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ライカQ3 43に揺れる会社員

始祖

ドイツに生まれたオスカー・バルナックは、カール・ツァイスという会社で働いていた時に小型カメラのアイデアを思いつく。しかし売り込みをするも賛同は得られず、後にカール・ツァイスを去った。転職先はヴェッツラーという場所にある光学会社、エルンスト・ライツだ。そして、1914年に35mmフィルム(映画用)を使う24×36mm判のカメラを試作した。現在では、この試作品を“ウル”と呼んだりもする。試作品のうちの1台には、焦点距離42mm相当のレンズが搭載された。42mmは、24×36mmのライカ判(所謂フルサイズ)の対角線長が約43mmであることを加味して選択したのだろう。結局、この“ライ”ツの“カ”メラが市場に出たのは1925年のこと。販売時に選ばれたのは、42mmではなく50mmのレンズだった。と、ここまでは広大なインターネッツに多く散らばっている話である。



結論

この度、ライカのQシリーズに“Q3 43(以下:43)”というカメラが加わった。これまでQシリーズには焦点距離28mmのレンズが採用されてきた歴史がある。だが、43はその名前の通りに焦点距離43mmのレンズが付いているのだ。それ自体は以前からの噂通りのため、私ことアラサー会社員に驚きはない。ところが、レビュー動画や具体的な情報に触れると「ちょっと待って、これ良くない??」という思考になってきた。揺れる想い体じゅう感じて、とはZARDの名曲の一節である。43の魅力を解明すべく、私は渋谷の奥地へと向かった(某探検隊風)。その結果、私は買わないことに決めたのだ。つまり、この記事の趣旨はこれにて終了。以下はこの判断に至った背景や理由の紹介となる。皆様の参考にはならないことをご了承いただきたい。なお、お時間がある方はしばしお付き合いを願いたい。


統合先

私は関東の田舎に暮らし、コロナ禍からは在宅仕事をしている。そんな生活も4年目になるが、昼休みはソニーのa7IVを持って近所の散歩へ出るのが習慣だ。それこそライカのQ2やM11モノクロームもすぐに持ち出せる状態だが殆ど選ばない。その理由は、a7IVに付けているシグマの28-70mmのレンズが田舎にマッチしているからだ。完全なる私的な考えだが、私の住む田舎はストリートスナップで活用されるような広角レンズで撮るほどの雄大な景色はない。基本的には花や木にフォーカスしたり、たまに会う隣人(野良猫)を撮っている。ゆえに、ズームレンズというのが重宝していてライカたちの出番は少ないのだ。もちろん、純粋にシグマの写りが好きだということも加えておきたい。Q2は75mm(約700万画素)までクロップが可能だが、a7IVと比較するとやはり多少の荒さを感じてしまう。

その点、43はQ3無印と同様に6030万画素になっている。43mmスタートということもあるのか、約3.5倍の150mm相当までのクロップが可能となった。約1.7倍の75mでも2000万画素程度になる。プロの会社員としては、それだけあれば文句はない。つまりはa7IVとそのレンズたち一式、およびQ2を売却して43に集約できるのではないかと考えたのだ。ソニーのクリエイティブルックは好きなのだか、先のズームレンズと組み合わせると鈍器のような重さになってしまう(意見には個人差があります)。Q2は、日常のスナップはもちろんのことテーマパークや旅行でも重宝している。が、M11モノクロームとエルマリート(28mm)の組み合わせが完璧すぎて「お前(Q2)はもう少し標準寄りの画角で良いのでは?」という気持ちが芽生えてきた。こうした点からも、43は有力な折衷案に見えてくる。

SONY α7IV + SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN Contemporary
SONY α7IV + SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN Contemporary
SONY α7IV + SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN Contemporary
Leica Q2
Leica Q2
Leica Q2

