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【短編小説】ストレート

621文字/目安1分


 長くて綺麗な黒髪が好きだ。

 短いのよりも、パーマよりも、茶髪でも金髪でも、何よりも黒髪ストレートがいい。

 前の席に座っている、あの子のことが気になって仕方がない。見ただけで分かる、さらさらでつやつや。完全に俺好み。ベストでドンピシャ。
 背中までまっすぐ伸ばしたその髪はうっとりするほどで、思わず触りたくなってしまう。

 朝、教室に入った時も、授業中も、お昼を食べている時も、次の授業に移動している時も、友達と話している時も、ずっと見てしまう。

 まっすぐ下ろしているのも、ノートを取る時に耳にかけているのも、体育の時に後ろで結んでいるのも、友達とふざけてお団子にしているのも、みんなみんなよく似合っている。

 君の黒くて綺麗でくせのない髪が大好きだ。

 その髪質は周りから絶対羨ましがられている。本人は「何もしてないよー」なんて言うけど、それが逆効果なんだ。そういうちょっと天然なところもたまらない。君はいいシャンプーを使ってそうな髪しているよ。

 ある日、君がばっさりと髪を切ってきた。
 肩にもつかないくらい短くして、しかもさらにウェーブがかっている。
 なんてこった。
 でもよく見ると、笑った時の顔がすごくかわいい。少しむっとした顔も、照れた顔も、ふざけている時の楽しそうな顔も、お昼を食べている時のおいしそうにしている顔も、全部がかわいい。君ってそんなにいろんな表情を見せるんだね。

 もしかして、俺が好きなのは黒髪じゃなくて、君なのかもしれない。



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