プーチン大統領の誤算の1つは欧州の「人の力」
3月初旬に重要な仕事があったため、コロナで若干躊躇しつつも数日間だけ英国に飛んでいました。そこで目にしたロシアのウクライナ侵攻に関するメディアの報道や人々から聞こえてくる声は、日本にいたら感じることができないものでしたので、どうしてもお伝えしたく筆を取りました。一般的な政治・外交のニュースからは見えにくいものの、今急速に巻き起こっている現象について簡単に触れたいと思います。
なお、本稿は3月2日に筆者のフェイスブックに投稿したものを転載しておりますので、ウクライナからの難民の数などが最新のものと異なる点、ご了承ください。
2月24日にロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始してから1週間が経とうとしています。ロシアの攻撃にはすさまじいものがあります。皆さまもニュースでご覧になっていると思いますが、首都キエフの住宅地域にミサイルが撃ち込まれるなど悲惨な状況となっています。
そのような中、ロシアのウクライナ侵攻はプーチン大統領の思うように進んでいません。日本のメディアは彼の戦略的判断ミスや戦術的な問題などを指摘していますが、個人的には欧州の人々の「人の力」がプーチン大統領の想定以上の強さを持っていたからだと感じています。
私が非常に心を動かされたのは、欧州のメディアや各国の市民たちが、一連のウクライナへの攻撃を自分たちへの攻撃のように受け止めていることです。英BBCはキエフの住宅地域への攻撃に対して「これらの破壊行為が「ヨーロッパ」の都市の住宅地域で起こっている」と報じ、我々の住むヨーロッパの一都市でこのような悲惨なことが起こっていると訴えていました。
また、ポーランドはウクライナからの難民を積極的に受け入れ、ライフラインとなっています。報道ではポーランド内の受け入れ施設の様子が移されていましたが、安心して来てほしいというポーランドの人々の温かさが画面からにじみ出ていました(国連の発表では2月28日時点でウクライナを離れた人は50万人以上。ポーランドはそのうち28万人以上を受け入れています)。
そして、ウクライナの人々が自国を守ろうとする力も予想をはるかに上回っており、プーチン大統領が思っていたようにはキエフを攻撃できていません。
EU(欧州連合)議会はウクライナ大統領との議論の機会を設け、EUはウクライナに5億ユーロ(約640憶円)の兵器供与などを実施すると発表しました。これらを欧州各国のメディアが逐一報じています。
ウクライナ情勢に関する米ロ対立において、当初欧州には積極的に関与したくないとの雰囲気がありましたが、実際にウクライナが攻撃されると、自分たちの「欧州」の一部が攻撃されているとの思いを強くし、それが「欧州の結束」を強めることになりました。今ほど人々が口にする「unite(団結する)」という言葉が心に響くこともありません。
冷徹なプーチン大統領が次にどのような手を打ってくるかには恐ろしさを感じますが、強硬手段に出れば出るほど、欧州の「人々の力」と「団結」が強さを増すということを認識し、停戦合意に向かうという冷静な判断をしてもらいたいところです(と書いてみたものの、プーチン大統領が自分のシナリオ通りに行かなかった時に簡単に引くとも思えず、、、打開策がなかなか見えないのが現実です)。
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