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面白ければ俳優さんのおかげ。つまらなければ演出者のせい。

今回の演出術の記事は「面白ければ俳優さんのおかげ。つまらなければ演出者のせい。」ということについて書いていきたいと思います。

マガジン「もなからの独り言」にて「自分のせいで自分のおかげ」という記事を書きました。

ぼくとしては基本的な考え方として、良い結果についても悪い結果についても自分の行動には常に責任が伴うと考えています。

しかし、公演をしていく上で・・・そうはならない時もある、と申しますか…良い事は俳優さんのおかげであり、悪い事は演出のせい、だと考えています。

▼作品を観に行って…

ぼくが舞台を観に行く時、「好きな作品だから」とか「好きな俳優さんが出演されているから」とか「劇団自体が好きだから」ということが多いです。

もちろん、お付き合いもありますし、ご招待いただいくこともあるのですが…ここでは舞台演出家としてではなく、観客としてと考えますと、上記の3つが多いです。

とても面白いなぁ~と思った場合、やはり俳優さんの演技に目が向きます。衣装や小道具、照明・音響にも興味がわきます。
舞台演出家でありながら、まったくと言っていいほど「キャスティング」や「演出」について気にも留めなくなります。
「すごいお芝居だった!!〇〇さんのあのセリフかっこよかった!」
ですとか
「めちゃくちゃすごいお芝居だった!!あの役の動き、かっこいい!」
とか…

▼反対につまらなかった場合…

観に行った舞台がつまらなかった場合…ぼくは・・・演出者が悪いと思ってしまいます。
「キャスティングミスじゃない?」
とか
「あの演出はないよね」
などなど…

ぼくが舞台演出家だからかもしれませんが…観ていてつまらない場合…どうしても「演出が悪い」と感じてしまうのです。

▼舞台作品への「責任」

お芝居を創っていると…演出者は色々な「責任」を持つことになります。
俳優さんの演技に対して。
照明に対して。
音響に対して。
装置、小道具、衣装…などなどに対して。

演出という仕事は直接その仕事・業務をしないまでも、舞台作品に関わるあらゆるものについて責任をもつべきと考えています。

「演出」と名乗っている以上、その舞台作品のすべてに責任を負うべきであり、もし、お客様の感想が「つまらなかった」とあったとしても、いちいち言い訳などできません。

「役者がいう事を聞かなかった」とか「イメージと違う演技だった」とか「小道具が云々」「照明がなんとか」「音響がかんとか」…などなどいちいち言い訳していたら、かっこ悪いです。

ですので、良いも悪いも・・・自分以外の仕事だとしても、演出者は舞台作品すべてにおいて、責任を負うべきなのです。

▼演出者は選ばれる職種

これはまた別の機会に書こうと思いますが、ぼくが師事した人の言葉で今でも考え方の礎になっているものがあります。

「演出家は選ばれなければできない職業だ。俳優に、スタッフに、そして客に選ばれて初めて演出家だ」

演出者は、俳優にもスタッフにもそして何よりお客様にも選ばれて成り立つものなんだと考えています。
つまり、演出として舞台作品を創るということは、それだけ責任を負う範囲が広く、関わる人々に『委任』されて初めて成り立つものだと理解しています。

ですので、その『委任』されたものについてはやはり(やり方、方法はさておいて)良い結果も悪い結果も、舞台作品については責任を負わなければいけないと考えています。

▼良い結果の時には…

とはいえ…お客様に大絶賛をうけた作品だとしても・・・演出家も褒められることももちろんありますが・・・「俳優さんのおかげ」であると感じています。

もちろん、照明・音響・装置・小道具・衣装・メイク・制作・広報などなど・・・たくさんのスタッフの労力が合わさって舞台は創られていきますが・・・

今、目の前で起こったことを実現させていたのは…お客様にご覧いただいたのは「俳優さんの演技」であることは事実なわけです。
もちろん俳優さんの演技以外に心を動かされるお客様もいらっしゃると思いますが…舞台上の「役」が行ったことに多くのお客様は心を動かされると考えています。

従って、舞台がうまくいければ「俳優さんのおかげ」だと考えているわけです。お客様が心を動かしてくださるのは「役」であり演じている「俳優さん」であると。

そして、舞台作品について…良いご評価を頂けない場合は…「演出のせい」なのであります。

面白くないとお感じになられたところは様々だと思いますが…その一つ一つに目を向けて向かい合っていく事は、「次に」つなげるためのまぎれもない、演出者の仕事だとぼくは考えています。

舞台演出家の武藤と申します。お気に召しましたら、サポートのほど、よろしくお願いいたします!