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「令和6年対策への対策」を考える

9月に入ったが、昼間は相変わらず狂ったように暑いか土砂降りかの二択に苦しめられている。日本の美しい四季は何処へ行ってしまったのだろう。

先月の終わりに、社会保険労務士の試験が実施されていた。
私もかれこれ…年前に社労士資格を目指し「かけた」ことがあったが秒で挫折し、講義で先生が強調していた、年金制度は二階建てだぞ〜というフレーズだけが妙に記憶に残っている。その他の年金制度に関する知識は小学生レベル程度しかない。
どうも私には合わないジャンルのようだったので、撤退して正解だった。再挑戦する気はさらさらない。
いつの日か独立開業できた暁には手近な社労士の先生を掴まえて懇意になり、労働相談とかが万一間違って持ち込まれたら即座に丸投げしよう。

その、社労士の合格発表日は司法書士のそれより数日早い。試験の実施は司法書士より2か月近く遅いにも関わらずだ。
もちろん試験の形式も採点方法も全く異なるため仕方ないとはいえ、司法書士は発表までが長い、長過ぎる。エチオピア饅頭(高知県民バージョン)。

その長い待ちぼうけ期間に、合否ライン上にいる受験生たちは徐々に精神を蝕まれていく。私を含め、複数年受験してくると、性格が徐々にひねくれてしまう者も出て来る。そして合格してからはそれに拍車が掛か文字数。
他人の揚げ足を取ったり謎のマウントをかましたりするのも、司法書士界隈では日常茶飯のようで、むしろ同情すべき特性である。この試験、失うものの大きさでも日本随一であろう。

しかし、前回書いたように私自身、今年は不思議と落ち着いた心境にいる。

前回記事は有料という形でご負担を強いてしまったが、思った以上に多くの方からご関心をいただき、かなりの数の方々が実際にお読みくださった。
何人かの方からは、参考になったとのご感想もいただき、全くの個人の体験談なのに何だか恐縮している。この場を借りて厚くお礼申し上げます。

それはともかく、そういったわけで今年は比較的落ち着いた心境ではあるがやはり、何かの拍子にふと、今年ダメだったらオバケに背後からうなじを逆撫でされる気持ち悪さを感じながら暮らしている。

そこでもう開き直って、一旦「来年目指すとしたらどう対策するかについての対策」を考えておくことにした。
一度真剣に「どう動くか」を具体的に考えておけば、10月10日午後4時にスマホの画面を見た瞬間もし目の前が暗転し世界が崩れ落ちたとしても、どうにか立ち上がれるのではなかろうか。
もちろん、私個人の計画なのでよい子のみんなはマネしないでくらはい。


「独学」という選択肢


これまで何度か申し上げて来たが、私は資格試験において「独学」という言葉を使うのにかなり抵抗がある。
この頃は「独学」とカッコ付きで表記したりしているのだが、よく考えてみると「独学」の定義をちゃんと理解していないような気がしてきた。

資格試験においての「独学」は、「予備校の講座を取らずに市販テキストだけで勉強すること」という解釈で正しければ、以下の与太話にお付き合いください。


今年上半期のNHKの朝ドラの主人公のモデルは牧野富太郎という日本の植物学の第一人者である。出身地に近い私の郷里も牧野さんのフィールドワークの舞台であり、もちろん地元では超有名人、小学生の頃に伝記を読んでからは自分も花の名前を調べたりそこら辺の山から引っこ抜いてきた(今は無闇にそんなことしてはいけない)植物の標本を作ったりして植物博士に憧れた。

その牧野富太郎とか、あるいは南方熊楠のような勉強スタイルこそまさに本当の独学と呼ぶに相応しいものだというのが、私のこれまでの認識だった。

今の時代、各予備校が出版している市販テキストはまさに百花繚乱、さらにウィキや各種サイトや立案者を筆頭とする専門家のブログや玉石混交YouTubeや合格体験記まで情報ツールがゴマンとある環境で「独学」を標榜するのはどうなのかと、時代錯誤甚だしいようだがいつもモヤモヤさまぁ~ず状態なのだ。

仮に、六法や判例集の他は内田民法や田中会社法、商業ハンドブック読んだだけで受かりました、というような合格者がいればそれはもうある意味独学の範疇に分類して差し支えなさそうだから、平身低頭してお詫びするだけなのだが、そこまで能力の高い人ならそもそも司法書士なんかよりもっと相応な法曹の場で活躍すべきだろう。

