見出し画像

だから見ていてください、俺の、変身!

現在、Youtubeの東映特撮チャンネルで「仮面ライダークウガ」が配信されている。

ぼくは映像も舞台も作品について論評しない。
芸術に答えはないと考えているし、ぼくの好みや考えなどくその役にも立たないからだ。

ただ、このクウガという作品を今改めて観ると、どうしても書いておきたいことがあった。

それは今でもクウガが多くの人に愛されている理由の一つがわかったような気がしたからだ。

五代雄介もクウガも・・・今もどこかで生きていて、「人々に笑顔なってほしい」という目的のために生きている事を多くの皆さんが感じているからではないかという事だ。

無論、今、ぼくが感じたことであって、既に皆さんがこうした思いを感じていて「はげ、何言ってんだよ」というご意見もあると思う。
ご容赦いただきながらも、この1話、2話を見て、「仮面ライダークウガ」について少し書いておこうと思う。

この作品についてはこちらのWikipediaが詳しいのでご参照いただくとして、「仮面ライダーBLACK RX」以降、久々のテレビシリーズだった。

ぼくは元来仮面ライダーが好きで、クウガを見てバイクの免許を取った。買ったばかりのバイクにまたがり、クウガの変身ベルトを回して走り、パトカーに停止を求められ、「それ、かっこいいね」と半笑いで色々聞かれたことがある。それからもう、20年経つわけだ。時の流れはあっという間だ。

話を元に戻して。
このクウガの第2話「変身」の中に主人公五代雄介のこんなセリフがある。

戦います、俺。
こんな奴らの為にこれ以上誰かの涙を見たくない!
みんなに笑顔でいてほしいんです。
だから見ていてください、俺の、変身!

と言って、決意の変身をするシーンだ。
ぼくは何度もこのシーンをDVDなどで見ているのだが・・・今回、このシーンを改めて見て感じる事があった。

それは五代雄介はグロンギ(敵の一団の名前)を倒す事は目標ではあるけれども、目的は「みんなに笑顔でいてほしい」ということなのではないかということだ。

つまり、グロンギを倒すという決意は目標(目的の一つではあるかもしれないけれども)であり、五代雄介の生きる目的が「みんなに笑顔でいてほしい」ということであり、方法がクウガとなって、その一環を実現するという風に感じた。
クウガへの変身はあくまで手段であり、方法なのではないだろうか。

もし、五代雄介が「アークル(変身ベルト)」を見つけなかったとしても、きちんとこの脅威に「かかわった」ではないだろうか。
自分のできることで。目的が「人々に笑顔でいてほしい」ということなのだとしたら。

この物語が進むにつれて―――五代雄介が「2000の技を持つ男」として―――様々な技を披露するのだが、それは「戦う」為のものばかりではない。「みんなに笑顔でいてほしい」という目的のために様々な「技」「手段」を得きた数々のように感じる。

だから、一番最初に覚えた「技」は「笑顔」であるという事が言及される回もある。

こうしたことを考える時に、この番組が今でも愛されている理由の一つが、『今でも五代雄介、クウガは生きていて、「人々に笑顔なってほしい」という目的のために生きているのを皆さんが感じている』と考えている。

グロンギは確かに五代雄介・クウガによって倒された。世の中は平和になり、雄介は旅の青い空の下に居る、という描写で物語は完結する。

しかし、死んでもいなければ、今も「笑顔のために」活動しているのではないか、と今回強く感じた。

戦い続けているわけではなく、新たな敵の出現に備えているわけでもなく、五代雄介という人間は、「人々の笑顔」の為に活動しているからこそ、多くのファンが今でもこの作品を愛しているのではないだろうか。

どこかの記事で読んだ記憶があるが、この番組は「嘘ができるだけないように、リアルを追及した」らしい。
だから、当時の特撮番組としては異例の試みが随所に見られていると考えている。

だからこそ、当時から人気がある番組でもあったし、今でも愛する人が多い理由でもあると思う。
格闘の表現、バイクの表現、物語、キャスト、演出・・・どれをもっても、それまでの特撮番組では見られなかった試みがたくさんある。

ぼくが何故、仮面ライダーが好きかと言えば「孤独のヒーロー」だ、と感じていたからだ。
敵の組織に改造され、悩み苦しみながらも悪の組織と戦っていく…というヒーロー像に憧れていたし、今でも大好きな作品だ。

クウガも「孤独のヒーロー」なもかもしれないが・・・やはり、そこには人間「五代雄介」の生き方そのものがあるような気がしてならない。

悪の組織があるからヒーローが現れるのではなく、人間五代雄介がたまたま(ではなく、必然かもしれないが)生きていく中で脅威となるものに立ち向かっていく・・・そこは任務でも使命でもなく、五代雄介の生き方そのものではないだろうか。

グロンギを倒す事ではなく、「人々の笑顔にいてほしい」という事が生きる目的だからこそ、悩み・苦しみ、打ち克ち、そして・・・今も生きている。特撮番組ではあるけれども、人間ドラマだとぼくは今回の配信を見て改めて感じた。
そして。
グロンギを倒して終わりではなく、今も人間・五代雄介のドラマは続いているからこそ、今でも愛する人が多いのではないかと考えている。

ぼくも生きる目的を大切にしよう。

舞台演出家の武藤と申します。お気に召しましたら、サポートのほど、よろしくお願いいたします!