買えないカメラとレンズ

2台のカメラやそれに付随するものをすべて売却すると、43の販売価格の半分以上になった(見積もりでは)。ただ、買わなくて済むならそれに越したことはない。今年はMシステムが誕生して70周年という節目なので、年末にかけて新たな製品が出る可能性もゼロではないだろう。それを買う・買わないは別にしても、生きていれば貯蓄は必要になる。そもそも43よりも前に購入検討をしていたのは、リコーのGRIIIx HDF(焦点距離40mm相当)だった。しかしながら、これまで4回ほど購入に向けた抽選にチャレンジをしているが箸にも棒にもかからない。仮に抽選に当たったとしても、無料で貰えるわけでもないし。タイム・イズ・マネーとすると、この“待ち時間”が辛くなってきた。それに比べて、現在のところ43はお店で購入できそうだ。どれだけ条件が良くても、ずっと買えないカメラは意味がない。

もう少し“良さげ”なポイントを綴るならば、43はアポズミクロンというレンズが採用されている。アポクロマートは光の三原色であ・・いや、私が綴るまでもないだろう。ざっくりと、色収差の補正(アポクロマート)がしてあるズミクロン(絞り開放値がF2のレンズ)と表現すれば遠くはない。主にMシステムの交換レンズで存在しているが、人気の焦点距離35mmや50mmは希少性も値段も高く色々な意味で手に入らない状態だ。それが、43には付いている。35mmや50mmではないので残念がる方もいるだろうが、私は「ぜったいに35か50が良いの!」という気持ちはないので特に気にならない。実際に撮影した写真を見ても、焦点距離というよりはその写りに関心した。ただ、これがMシステムのアポズミクロン・シリーズと同等かと問われればそうではないだろう。動画も撮れる機種なりの癖はありそうだ。


期待と現実

私が密かに期待していたのは、この43を使った現象済みフィルムのデジタル化(デジタルデュープ)だ。ある方法でのデジタルデュープを検討しているのだが、機材を用意するのにそれなりの金額が掛かる。そうした状況で43がアポズミクロン搭載で登場したのでハッとした。以前の記事で綴った通りQ2でも出来なくはないが、かなりクロップをする必要があるので完璧とは言えなかったのだ。前述した統合先としてのメリットもあるし「標準に近い43mmならば、もう少し余裕を持ってデジタル化ができるのでは?」と思い、私は渋谷の奥地へ向かったわけである(奥地:ライカ表参道店)。そこで試させてもらった結果、私の期待通りとはいかなかった。人生、なかなか上手くいかない。そうなると話は変わり、43ではなくても良いという判断に至る。さらに綴るならば、某カメラ店が記載していた注意点が気になった。

それは「同梱するレンズフードを付けると純正フィルター類が装着できない」という事。実機を確認したが、確かにそのようだった。今後は分からないが(対応フィルター発売など)、剥き出しで持ち歩くなんてガサツな私には不可能である。もしかすると別売りの丸いレンズフードであれば干渉せずにフィルターが付けられるかもしれないが、検証した訳ではないので各自にお任せしたいと思う。これらのことから、43の購入は完全に見送りとなった。当然ながら、私の期待や用途にマッチしなかっただけでカメラ自体は良いものだと思う。質量はQ2よりも重いことになっているが、持ってみると意外と軽く感じた。動画も8Kで撮影可能ということで、両方を撮る方には申し分ないスペックなのではないだろうか(細かな良し悪しは別として)。43をきっかけにライカを知る方もいるだろう。ここに新たな間口が誕生した。

渋谷の奥地

これまで

始祖(あとがき)

オスカー・バルナックは、1936年に56歳でこの世を去った。現在も続くMシステム(M型)が発売されるのは、彼の死から何年も後のこと。大袈裟に表現すると、Q3 43はライカが自らの原点に帰った機種と言えるかもしれない。交換レンズで焦点距離43mmを販売しているのは、ペンタックスぐらいではないかと思う。ライカがミノルタと技術提携していた時代(1972年頃)、“CL”というフィルムカメラが誕生した。その専用レンズとして“ズミクロン C 40mm F2”が作られたが、以降に同じ焦点距離の純正レンズは販売されていない(と思う)。バリューとしては、アポズミクロンの50mmレンズの方が良いのではないか。という評価や批判は当たり前に織り込み済みなのだろう。そこに“43”という焦点距離に対する強い意志を感じる。私的な願望を綴るならば、いつかMシステム用でラインナップしてほしい。



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