220910 10代終盤

あと一年で此処ともオサラバ、の頃
ほじくり返された校庭には
瀟洒に見える校舎が建ち
血と汗と涙を吸った校舎は
土埃の立ち上るグラウンドとナった
中ヌケの仕方を知った僕には
ますます寄り付かぬ場所となり
１日いるのは補習の時くらいにナっていた
出席を取ったら離脱
帰りには取られないから直帰
始業前には席に着き
今日の予定をイメージしながらホームルーム
かつて生徒と問題を起こし
此処に来たと噂される担任が
教室を出たら一式を抱えて教室を離脱
下駄箱で屈んだら一目散に駅まで
ピンクのタイルを下る頃にはもう
気持ちは晴れやかだった

ある日
隣の席の同級生が
ねぇ、ギターやってるんでしょ？
と話しかけてきた
時はバンドブーム
近所の友達も大学生も
視界の中の人々は全員
バンドに所属シている様に見えてた
訝しく想う僕の表情を無視して彼女は
ギターを買わないかと持ち掛けてきた
モノを診ないと何とも謂えない
今度持ってきて
大学生の彼氏が居ると噂される彼女は頷いた
次の日
律儀にもソフトケースを抱えた彼女は
周りに冷やかされながら
教壇側の引き戸から入ってきた
彼女の周りをスカートの短い仲間達が囲んで
いつもと違う荷物の中味について
カシマしく話し合ってた
一通りの喧騒が去ったあと
彼女は此方に筋の通った鼻を向け
コレ
と謂いながら僕に渡した
3,000円、どう？
僕が棹を出す前に打診してきた
シェクターのストラトタイプ
SSHにフロイドローズ
ポリ塗装にローズ指盤
ロックナットに無印ペグ
アチコチ錆びてるけろ
バブル期の中古なら3,000は安いかな
ヘッド側のEの構えに握って弦をミュートし
左手でぶら下げてブリッジとエンドピンの間を
右手の指の腹で叩く
教室内の喧騒の中に在っても抜けてくる
低く重たい鳴りと余韻が聞こえた
中折れも無さそうだ、買いだ
此処までの手間賃や諸経費
ぶっちゃけて言えばキリの良さから
5,000円札を彼女に渡した
その時に
盗品じゃないヨね？後でバレたら
回収に行くからね
と釘をさし彼女の言質を取った
お兄さんの持ち物らしいシェクターは
僕のモノとナった