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『ぐんぐん読める英語長文』シリーズ刊行によせて

▼このたび,教学社様より『ぐんぐん読める英文読解』という問題集シリーズを刊行する運びとなりました。これは私の初の単著で,レベル別に3巻組というかなり大がかりなものになったため,2020年秋の構想開始から完成まで約2年かかりました(なお,BASIC が先に発刊され,STANDARD と ADVANCED は後からの発売となります)。

▼Amazonでは既に予約を開始しております。

【コンセプト】英文速読のための精読本

▼本シリーズのコンセプトを一言で表せば「英文速読のための精読本」だと言えます。ただし,「速読のコツ」をマスターする,といった安直なものではありません。

▼本シリーズは「英文を速読しようと思えば,実はこれだけ多くのことを知っておかなくてはならないし,これだけ様々なことが理解できていなければならないのだ」ということを知ってもらうためのものであり,いわば「楽に速読できる方法があるのではないか」という安直な速読幻想を打ち砕く問題集です。

▼「速読」と言うと,たとえば「スキミング(skimming)」「スキャニング(scanning)」といった方法を思い浮かべる人もいるかもしれませんが,本シリーズではそうしたことは一切扱っていません。まして「英文の各段落の最初の文だけを読む」などといった「まやかし」も一切ありません

▼本シリーズは,英文を読む速度を低下させる原因を突き止め,ただひたすらに「正しく考え,正しく読む」ために必要な知識や考え方を養うことに特化したものです

本書の特長

① 現状を知り,打破するための6つの仕掛け

▼ひとくちに「速読」と言っても,そもそも現状で自分がどれくらい速く英文を読むことができているのかをわかっていない人が大半なのではないでしょうか。そこで,本シリーズではまず,各 UNIT で設問がついていない白文を読んでその時間を測定し,現状でどのくらいの速さで読めているのかを認識してもらうことから始めています。

▼各 UNIT は以下のような構成になっています。

【STEP 1】語彙チェック英文を読む速度を低下させる最大の原因は「語彙力の無さ」です。そこで,英文を読む前にまず,本文中に登場する単語や熟語の知識をインストールします。なお,語彙力に自信のある人や,現状の語彙力でどれくらい読めるかを知りたい人は,STEP 1 を後回しにして STEP 2 に進んでも構いません(ただし,後で必ず STEP 1 を使って語彙をチェックしましょう)。

【STEP 2】通読+時間測定:指示に従い,時間を計測しながら課題の英文を最後まで読み通します。その際,わからなかった箇所や曖昧だった箇所に印をつけておきましょう。また,次のSTEP 3では本文を見ずに内容理解度チェックを行うので,その準備としてごく簡単なメモを取りながら読んでも構いません。

【STEP 3】内容理解度チェックSTEP 2 の英文を見ずに,内容理解を問う設問に解答します。ただし,STEP 2 でメモを取った場合,そのメモは見ても構いません。ここは共通テストのようなワークシート形式になっています。前半の UNIT では日本語によるワークシート,後半では英語のワークシートを埋めることになります(英語のワークシートには選択肢がついています)。

【STEP 4】英文詳解:STEP 2 の英文を1文ずつ詳細に解説しています。STEP 2 でわからなかったところ,曖昧だったところをここで確実に処理し,100%理解した状態を目指しましょう。

【STEP 5】音読:ネイティブの音声に合わせて,英文を音読しましょう。その際,まずはネイティブの音声を聞いて息の区切りに「スラッシュ(/)」を自分で入れ,その区切りに合わせて音読するようにしましょう。

【STEP 6】実戦問題演習&チェックリスト:総仕上げとして,STEP 2 の英文に入試問題タイプの実戦問題を付したものを解いてもらいます(設問はオリジナルで作成したものです)。既に読んで理解している英文ではありますが,いざ設問として問われると曖昧な箇所もあるかと思います。確実に解答できるようにしましょう。また,チェックリストを使い,各 UNIT の成績を記録したり,どこでつまずいたのか,何が自分の弱点なのかを記し,今後の学習の参考としましょう。