予備校の講師が作った市販テキストを読んで勉強するなら、それは「独学」というより「独習」あるいは「自習」とした方が良いのではないかと思う一方、オンラインで予備校の講座を一方通行で聴くだけの私のような孤独な学習スタイルもある意味、独習であり自習と言えるような気もする。とか考えだしたら何だかよくわからなくなってきた。

例によってどうでもいいことをまた長々と述べてしまったが、その「独学」だか「独習」はたまた「自習」スタイル、つまり予備校の講座を取らずに来年向けの受験に備えるとしたら、自分の場合どんな布陣でいこうか、今の時点で考えられる範囲で検討してみたい。


市販の基本テキストを物色するの巻


家から最も近い市内の書店二箇所(悲しいかなわが町には本屋がない)に、用事のついでに何度か足を運び、それぞれの資格コーナーの一角に直行した。
田舎の書店は、それなりの規模でも司法書士受験対策本のラインアップはさほど充実していないことが多い。一軒目と二軒目合わせてようやく、そこそこの比較対象となるシリーズが揃う感じだった。

さらに今の時期に書店に行くと、本試験終了から日が浅いため司法書士関連の書籍は改訂版がまだ出揃っていない。
仕方ないので、置いてある前年度版をそれぞれパラパラ立ち読みしてみた。

こうした市販テキストの存在を、私はつい最近までほぼほぼスルーしてきた。唯一、7〜8年前に予備校を伊藤塾に変えるキッカケになった必出3300選(当時は名称が若干違っていた)を購入したことがある他は、SNSで他の受験生たちがやれオートマだリアリだVマジだと推しテキストを誇らしげに披露し合っているのをへぇ〜と遠くから眺めつつ、毎年毎年講座に課金してきた。

自分の場合はペースメーカーとしての講義がないとたちまちサボる自覚があったことも理由だが、もう一つの理由としては、市販のテキストがどれも何だかしっくり来なかったからである。

長く利用してきた伊藤塾の中級コース講座用テキストは、前回も少し書いたが何度か変遷があり、入門テキストを使った年と、内容を絞ったエッセンス(だったと思う)テキストの年があり、私は入門テキストが気に入っていた。
エッセンスの方は、インプットアウトプット両方の機能を備えてはいたがLECのターゲットに比べるとレイアウトが微妙で私には見づらかった。

ちなみに伊藤塾では使っていたのは入門テキストだったけれど入門講座は受講しなかった。2023年9月現在では入門講座は3つのコースに分かれているらしい。
概要を見た感じでは中級コースとの境目がよくわからないが、選択肢が多いのは良いことなのかもしれない。


一方、LECのターゲットテキストは、去年今年と慣れ親しんでいるが、前回も書いたようにある程度学習が進んだ段階で使いこなせる内容なので、使い始めの頃はたびたび伊藤の入門テキストに戻って基本事項を確認していた。

いま手元にある伊藤の入門とLECターゲットは、どちらも令和3年度対策向けのものなので内容が古くなってしまっている(根本先生はターゲットとパーフェクトローラーを毎年交互に収録するため、私が受講した年はテキストも前年のものだった)。

伊藤の入門にしてもターゲットにしても、講座を購入しないとテキストは入手できないので、良さそうな市販テキストがあればそれを基本書として「独学」に挑戦してみようか、と今さらながら考えるに至った。

また、もし合格して受験勉強からはおさらばできたとしても、その先はさらに勉強しないといけないことが多いし、実際、開業して実務をされている先生も時に受験対策用のテキストでおさらいをすることもあるようなので、どっちにしても、手軽に手に入りきちんとした内容で使いやすい市販テキストのアタリを付けておけば何かの時には役に立つだろうとも思った。

基本書としてのテキスト選び


そういうわけで話を戻すと、書店の店頭で手に取ることができた3社分のテキストをいろいろ見比べてみた。

TAC山本先生のオートマシステム、辰巳松本先生のリアリスティック、LEC森山先生のVマジック、大雑把にまとめてしまうとどれも確かにわかりやすくそれぞれ工夫が凝らされていてファンが多いのも頷けるが、いずれも私には書き手というか語り手の「口調」が気になってしまうのが、何となく市販テキストを敬遠してきた理由だった。
どの先生が書いたとかは関係なく、司法書士試験対策本としてはどうも口語体の文章自体が苦手なのだ。

