萬古焼の国際アンバサダーになりました

萬古焼(ばんこやき)をご存知でしょうか?

萬古焼とは、私の故郷である三重県四日市市の伝統工芸品で、代表的な製品として土鍋や急須などがあります。江戸時代に始まり約300年の歴史を誇るこの陶磁器の最も大きな特徴は、非常に優れた耐熱性です。ガスレンジや炭火などの空焚きや直火に対しても、高い耐久性を発揮し、特に土鍋に関しては世界初の「割れない土鍋」として認知されており、国内ではなんと80%の圧倒的シェアを持っています。

この世界に誇れる四日市の特産品を、もっと広く知ってもらいたい。萬古焼の魅力が広まることで、地元の経済がもっと活性化してほしい。さらには若い世代が地方の産業を支えていくきっかけになってほしい。このような想いを、縁あって各関係者に伝えさせていただく機会が先月ありました。そうしたところ、ありがたいことに四日市の市議会委員や萬古陶磁器振興協同組合連合会の前理事長に快く賛同いただき、萬古焼の魅力を海外に伝えるべく、四日市萬古焼の国際アンバサダーとしてお手伝いさせていただく運びとなりました。

私が住むシンガポールには非常に親日な国民が多く、日本の文化や食に大きな関心を持っている人にたくさん出会います。それだけでも日本が誇る特産物を紹介するには大変適したマーケットですが、それ以上にシンガポールには大きな可能性を感じる要素が多数あります。シンガポール人の約7割を占める華僑の食文化には、日本のように家族や友人たちと同じ鍋をつつく文化が根付いています。また、土鍋で様々な具材と一緒にご飯を炊いておこげをつける、クレイポットライスという大変美味しいシンガポール料理もあります。鍋料理はもちろん、美味しいご飯を炊くのが得意な萬古焼の土鍋と非常に親和性が高い基盤が、シンガポールには備わっていると日々感じています。

現地の文化と日本の伝統産業が融合して全く新しいものが生まれる可能性もあります。シンガポールでは、外で炭火のバーベキューをするのが多くの人の週末の楽しみです。バーベキューの直火に十分耐えられ、かつ保温性の高い萬古焼の鍋を使い、蒸し野菜やローストビーフを外で調理する、なんていう使い方もいつか定着するかもしれません。

円安トレンドが続く中、日本の製品を輸出するには格好の追い風です。加えて、シンガポールでは、皆がまだ知られていない日本の魅力を追い求めています。シンガポールは東南アジアにおいて小売のショーケースとして機能しており、シンガポールで流行したものが周辺国への需要に波及します。こういった状況の中、自分の故郷の活性化にいかに貢献できるかを考えて導き出した一つのアプローチです。本業に影響のない範囲内で、可能な限り四日市萬古焼の販路拡大および認知向上に貢献したいと思います。