▼この6つの仕掛け(STEP)をクリアすることで,英文を読む速度を低下させる原因を発見→攻略することが本書の目的です。

② 素材は全て大学入試に複数回出題された英文(又は複数回出題された出典から)の「原典」を使用

▼本シリーズで使用している英文はすべて,過去の様々な大学入試問題で複数回出題されたことがある英文,もしくは,複数回出題された出典から引用した「原典」です(当然ながら,各出典の版元の許諾を正式に得て使用しています)。

▼また,大学入試問題では,学習指導要領などの範囲に合わせるために原典をリライトすることが多いのですが,本シリーズでは原典をリライトせずそのまま使用しています(※明らかな誤植とみられる箇所については,最低限の修正を施しています)。

▼原典のまま使用した理由としては,以下のようなことが挙げられます。

① 著作権法上,みだりに改変はできないこと。
② 原典をそのまま味わい,読める力を養ってほしいということ。
③ 複数の大学で出題されている英文の場合,大学によってリライトしたりしなかったりすることがあるため,原典のままが望ましいと判断したこと。

▼これらの理由から,本シリーズでは素材となった英文を原典のまま使用しています。そのため,高等学校の学習範囲を大きく超えるような語彙には注釈をつけてあります。

③ レベル分けはリーダビリティによる指標を使用

▼本シリーズは BASIC / STANDARD / ADVANCED の3つのレベルから成り立っています。このレベル分けは,リーダビリティ(readability)という指標を用いて数値化されたデータをもとに行いました。

▼なお,3巻の英文の長さと難易度は以下の通りです
・BASIC: 200-600語/ Readability: 5-9
・STANDARD: 300-800語/ Readability: 8-11
・ADVANCED: 500-800語/Readability: 11-13

▼同じ指標で2022年度共通テスト本試のリーディングの問題を分析すると以下のようになります。よって,BASIC はほぼ共通テストリーディングと同等のレベルの英文だと言えます(もちろん,リーダビリティはあくまでも一つの指標にすぎないため,完全に一致,というわけではありませんが)。
 第1問A: 7 第1問B: 4
 第2問A: 7 第2問B: 6
 第3問A: 6 第3問B: 7
 第4問: 6
 第5問: 11
 第6問A: 6 第6問B: 9

④ 設問がついていない英文で WPM(Words per Minute)を測定できる(おそらく)初めての大学受験問題集

▼「速く読む」といっても,現状で自分がどれくらいの速さで英文を読んでいるのか,それを把握したことがある人は実はとても少ないのではないでしょうか。大学入試向けの英文読解問題集は,たいてい,設問がついているため,純粋に最初から最後まで読む速さを測ることができません。

▼そこで,本シリーズでは STEP 2 で設問がついていないいわゆる「白文」を使い,どのレベルの英文をどれくらいの速さで読めるのかを測定してもらいます。また,計測用の特設サイトにアクセスし,各 UNIT の WPM(Words per Minute=1分あたりの単語数)を簡単に算出できるようになっています。

▼しかし,ただ速く読んだ,というだけで内容理解がおろそかになっていては意味がありません。そこで,白文を読んで WPM を測定した後,次の STEP では英文を見ずに内容理解を問う問題に解答してもらいます。これにより,ただ闇雲に速く読み飛ばすのではなく,内容理解を意識しながら読む習慣を身に着けてもらうことができます(※なお,白文を読む際にメモを取り,そのメモを見ながら内容理解を問う問題に解答することは構いません。しかし,あまり詳しく丁寧にメモを取ろうとすると,その分,読むのに時間がかかってしまいます。そのバランスをうまくとることも課題の一つです)。

⑤ 構文や語句だけでなく,文と文,段落と段落のつながりを意識した詳細な解説

 ▼STEP 4 の解説は,紙面の許す限り詳細に行っています。おそらく「ここまで解説しなくてもいいんじゃない?」と思うところもかなりあるかと思います。STEP 2 でわからなかったところをここでとことん攻略し,今後,同じ知識や同じ考え方を必要とする英文に出会った時に活用できるようにすることが狙いです。

▼BASIC 編に続いて,STANDARD(秋に発刊予定),ADVANCED(冬に発刊予定)も同じコンセプトで作られています。

▼一人でも多くの高校生,受験生,さらに,英文読解を学びたいという方々のお役に立てれば幸いです。是非お買い求めください!

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