ちなみにいま勉強している簿記のテキストは口語体が気にならないが、法律の勉強のように深く読み込んで制度趣旨を理解するということがないから、さほど気にならないのだろう。

講義を聴き、必要があれば先生の脱線話や板書をメモしたり貼り付けたりして、自分ながらにテキストを「加工」する工程に慣れているので、テキスト自体はぶっきらぼうでも一向に構わず、あえてニコニコ寄り添ってくれる必要性を感じない。
市販のテキストは、そもそも「講義を聴いているような感覚で自学できる」ように作られている筈なので、最初から講師の口調で噛み砕いて解説されたり例え話が盛り込まれていてそれがわかりやすさを生んでいるのだが、私はそういう親切さが読み進めるのにむしろ邪魔だなと思ってしまうのである。たいへん身勝手で申し訳ないけれど。


さてどうしたものかと思いながら書店に並ぶ赤や黄色や青の背表紙に目を泳がせていると、オートマと同じ、TAC出版から出ているスタンダード合格テキストというのがあるのに気付いた。

もちろん市販テキストなので講座用とはサイズが違う(A5)し、そもそも発行元も違うので活字やデザインなど相当な違いはあるが、簡潔な書きぶりとすっきりしたレイアウト、該当過去問番号の載せ方など、伊藤入門テキストとの共通点もあり、私には好感が持てた(所々、若干言い回しが鼻に付く箇所があるにはある)。

難点を言えば、簡潔を通り越して素っ気なさ過ぎるというか、文章メインで図表がほとんど無いので眠気を誘いそうではある。
とりあえずは、過去問出題実績の多い箇所を重点的に押さえて、該当の条文を六法で確認しつつ繰り返しながら、徐々に全体を読み込んでいく感じにするか。
余計な引っ掛かりがない分、文章は読み進めやすそうなので、後はやる気とマーカーの使い方次第な気がする。

と、ひとまずそんな風にシミュレーションしてみた。
しかし、このテキストだと、直前期のアウトプットをどうするか問題は残る。最終的には図表を視覚的に押さえることも必要で、ターゲットテキストはその点で威力を発揮したのだが、読み込み系はそこは期待できない。
特に会社法や手続法は図表が多い方がありがたいのだが、店頭にないので確認しようがなかった。

読み込み効果と視覚効果のバランスが良さそうな点では、リアリスティックテキストに軍配を上げたい。私が上げる軍配なんぞ松本先生は嬉しくも何ともないだろうし、むしろ失礼極まりないことだが。
リアリスティックは年内から直前期にかけてもそのまま使えそうだが、松本ファンにはたまらないであろう時事ネタ的な解説などは何度も読む必要がないだろうから、墨塗りするなどの対策が必要になりそうだ。墨塗りが裏映りしない紙質かどうかも確認する必要がある。いやそれこそ失礼やろ。

やはり、どのテキストも一長一短あって悩ましい。どれを選ぶにしても、そもそも今の時点では先述のとおりまだまだ改訂版が出揃っていない。別に急いではないし、民法の親族の改正に対応したものが各社から出版されて書店に陳列されたら、その巻だけ購入して読み比べてみてから決めることも考えよう、という「対策の対策」をひとまず決めた。

そういえばつい先日、
松本先生のYouTubeチャンネルでちょうどこんな配信がされていた。

何てタイムリーなんだろう。
と言うか、だいたいの受験生(合格推定の場合を除く)が同じようなことで悩む時期ではあるので、当然と言えば当然なタイミングではある。

(ここで失礼の埋め合わせをしておくと、松本先生が収集し分析されている記述の開示答案の募集は、択一基準点を超えたなら是非とも応じた方が良い。分析対象として協力すると閲覧できるいわゆる松本レポートは、内容は一切口外できないが記述の答案を作成する際の心構えを大きく変える指針となり得る)

今なら!なんと!的なやつのことなど

それにしても、「独学」スタイルを選択することになっても、それなりに出費はかさむものだということに気付いた。
基本テキストの類いは、だいたい一冊3000円程度はするが、薄い厚いの違いとマイナーが複数科目で一冊にまとまっていることなどを加味し、仮にざっくり×8〜10冊だとして3万円弱。
もちろん他にも記述対策用テキストや問題集に雛形集、場合によってはアウトプット用や直前期対策の書籍も必要になるだろう。
過去問集や六法の類は予備校講座を取るにしても別途必要だが、パック講座に課金すれば勝手に付いて来る模試は、講座を取らないのであれば当然自分で購入しないといけない。

