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【イタリアの安田侃 vol.7】 2017年、ヴェネツィアの宮殿で展覧会

1895 年から始まった世界最大の国際美術展、ヴェネツィア・ビエンナーレも新型コロナウイルスの影響を受け、2021年開催予定だった第59 回が今年2022年に延期されました。メインの展示は国別のパビリオンで行われますが、世界各国から集まる美術愛好家や関係者に向け、市内の美術館や各所で様々な企画が開かれます。

リアルト橋
ヴェネツィアを貫く大運河「カナル・グランデ」

2017 年に行われた第 57 回では、クリスティーズ主催の特別展として安田侃の「Between Sky and Water」展が、16世紀に建てられたパパドーポリ宮殿で開かれました。

アマン・ヴェニスの正面玄関は運河に面している
正面玄関から入ったロビーに《天秘》

リアルト橋からほど近く、カナル・グランデに面するこの建物は、所有する貴族が何度か変わりましたが、2013 年から七つ星ホテルのアマン・ヴェニスになっています。2014年にジョージ・クルーニーが結婚式を挙げたことでも有名です。現在の建物の持ち主であるジベルト伯爵、アリバベーネ伯爵夫人ファミリーが最上階に住み、宿泊客にも気さくに話しかけてくれるところも人気の一因のようです。

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運河を見下ろす窓際に《静江》

公園などの公共空間ではなく、プライベートな場所に安田侃彫刻が展示されるのは珍しいのですが、主催者のクリスティーズ・アメリカ副社長レンデル氏が狙いをこう語っています。「安田彫刻の魅力的な形は自然の素材が活かされ、鑑賞者の体験を反映する。その彫刻はモニュメンタルであると同時にドメスティック(家庭的)な魅力を有する」。

宿泊者も利用できる部屋。《天秘》が馴染む
ティエポロの天井画
廊下に《天泉》

室内空間にあっても存在感があり、親しみやすさと洗練された贅沢な雰囲気を演出する安田侃の彫刻。ボートが乗り付ける正面玄関のロビー内、カナル・グランデに面した中庭、ティエポロの天井画の横の部屋、運河を見下ろすテラスの前。それぞれの場所にあった大理石やブロンズの彫刻が宿泊客の記憶に残ったことでしょう。

運河に面した庭でくつろぐ宿泊客とホワイトブロンズの《天秘》
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徒歩で入る「裏玄関」の前庭にホワイトブロンズの《意心帰》