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名前が似てるSay Sue MeとSay She Sheを並べて語る

誰でも思いつくことを、敢えてやる。
野心の強いYouTuberのようで、45歳のおじさんには少々お下品だけれど。

韓国は釜山から世界へ - Say Sue Meの略歴

韓国音楽を聴くのならば、知らない人はそういないだろう。
釜山出身の4人組 Say Sue Meは、国内での活動を経て2017年にロンドンのレーベル Damnably Recordsとの契約を果たすと、BBCラジオで「Old Town」がヘビーローテーションされるなど話題に。アメリカのSXSW出演など欧米での活躍が始まり、逆輸入的に自国での評価も増していったという。
同時期に同じDamnably所属のおとぼけビ~バ~とのスプリット盤をリリースしたことから、そこで知った日本の音楽ファンもいたのではないだろうか。

2019年、韓国最大級の音楽祭 Korean Music Awardsで、BTSと並ぶ最多の5部門にノミネートされ、Best Modern Rock AlbumとBest Modern Rock Songを受賞。
昨年はFUJI ROCK FESTIVAL '22への出演をメンバーのコロナ罹患で断念する憂き目にも負けず、2度目となる来日ツアーを敢行。DJ DAWADYGLをゲストに、素晴らしいライブ・パフォーマンスを日本のファンに見せたばかりだ。



Le Freakが名前の由来  - Say She Sheの特徴

米NYのブルックリンを拠点に活動するSay She Sheは、キービジュアルやMVではフロントの女性ボーカル3人のみだが、実際は7人か8人(オフィシャルでもまちまち)が所属する"Discodelic Soul Band"。バンド名は、Nile RodgersのFunkバンド Chicの「Le Freak」(邦題:おしゃれフリーク)が由来となるため、読み方は"セ・シ・シ"になるとか。

バンドの経歴は定かではない。しかし、彼女らのfacebookを遡ると2018年4月に「イギリスでデビューしたよ!」という投稿があるため、少なくとも4年以上は活動をしているが、まだ目立った活躍はそれほど積んでいないようだ。

"夢のようなハーモニー、キャッチーなフック、アップテンポなグルーヴであなたを魅了します"という通り、70年代後半のガールズ・グループを彷彿とさせる3人の女性リード・ヴォイスが、まずは耳を惹く。
さらに、踊れるリズムやふくよかなベース・ラインの心地よさに、orientalな旋律やpsychedelicな彩色が絶妙に配されている。ライトにもヘヴィにも楽しめる音楽だ。



Say Sue MeとSay She Sheの音楽性

Say Sue Meは、自らをSurf Rockにインスパイアされたインディーズ・バンドと称している。加えてPAVEMENTYo La TengoJapanese Breakfastなど、メンバーのフェイバリットに象徴されるalternativeなサウンドが、大きな特徴だ。
そして、Sumi Choi(vo,g)の囁くような歌声。小学生の頃からの幼なじみでバンドをやっていた3人が、喫茶店でビールを飲んでたら、ものすごく印象的な声で話す人がいた。そこで声をかけ、バンドに招き入れたのがSumiだった。……なんて、漫画みたいなエピソードもあり、各国のindie rock好きから注目されている気鋭の存在だ。

ただ、漫画なエピソードならSay She Sheにもある。El Michels Affairで活躍していたロンドン出身のインド系シンガー Piya Malikと、アメリカ出身の白人シンガー Sabrina Mileo Cunninghamは、たまたま同じアパートの上下階に住んでいたそうで、踏み鳴らしながら歌っているのが聞こえたことが、出会いのきっかけだったという。
79.5で活躍していたアメリカ出身の黒人シンガー Nya Gazelle Brownとも屋上のパーティで知り合ったそうで、NYならではの出会いからスタートしたバンドなのだとか。

Say She Sheのサウンドの特徴は先述したが、フェミニスト活動家 Guerrilla GirlsRoe v Wade法改正にインスパイアされた「Forget Me Not」「NORMA」のように、ヒリついた質感の曲もある。そして、"気持ちいい音楽"という、このnoteのコンセプトにピッタリなのが「Prism」だ。

延々とループするリズムとベース・ライン、霞みがかったpsychedeliaが次々に花開いていく中に、3色の美しいハーモニー。鏡を駆使した幻想的なMVも見事だ。

一方、Say Sue Meの気持ちいい音楽なら、PAVEMENTのカヴァー「Elevate Me Later」だろう。結成10周年を記念して、2022年にリリースしたセルフを含むカヴァーEP『10』に収録された同曲。Sumiの吐き捨てるような歌声もキュートだが、Kim Byungkyu(g)のトリッキーなギター・アプローチが序盤から耳に楽しく、本家とはまた違ったテイストの名曲に仕上がっている。



終わりに

そもそも、歴10年のSay Sue Meと、アルバムがまだ1枚のSay She Sheを、並べて紹介することに無理があった。音楽性はSay She SheがSoulで、Say Sue MeはSurf Rock。女性ボーカルは共通だけど、Say Sue Meは1人でSay She Sheは3人。そもそものバンド名だって、読みで言えばSay She She(セ・シ・シ)とSay Sue Me(セイ・スー・ミー)。あんまり似てなかった。

Say Sue MeとSay She Sheの共通点は、どちらもKEXPのYouTubeチャンネルに素晴らしいライブ・アクトが掲載されていること(Say She SheSay Sue Me)と、私はどちらも大好きです、ということで。