結局、何やかやで十万円程度はかかるのではないか?もちろん、組み合わせの工夫によってはもっと安く済むのかもしれないけど。

予備校の講座は、もちろん元々の価格帯が高いが、時期によっては割引がある。
そこはさすがにテキも商売なので、航空会社やホテル業者のように「早割」という名目でカモ…ゲホゴホ、受講生争奪のためのエサを撒く。
先ほどのもそうだが、別に宣伝料が入るわけでも何でもないけれど文章だけだと退屈されそうなので、何となくここでもリンクを貼っておく。

また、合格実績を上げるため(であろう)、模試や本試験成績が良かった受験生には次年度講座の割引制度をいろいろと設けている所もある。
実際に私は昨年度LECでターゲットのコース受講を申し込む時にそれで少なからず割引してもらった。
また、同じ予備校でも各校で独自の割引プランが用意されてたりもするので、もし独学(もうカギカッコを付けるのが面倒になってきた)スタイルから講座受講へ移ろうかとお考えの方は、ダメ元で問い合わせてみても良いのではないかと思う。
担当者の中には損得を超越したサービス精神を持つ人もいるので、近くに予備校があれば何らかの形で接点を持っておいて損はないだろう。私は自分がそうした地域に住んでいないので、予備校が身近にある受験生は羨ましい限りである。


この頃は価格破壊な予備校も増えてきて受験生獲得競争が激しくなっている筈なので、大手の予備校はパンフレットとかサイトに書いてなくても窓口とか電話でおねだりしてみたら何かしらのお得条件をぽろりと出してくれるかもしれない。知らんけど。

いつの間にか試験の攻略ではなく予備校攻略の話になってしまった。
いろいろ書いたが、やはり予備校講座を取るより市販テキストをうまくチョイスして学習する方が費用の上では安上がりであることは間違いないだろう。
もちろん、講座を受講する中でしか手に入らない情報…テキストには載らない(載せられない)講師のこぼれ話から得られる情報といったものは、お布施を払った者の特権ではあるけれど。

長年、司法書士受験というカネのかかる宗教にどっぷり浸かってきた私自身の感覚が麻痺しているせいもあるだろうし、値引き幅の大きさに惹かれてついつい高価な方を買ってしまう傾向、さらにはそもそも金遣いが荒いという県民性、そういうものが相まって、湯水の如く(というほどでもないか)予備校へ課金してきたが、もうそろそろ、市販のテキストで勉強してもいいだろう。遅すぎた感もあるが。

不安な点は、予備校の講座だと、逐一先生がテキストのここは重要だ頻出だとか、ここは読まなくていいなどの指示をしてくれるのだが、市販テキストだとどうなのかということだったが、
山本先生のオートマだとそういうアドバイスまでされているようなので親切だと思った。

そしてオートマには中上級向けのオートマプレミアという、本のサイズも内容もコンパクトなシリーズが用意されていることもわかったが、こちらはどちらかと基本書ではなくアウトプットに使えそうな感じだった。価格も2000円台とお手頃なのも良い。
何だか択一対策もTACに寄って行きそうな気がしてきたが、やはりまだ結論を出すには材料が足りない。

ちなみに六法については、今年と同じく
森山先生の司法書士合格六法をまた購入するかもしれない。以前はポケ六をバラして自作のカバーを付けて悦に入っていたが、モリリン六法の活字の大きさに慣れてしまったのでもうあの頃の私には戻れそうにない。


来年、できれば受験しない方向を希望するが、いろいろテキストを物色していると新しい教材で勉強してみたい気持ちもちょっと湧いてきた。
いくら何でも来月の10日を過ぎればもう少し涼しくなっているだろうから、それなりにやる気は出る…かな。わかんない、えへへ🥹


ともあれ、一度書店で見ておいて良かった。これで少し気が楽になった。
記述対策については、まだ先でもいいだろう。


というわけで、今回はこのあたりで。
いい加減に簿記の勉強を進めなければならない。それこそもう、何かしらの講座に課金して尻を叩いてもらう必要がありそうだ。

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