失ったもの、そして得たもの

 この1カ月のオーストリア挑戦は、自分にとって大きな賭けだった。

元々のプランでは、前回も書いたようにウィーンでプロのステージへステップアップし、自分の市場価値を高めてから、また次のステップへ進む予定だった。
そのためには、少なくとも1、2年はオーストリアでキャリアを積んでステップアップをしていくことを想定していた。
そのスタートとして、3部というオーストリアでのセミプロの舞台で戦うことが最低条件で、もちろん4部からステップアップできる可能性もあるが、24歳になる自分の年齢を考えると、時間をかければかけるほど難しくなる世界だ。
しかし、結果的に今回の自分はそのスタートラインに立てることができなかった。

成功か失敗かでいえば、失敗としかいいようがないオーストリアの挑戦だった。
思い描いてた何もかも全てがうまくいかなかった。

この経験を自分の中だけに留めておくこともできるけど、自分の失敗談から誰かのヒントや助けになれればいいと思うし、自分でもう一度整理するためにも、このnoteに書き記したい。


1.失ったもの

 1.1 お金

まずはじめに、自分が今回の挑戦でもっとも失ったものはお金だと思う。
結構なまなましい話だけど、他に海外に挑戦したい人とかの参考にもなるかもしれないから、ちゃんと書こうと思う。

自分はドイツにいる間、オフシーズンに彼女と旅行に行く、もしくは何かプレゼントできるように、ちょっとずつ貯金をしていた。
毎月200€(3万円)、1年間くらい続けていたけど、たまにそこから使わざるを得ないこともあったりして、最終的にオフシーズンまでにだいたい2000€(30万円)くらい貯まっていた。
もちろんそんなにお金を稼いでいたわけじゃないから、社会人の人から見たらちっぽけだけど自分からしたら大金だった。

その貯金は結局一瞬で溶けて、全て自分のためだけに使うことになった。

①代理人料
kidream という主にオーストリアで活動する留学会社と契約する形だった。
その契約料が1500€、それに自分は住居探しのサポートをお願いしたので、プラスで250€。
1,750€に税金がついて、合計約2000€(30万円)だった。

そう。貯金がすでに終了した。笑

②交通費
・ケルンからウィーンへの片道の航空券、キャリーバックひとつつけてー約90€
・ウィーン市内1カ月チケットー約50€
 これはドイツより全然安い!笑 
・ウィーン外のチームの練習参加の交通費、①週チケットー約40€、②往復チケットー約20€。(チームメイトが車で送ってくれたので、無駄金。)
・結婚式のためのウィーン⇔ケルン往復航空券ー約100€。(結局その前にドイツに帰ることになり、無駄金。)
・帰りのバスー約80€
当日とったので高めだけど、飛行機だと倍近く。
でも早めに取れば、飛行機もバスも値段はそんなに変わらない。荷物をつけると飛行機の方が高くなる。

合計約380€(5万7千円)
多分もうちょっとなんかで使ってる。
120€無駄金になってしまったのはいたい。。

③家賃
家はマジ色々あって大変だった。
自分の希望で安いWGに移させてもらえるような話があったり、同じ留学会社の他の選手との関係などですぐ引っ越さなきゃいけない話だったり、9月から彼女が来るから2人で住むための新しい家の話だったり、色々あったけど、結局最初の一人暮らしの家に1カ月住まわせてもらった。

本来なら、月500€+水道電気ガス代。
でも色々あって、最初の半月(6月分)は450€、7月の退去日までは400€で住まわせてもらった。
単純に期間だけで計算すると、1カ月で850€払ってて、ぼったくられてるけどまあしょうがない。😅

本当は6月いっぱいで、7月から別のWGに行く予定だったが、最終日にやっぱWGにいけないということになって延長してもらった。
そして、7月分は普通に1カ月住む予定だったけど急遽ドイツに帰ることにした。

住むとか住まないとか、引っ越すとか引っ越さないとかで、話がぐちゃぐちゃになっていたので、急なお願いなども対応してくれたツウォさん(中国人大家さん)には感謝している。

あと、代理人が紹介してくれた9月から彼女と一緒に住む予定だった、ウィーン中央駅近くのめっちゃ良い家の契約書作成料として300€。
そんなのある!?と思ったけど、ドイツに帰ると決まる前に契約書を作成されてしまったので、無駄金ボチャン。

