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日誌「「お母さん、お父さん、また会おうね」と呟いた」 #1239

今回、8月に京都を訪れたのは“五山送り火”を見るためだ。これは、お盆の期間に帰ってきた先祖たちの精霊を再び送る行事である。なので、祇園祭など“お祭り”とは異なる。五山とだけあって、時間をずらしながら5箇所でそれぞれの文字や形が浮かび上がる(点火される)。このすべてを見ようとするとかなり大変と思われ、好立地にマンションを持つか京都タワー(抽選)へ登るしかないだろう。私は東山の“大文字”を見ることにしぼって、19時ごろに今出川付近へ移動した。この旅でも何度も訪れているが、やはり今夜は人が多かった。警察の方が誘導していたが、出町橋もパンパン。今となっては、ダイレクトに吉田山辺りへ行けば良かったかも。

良いポジションを見つけようと歩いているうちに、点火時間の20時になった。木の陰で見えないが、そちらの方から歓声が上がり始める。その波がこちらへ来るのが分かった。少し歩いてみると、私の目にもその光景が映る。月並みだが、本当に素晴らしかった。多くの人はカメラやスマホを構えだしたが、隣のご家族は手を合わせている。そのうち、男性が「お母さん、お父さん、また会おうね」と呟いた。私はもちろん観光客としてそこに立っていた。しかし、前述の通りに「これは精霊を送る行事なのだ」と改めて気がつく。その言葉に、思わず涙が出そうになった。幾つもカメラを持っていたが、結局は数枚でやめる。この目に焼き付けるために。


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