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「酒亭ばんから」の酢の物@京都

 何度か書いているようにコース料理よりアラカルトを好む。居酒屋、割烹、ビストロ、ピッツェリアなどに入る。東京でも旅先でも、いつもその種のお店を探している。気がきいたメニューがあり、一品の分量が多すぎず、お値段手頃。そんな私の願望に合致するお店は意外に少ないものだ。居酒屋の場合たばこにも注意が必要だ。2020年の健康増進法の改正で、飲食店は禁煙になったはずなのに、「喫煙目的店」などの妙な理屈でたばこありの店がけっこうある。そんなお店に入ってしまったら、せっかくの食事が台無しである。飲食店でこんなに喫煙できるのはもはや世界中で日本だけではないかと思っている。まったくもって恥ずかしい。
 さて、京都はなんといっても外食のレベルが圧倒的に高く、カウンターで気楽にアラカルトを楽しめる和食店も多い。リピートしているお店がいくつかあるが、実家の用事があって、京都に何度か出かけたこの夏のある日、そのうちの一つ、先斗町の「酒亭ばんから」で一人夕食をとった。かつてここを見つけたときは、丹波育ちの東京在住、「洛中」コンプレックス満載の私にも、なんと先斗町に行きつけができたと感無量であった。ちなみに先斗町は鴨川と木屋町通に挟まれた南北の狭い通りの歓楽街で、いわゆる京都の花街の一つであり独特の風情があるが、昨今はオーバーツーリズムで人通りが竹下通り化している。
 この夏の凶暴な暑さのなか、東京と京都を何度も往復した私は、例年にもまして重度の夏バテで食欲もあまりなかった。「酒亭ばんから」のカウンターにおさまって、すばらしいラインナップの純米酒から一つ選んでちびちび飲み始める。よくできたメニューのなかから最初に注文したのが、じゅんさい、もずく、山芋の酢の物。われながら年寄りぽいなあと思うが、身体が欲していたのか迷うことなくチョイスし、しかもあっという間に完食。酸っぱさですこし食欲が出て、とうもろこしの天ぷらや丹波地鶏なども食べる。
 思うにメニューから自分でいろいろ選んで構成すること自体が外食の楽しみで、思いのままに好物を組み合わせて食事を完結させたい。私にとってお気に入りの店のメニューはそれ自体がある種の作品であり、そこから上手に注文するにはリテラシーが必要だ。そして一緒に食事する人のリテラシーも高いとうれしくなる。高級店でコースばかり食べている人は、人生の大きな楽しみを失っているのだと思う(大きなお世話か)

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