ありがとう,さよなら,ポンタさん
▼家で原稿仕事をしていて,ふとネットのニュースを見た時,一瞬,息が止まるくらい驚きました。ドラマーの村上"ポンタ"秀一さんが亡くなった,という報せでした。私はご本人と直接面識があるわけではありませんし,生で演奏を拝見したのも数える程度でしたが,自分の好きなミュージシャンのバックでの演奏を通じて,ポンタさんの音はずっと耳になじんできましたから,「ああ,もう生で演奏を拝見できる機会はないんだな…」と悲しくなりました。
▼私がポンタさんの演奏を初めて生で観たのは,角松敏生さんのコンサートに行った時でした。そのツアーではポンタさんはメンバーではなく,石川雅春さんがドラム担当だったのですが,会場に行くと「村上"ポンタ"秀一・急遽参加決定!」と張り紙がしてあって,ツインドラムでの演奏となりました。
▼その時に衝撃を受けたのが,「ジャキっ!」という切れ味の鋭いハイハットの音でした。変なたとえかもしれませんが,よく切れる包丁で白菜をザクッ!と切ったような,そんな感じでハイハットを「切る」といった印象を受けました。私自身も趣味で少しドラムを叩くことがあるので,到底そんな音は出せないなぁ,と思っていました。
▼その後も角松さんのコンサートやライブハウスでの演奏を通じ,徐々にポンタさんの音になじんでいきました。しかし,実はそれ以前から,たとえばさだまさしさんの『帰去来』というアルバムの「胡桃の日」「絵はがき坂」などの演奏を通じてポンタさんの音を耳にしていたことにも気が付きました。ポンタさんが歌のバックで行う演奏は本当に「歌に寄りそう」感じがして,それでいて,ところどころ細かいところにポンタさんならではのこだわりもちりばめられています。
▼きっと今頃,天国で盟友の大村憲司さんや,角松さんのバンドでやライブハウスでよく一緒に演奏していた青木智仁さん,浅野祥之さん,小林信吾さん,その他,数々のミュージシャンたちと一緒に大セッション大会と酒盛りを繰り広げていることでしょう。
▼ポンタさん,素敵な演奏をありがとうございました。どうか,安らかに。
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