映画『コンフィデンスマンJP 英雄編』
このシリーズを観る前には、騙されることをあらかじめ想定している。しかし映画が始まるとすぐに、虚構と事実を確認する暇もなく華やかなコンゲームに引きずり込まれていく。初めから全てを疑って観ることもできるが、それでは面白くない。こちらもわざわざ騙されに来ているのだ。
それにしても、なんて馬鹿馬鹿しいミステリーコメディ。街ひとつぶんの大掛かりなセットに大仰な芝居、勧善懲悪したのちの大団円では思い切り飲んではしゃぐ。そこには一つの定型があり、それを望んでスカッとしている自分もいる。伏線には生い立ちをめぐるメロドラマがしっかりと用意され、長澤まさみが涙を流すシーンでは思わずもらい泣いた。フィクション色の強い舞台は確かな役者陣の演技に支えられていて、唯一浮いている東出の棒演技も、ひょっとしたら設定上の必要性なのかと思えてくるほど。
騙し合う人たちに、こちらも気持ちいいほど何度も騙される。そもそもがフィクションである映画という器に、何重にも入れ子になったフィクションの万華鏡に目眩をおぼえながら、ジェットコースターのように疾走する楽しいエンタメ。もっと楽しみたくなる。中毒性がある。
エンディングで流れたヒゲダンの新曲『Anarchy』が、ちょっと地味渋でよかった。初期の『Stand By You』と似た感触。最近ではキャッチーなフックを散りばめ、コマーシャリズムに乗ってどんどんビッグで華やかなサウンドへと膨張していったのが、いったん原点回帰したような気がした。
今回のタイトルはアナーキー。無政府主義。自分たちのセルフプロデュース体制に戻ったのかも。誰しも、自分たちのやりたいようにやっている時が最も輝くね。
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