合計1150€(172,500円)。

④食費
食費はまじだいたいだけど、スーパーはケルンよりちょっと高いくらいだった。
昔からこの値段だったらしいからウィーンは高いと聞いていたけど、最近はケルンもどんどん高くなってて自分は正直ほとんど同じくらいに感じた。
でも、レストランはケルンより安かった。
もちろん高いところもあったけど、平均的にケルンより安かったと思う。というか安いところが多かった。
ケルンだと30€くらいしそうな寿司は15€だったし(たかくんに奢ってもらった!)、15€しそうな丼ぶりも10€くらいだった。

まあざっと、スーパーで400€。
家にWi-Fiがなかったから、Wi-FiのためにIKEAやマックのカフェに行ってた分が30€。
彼女がウィーンに来た時とか、レストランなどで使ったその他の食費約200€。
合計630€(94,500円)。

⑤合計支出
だいたいこんなもんかな?

代理人料、交通費、家賃、食費、全部合わせて、自分が1カ月で使ったお金はなんと、約4160€(62万4千円)。😱😱😱

日本円にすると62万だと!!!?????
だいたいだからもうちょっと使ってる可能性もある😅
貯金プラス6月分の給料と、サッカーの金と、あと彼女にちょっと助けてもらってなんとかなったけど、自分1人では普通にマイナスです。

彼女のウィーンに来た飛行機代や、今まで折半して払っていたケルンの家賃の6月分、7月分は彼女が払ってくれて、彼女の出費も増やすはめになってしまいました。

そうです。僕は彼女に助けられまくってるただのヒモ男です。🥲

 1.2 彼女との時間、そして彼女の時間

1人でウィーンへ旅立ったので、当然彼女と一緒に過ごす時間は失った。
そして、貯金で行こうと思っているた旅行なども行けなくなった。
彼女は行きたかっただろうし、申し訳ない。

それに加えて自分の場合は、彼女の時間すら奪ってしまった。

自分がウィーンに勝手にすぐ行ってしまったせいで、彼女はそのあとの家のことや自分のビザ、結婚の準備などドイツでしなきゃいけないことを1人で片付けなければならなくなった。

もちろんオーストリア挑戦を決めてから、できる限りのことはして、色々2人で話しながら進めてたけど、5月くらいに決めて6月にもう渡航だったので、色々不安要素はあった。

自分のプランとしては、自分がオーストリアでチームを決めて、結婚式に一度ケルンに戻り、その週でビザの申請や日本大使館での手続きを終わらせてウィーンに戻って、仕事や生活を整えていく予定だった。
一方で、彼女のプランは、結婚式の準備、自分のビザ申請のための予約や手続き、そしてビザの受け取り、家の退去手続きなど、全て片付けて、9月ウィーンに引っ越し。

自分はやりたいことだけやって、彼女は面倒なことばかりなのに、嫌な反応ひとつせず、いつも「大丈夫。あなたのためなら喜んで!」と明るく支えてくれた。

そんな彼女にばかり苦労させることはできなくて、4部で金ないのに無理やりウィーンに住んだら、もっと自分だけじゃなくて彼女も苦しめることがわかっていた。
これから先は彼女に助けられてるだけじゃなくて、自分が彼女を支えられるように、人生を歩んでいきたい。

 1.3 仕事

ケルンで働いていた日本食レストランはやめた。
正直ドイツに来た時から、サッカーで金稼げるように早くなって、日本食レストランなんてすぐ辞めるつもりで入った。
でも気づけば2年半以上経って、本当にお世話になった。
ケルンに戻ってくる予定がなくて、オーストリアでサッカーすると格好つけて辞めたのに、結局また戻ってくることになって、また仕事を探すところから始まることになった。

 1.4 チーム

ドイツ5部リーグでシーズンを戦い、たいした結果は残してなかったものの、自分の評価してくれるチームはいくつかあった。
その中に、5部で優勝した(4部へは条件不足で昇格できなかった)チームからもオファーはあった。
オーストリアに行くと言ってそのオファーも断ったけど、今となっては無所属。

ドイツでチームを断って、オーストリアでチームを見つけれず、ドイツに戻ってきた。

オーストリアで自分が練習参加している間に、ドイツでもプレシーズンは始まっていて、もちろんそれぞれチームは補強とかも進めていて、ドイツ5部に入ることも今となっては簡単じゃない。

 1.5 オフシーズン

自分はシーズンが終わってすぐオーストリアに行き、次の週には練習参加が始まった。
自分が選んだ道だし、そもそもオフシーズンはなくても全然いけるサッカー大好き小僧だから大丈夫だけど、リフレッシュする時間を失ったのはしんどい人にはしんどい。

