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「エムクオーティエ」中庭テラス席のサーモンパスタ@バンコク

 今年の1月バンコクに1週間の旅をした時のエピソードをひとつ。チャイナタウンが好きで各地で歩く話は前にも書いた。今回のバンコクでも旅行の後半に一度出かけた。アクセスは、タクシーで大渋滞を覚悟するか、MRTブルーラインのフアランポーン駅からけっこうな距離を歩くか、いずれにしてもやや難易度が高いものであった。それが2019年にブルーラインが延伸し、チャイナタウンの大通り、ヤワラート通りからすぐのところにワットマンコン駅がオープンしていた。地下鉄駅から上がればすぐチャイナタウンということで、すこし油断をしていたかもしれない。アソークの駅から楽々到着、ワットマンコン駅の内観も赤を基調の中国風のデザインが施されていて、気分がすこしアガるような気がしてくる。
 地上に出た瞬間、あまり広くない通りでいきなり人混みに囲まれてしまう。真っ直ぐにはけっして歩けない。今回1月のバンコクは乾季で比較的さわやかなベストシーズンだったが、チャイナタウンだけはすこしつらい暑さを感じた。それでもなんとかがんばって駅名の由来になっている立派なお寺にお参りした後、狭い路地を抜けてヤワラート通りに出て散策を試みた。
 喧騒のなか見知らぬ人にぶつかるのがいやで、右に左にジグザグに歩いていたら、なんだかすこし具合悪くなりクラクラしてくる。休まねばと思い、ヤラワート通りの大きな交差点のところにホテルがあって、1階にスターバックスが入っていたことを思いだす。冷たいオレンジジュースなどを飲んで一息つく。
 どうにか楽になり、今度はいかにも中国ふうのこのホテルの、ロビーなどを見学してみようと思いつく。「グランド・チャイナ」というとても立派な名前で、20階以上ある大きな建物だ。スターバックスを出てホテルのフロント、ロビーがあるゾーンに外から入り直すと雰囲気が一変、そこはバンコクの街中というより、中国の地方都市(行ったことないけど)のようだった。内装もインテリアも新しくはなく、和洋折衷じゃなくて中洋折衷(いわないか)のなんとも味わい深い世界が広がっていた。
 ロビーに隣接してラウンジのようなお店があり、ピアノが演奏されている。ピアノのほうに目を向けると、弾いてらっしゃるのは推定50過ぎの中国系のおじさんで、グレー系でくすんだ色合いのジャケットとシャツ、髪型は頭頂部かなり薄めの七三分け。弾き語りというか歌も始まって、エンゲルベルト•フンパーディンクの往年のヒット曲「ラストワルツ」なぜだっ! しかしながらなかなかの低音の魅力ではある。私には「異世界迷い込み感」が強すぎる。いかん、またクラクラしてきた。
 そんなこんなでだいぶ消耗して、滞在しているスクンビットエリアにもどる。今夜の食事はディープでないあたりさわりのない内容にしようと考える。泊まっているヒルトン最寄りのBTSプロムポン駅直結の瀟洒なモール「エムクオーティエ」に吹き抜けの中庭のようなスペースがあり、カフェレストランの外席が気持ちよさそうだと思っていた。ねらい通りのテーブルにひとりで座ることができた。ごくごく一般的なサーモンのパスタと具合のいいサンセールを2杯。とてもとてもほっこりする味と感じる。外席なのでバンコクの夜風も気持ちいい。自分と旅先の食事の関係はさまざまだと思う。

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