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「バーアンダンテ」のジントニック@仙台

 各地のお祭りやイベントが今年続々と再開している。前にも一度書いたことがある仙台の「定禅寺通りストリートジャズフェスティバル」もこの9月、3年ぶりに開催された。土曜、日曜の2日間だが、日曜日の午後、勾当台公園市民広場のステージにビッグバンドが次々に登場する時間帯にあわせて仙台に行った。感染症対策のため会場を減らし、さまざまな制限もありで、結果的にすこしステージが見えにくくなっていたが、それでも前にも聴いた東北大学の学生によるビッグバンドの演奏を楽しむことができた。
 公園内で少人数のバンドの演奏などをぼんやり聴きながら散歩をした後、夕刻になって仙台でお気に入りの「バーアンダンテ」に入り、ビーフィーターのジントニックを注文する。マスターと奥様でてきぱきと注文のお酒を供しておられる。このバーは以前から禁煙で、テーブル席はなくカウンターのみ、騒いでいる客も見たことがなく、理想のバーといえるだろう。公園を歩いてきてかわいた喉にジントニックが心地よい。旅先に行きつけのバーを持つ幸せをしみじみと感じながら、ついおかわりにウオッカトニックも注文してしまう。
 9月の日曜日の仙台の街は、ストリートジャズフェスティバルでにぎやかなのはもちろんだが、なんだかそれだけでなくはなやいでいるような気がした。気づけばあちこちに「第104回全国高等学校野球選手権大会 仙台育英学園高等学校 祝優勝」の、懸垂幕や看板やポスターがあった。
 そう、2022年8月の甲子園、仙台育英が優勝した。私の年齢の野球ファンであれば三沢高校の太田幸司さんのときから、強く意識した「白河越え」である。あれからもう半世紀以上になるのだろうか、ダルビッシュも大谷も佐々木朗希も、近年ではスーパーエースといえば東北と思うくらいだが、甲子園の優勝旗には、なぜか手が届かなかった。仙台育英は粒の揃った5人の投手を擁して継投で勝ち進んだ。投手たちのコンディション維持も、監督の采配も素晴らしいもので、高校野球の新しいかたちを示したようにも感じた。 
 文字どおり待ちに待った、仙台の、東北の宿願だ。「アンダンテ」のご夫妻と世間話をするうち、この夏の甲子園優勝の話になった。ちょうどストリートジャズフェスティバルの週末、仙台いちの百貨店「藤崎」で、優勝旗や選手が着用したユニフォーム、優勝までの戦いぶりを捉えた写真などを展示する企画展が行われていたそうだ。お店の常連のお客さんの話によれば「優勝旗は3時間ならんで4分しか見られない」とのこと。そう教えてくれたご夫妻の顔を見ると、それはそれは誇らしい笑顔にあふれていた。

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