ドイツとかヨーロッパでは、オフシーズンで他の国に旅行に行ったりしてすごい良い思い出を作れる機会だから、日本の時よりその大事さを実感している。
だからこそちょっと残念ではある。


2.得たもの

失ったものは大きかった。
それに引き換えて自分は何を得たのか。
目に見えるものを多く失って、得たものがあるとすれば自分の中のもの。
自分の中のものを言語化するのは難しくて、ちゃんと伝えられるかわからない。

ざっくり言うと、得たものは知識と経験。そして、出会い。

今の自分に現実の生活で役に立つかはわからないけど、失ったもの以上に大事なものだと信じたい。笑

 2.1 ウィーンでの生活

ウィーンで住むことが日本人の誰しもができることではない。
そんなことを経験できたのも得たものだと捉えたい。
ウィーンに関する少しばかりの知識も得られた。
前回の記事でも書いたけど、ウィーンは本当に綺麗だった。そして便利。
できることなら、またウィーンに住みたい。

前回の記事で書いてないこととすれば、ウィーンの人の方が歩くのが速い。笑
ケルンの人の方がゆっくりでのんびりしてる。
ウィーンの人の方がせっかちなんかな?
ケルンの人の方が余裕ある雰囲気を感じる。

あとは、電車で隣にめちゃくちゃ座ってくる。
ケルンだと普通に隣に荷物ドスンと置いて、何にも気にせず立ってる人とか多いけど、
ウィーンだと、荷物置いてたらどかしてくれん?みたいな感じでめちゃくちゃ座ってくる笑
基本みんな座ろうとして立ってる人は少なめ。

あとは、変なやつがケルンより少ない。
頭おかしいやつとか叫び出すやつとか、臭いやつとかたまにはいるけど、ドイツよりは全然少ない。

まあ総じて、ウィーンの方が品があるって言ったらいいんかな。

 2.2 オーストリアでのサッカー

構成として、ドイツは1〜3部がブンデスリーガ(プロ)で、4部がレギオナルリーガ(セミプロ)、5部以降がアマチュア。
対して、オーストリアは1、2部がブンデスリーガ(プロ)で、3部がレギオナルリーガ(セミプロ)、4部以降がアマチュアになる。

レベルは体感的に、オーストリア3部がドイツ4部下位〜5部上位くらいで、4部が5部下位〜6部上位くらい。そして見た感じ、2部は4部くらい。
だからこそステップアップはドイツよりしやすいと思う。

レベルはオーストリアの方が落ちるかもしれないが、その分、市場価値の面でおおきなメリットがある。
例えば、サッカー自体のレベルは同じでも、ドイツ4部よりオーストリア2部の方が市場価値は高くなる。

次に、下部リーグ(アマチュア)の環境面と給料面がドイツよりいいこと。

オーストリアだと3部はもちろん、4部でも天然芝を持ってるチームが大半。
ドイツ5部では練習着を自分で洗って毎回練習の時もっていくケースが多いが、オーストリアは4部でも練習着を洗ってくれるチームは多く、練習前に自分のロッカーにすでに練習着とバスタオルも用意されているケースが多かった。
スパイクもロッカーに置いてる人が多くて、練習に手ぶらで来てる選手ばかり。
練習に荷物持って行かなくて良いのはマジ楽だと思った。

給料面は聞く話によると、下部リーグの段階では、ドイツよりオーストリアの方が良い。
自分は残念ながら経験できなかったが、他のウィーンにいる留学生はだいたいドイツの留学生よりいい給料をもらっている。

ドイツ5部とかだと一年目の選手はだいたい
固定100〜300€、勝利給勝ち点×25〜50€。
オーストリア4部だとだいたい
固定400〜700€、勝利給勝ち点×50〜100€。

もちろん例外もあるし、あくまで自分の経験と聞いた話からの目安。

オーストリアでサッカーする人の国籍とかも面白い。
ドイツではだいたい、ドイツ人かトルコ人か黒人とかが多かったけど、
オーストリアには、イタリア人やクロアチア人など地理的に近い国から来ている選手も多かった。
ドイツ語を話せない人とかもたくさんいて、クロアチアの曲とかがロッカールームで流れていたりして、面白かった。

でも、オーストリアでやって、ドイツやオーストリアだけじゃなく、どこやっても世界共通なんだろうなと感じたことは、やっぱりサッカーで上に上がっていくには、実力だけが全てではない。

