1度は瞑想を行っているのですが、瞑想はまさに「今、この瞬間に集中すること」の最高の訓練です。

ゆっくりと呼吸をしながら、その呼吸をカウントすることで徐々に雑念を手放していき、「今、この瞬間」だけを味わっていく。

これを取り入れたことで、余計な心配や不安が減っているのを実感しています。

正しい判断や決断を下すために、大きな変化の波が渦巻く中でも、自分の人生をよりよいものにするために、心を学ぶ。これが心理学を学ぶことの醍醐味だと感じています。

あとは・・・

もう「鉄板中の鉄板」の超名著ですが・・・従業員全員に「必読」と伝え、ファシリテーターを読んでのメンタルトレーニングを数回行う研修も実施しました。この本に関しては単独で記事が書けるくらい様々なエピソードがあるので、後日改めて書きたいと思います。

従業員に見られた変化

以上3点を伝えた後、従業員から帰ってきたフィードバックや、彼らに起きた変化をご紹介します。

なかなかアプローチできなかった顧客にアプローチして、あと少しで成約、というところに進んでいる
チーム内のコミュニケーションが上手く取れるようになった
自分のキャリアプランが定まってきた
メディアの情報に流されず、自分自身で情報を整理して判断することが大事だと分かった
「自分で考える」ことをやってこなかったと痛感し、今日からその考えを改めようと決めた
コロナ前に成約が取れなかった営業社員が、ロックダウン中にも関わらず成約できた

一番伝えたかったこと

僕が一番伝えたかったことは、「どんな状況においても、自分がどうしたいかをハッキリさせ、その通りに行動する」という、至ってシンプルなことです。

残念ながら、日本でも、フィリピンでも、「自ら考えて行動する」というトレーニングが、教育の場で上手く行われていない気がしています。

僕は立場上、従業員や同僚(たまに上司的な立場の人からも)から、最低でも1日20-30件の相談を受けます。

相談を受けると大抵の場合僕が聞き返すのが、「で、あなたはどうしたいの?」です。

特にビジネスシーンにおいて、自分がどうしたいのかが分からないまま仕事を進めるのは、ナンセンス。厳しい言い方になりますが、僕はそれを「責任放棄」とほぼ同義だと考えています。要は「自分の言ったことに責任を取りたくないから、『自分がどうしたいか』を考えることを回避したい」のだと思いますが、方向性が曖昧だと、部下は勿論、同僚や取引先は困惑しっぱなしで、良い結果に繋がりにくくなるだけでなく、その人は成長機会を失い、最悪の状態になります。

繰り返しになりますが、新しい時代と言われる「ニューノーマル」では特に、この「方向性の決定づけ」が重要です。

これらをよりスピーディーに、効果的にやっていくために、クリエイティビティ、ロジカルシンキング、心理学の3つは、しっかりと学んで身につけて行くべきだと考えます

自分の人生なので、自分の意思で決め、責任を取り、ミスをしたら真摯に対応し、次に活かす。これをそれぞれの人たちがやっていけるようになれば、より魅力的な新時代「ニューノーマル」が形成されていくのではないか、と考えています。

そうなることを願って、僕自身もこれから更に学びや経験を深め、ニューノーマルの一員として世に貢献していきたい次第です。

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