上のチームから見つけられるタイミングや、上のチームとのツテ、つながり。そして、運。
試合に出るためにチームに溶け込むコミュニケーション能力や、人間性。
そして、怪我をしないこと。

プロの世界ではわからないが、プロを目指すレベルのサッカー留学する選手たちには、どれも全部必要。
努力、人間性、運、タイミング、すべて掛け合わされてやっとはじめてプロになれる。

それら全てを含めての実力。
実力とは、サッカーのスキルだけではない。

今回自分には実力が足りなかった。
このオーストリア挑戦で1番わかったことは、自分の実力はまだまだだということだった。 

 2.3 オーストリアでの出会い

オーストリアに行って短い間だったけど、いろんな人に出会った。
もちろん、その全員が今後の自分の人生に関わってくるわけではないけど、きっとどこかで交わることがあるかましれない。

まず代理人さん。
本当に何から何までお世話になった。
めちゃくちゃ感謝している。
正直自分はわがままだったと思う。
自分の目標があって、条件があって、本当は代理人としては選手とチームを契約させることが必須なのだけど、ある意味自分は代理人に仕事をさせずにドイツに戻ってきてしまった。
サッカー選手として、キャリアアップはできなかったけど、間違いなく自分の人生の分岐点を助けてくれた人である。

そして、その代理人の留学会社の選手たち。
その会社の選手たちはみんな志高い人が多くて、このグループいいなって自然と思えた。
色々相談に乗ってくれた人とか、練習一緒にやってくれた人とか、生活面で色々教えてくれた人とか、本当にみんないい人だった。
ドイツのほとんどの留学会社だと、選手同士のつながりとかあんまなくて、自分は自分って感じだけど、このkidream ではみんなで切磋琢磨していけるような、ひとつなチームのような感覚だった。

あとは、練習参加したチームのチームメイトや監督。
遠いチームの時には、車に乗せてくれた選手もいて、そこで色々話して仲良くなったやつもいた。
一つ心残りは、インスタでも聞いとくべきだった。
それがSNSの良さだし、そういう時に使わねば。

残念ながら、オーストリアの人たちとは短い付き合いになってしまったけど、こういった出会いがきっとのちのち自分の力になる時がくる。

だから、出会いは大切に。
まさにその通りだとおもった。
 

 2.4 言語の違い

オーストリアとドイツはどっちもドイツ語が公用語で、言語にちがいはないけど、訛りとかが全然違っておもろい。
観光客が多いからか、ウィーンの方が街中歩いててやっぱ英語を話す人が多い。

そしてやっぱドイツ語もちょっと違う。
ウィーンの人のドイツ語はだいたい理解できるけど、遠いチームの練習参加の時は訛りがすごくて全然理解できなかった。
ドイツ語だけど、東北弁みたいな訛り方してた。

1番面白かったのはSuper。
ドイツだとズーパーだけど、オーストリアだときれいなスーパー。
ドイツのズーパーに慣れていたから、スーパーがめっちゃ変に感じた。笑

 2.5 人生の経験

あと、1番の大きな経験は、人生を賭けた挑戦に失敗したという経験。
メンタルをボロボロにされて、夢を閉ざされて、希望を消されたけど、こんな経験はなかなかできない。
成功してうまいこといくことしか考えてなかったけど、誰もがこういう思い切った挑戦をできるわけではないと思う。
失敗して、かっこ悪いし、ださいけど、この経験には自分は胸を張りたいと思っている。


3.終わりに

1カ月で65万円ちかくを使って、あらゆるものを犠牲にし、これまでの生活を捨てた結果が、
サッカー選手として前進どころか後退して、自分の首を絞め、0からもしくはマイナスからのスタートとなった。

でもきっと、この1カ月で得た自分の中のものはそれ以上の価値があると信じている。

全て自己投資したに過ぎない。

全てをなくしたけど、ずっと隣には彼女がいて、支えてくれた。
そんな彼女と8月9日結婚する。
今度は自分が支えてあげる番。

おれは誰かが挑戦する姿を全力で応援したい。
おれは誰かが失敗した姿を笑ったりしない。

大事なのはその後どうするか。

今までの自分を破壊して、新しい自分を創造する。

芸術は爆発だ。

聞き覚えのある言葉。
山さんは俺に生き方を教えてくれてたのか。

これを読んでくれた人もどうせなら思いっきり挑戦してほしい。
ぶっ壊れてしまうほどに。
また新しいものを創ればいいだけ。

さあ、おれも新しい自分を創りにいこうか。

下を向いてないで、次は頑張れよ
結果より気持ちだろ、俺らに必要なのは

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