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観光プロモーションに関する論文の紹介

埼玉女子短期大学研究紀要 第35号 2017.より引用

日本の観光プロモーションについての一考察 DMOにおける多言語観光情報発信を中心に 

 
A StudyofTourism PromotioninJapan FocusonDisseminationofMultilingualTouristInformation inDestinationMarketingOrganization
── 三ツ木 丈浩

要旨:観光を重要な産業と捉え、今後も、外国人観光客数を維持、さらには増加させていくため には、「国」「都道府県」「市町村」レベルでのDMOが有機的に結び付き、デスティネーション・ マーケティングを展開する必要がある。その中でも、DMOの観光情報発信は極めて重要であり、 多言語化や外国人ニーズを汲んだ内容をプロモーションする必要がある。



訪日外国人の観光情報収集について

DMOである「日本政府観光局のホームページ」から得た情報が、17.0%と比較的高かった一 方で、同じDMOであり、都道府県レベルのDMOである「地方観光協会のホームページ」から得 た情報が、6.1%とあまり多く無かった結果となった。  また、「旅行会社ホームページ」から得た情報が、18.1%、「宿泊施設ホームページ」から得た情報が、14.0%、「航空会社ホームページ」から得た情報でが、9.7%というように、直接、観光 客が関わる企業から得る観光も多いことが理解できる。旅行会社やホテル・旅館等の宿泊施設、 航空会社、各々企業のマーケティングに対して、DMOは積極的に関わり、従前にも増して、デ スティネーションの魅力をプロモーションしていくことが必要である。特に、「都道府県」レベ ルのDMOは積極的に行っていく必要があるものと考える。
「インターネット(スマートフォン)」で得た旅行情報が、 56.4%と圧倒的に高いことである。パッケージングツアー客であろうと、個人旅行であろうと、 持ち運びが容易であり、利便性の高い為、スマートフォンの活用が高いということである。この データから日本滞在中だけでなく、世界中を旅する観光客にとって、現地で観光情報を得るツー ルとして最も活用できるものが、「スマートフォン」であることが理解できる。また、同様に、 インターネットを介在する「インターネット(パソコン)」が、22.1%と高いことからも、無料 のWi-fi設備の有無が訪日外国人観光客にとり、重要かつ、観光満足度に繋がることが言えるので はなかろうか。


都道府県レベルでの観光情報発信

訪日外国人観光客を誘致する目的の一つに、「地域経済の活性化」、「地域創生」の旗印として 期待されている。訪日外国人の旅行形態もパッケージ旅行からFITへシフトしていること、図- 1でも理解できるように、双方向のソーシャルコミュニティの構成は、これまで形成されてきた 「観光ガイドブック」や「パンフレット」、「企業からの観光情報」から提供される部分的な観 光情報の提供から、「都道府県」および「市町村」レベルでの「より細分化された」、「より差別 化」されたデスティネーション・プロモーションを展開することが可能となる。つまり、より訪 日外国人のニーズを叶えることが可能となる。つまり、「十人十色の観光ニーズ」に増して、「一 人十色の観光ニーズ」に応える機会が増えるということである。

観光情報の発信および手法の変化

今後はますます、スマートフォンを活用したリアルタイム、双方向受発信、いつ でもどこでも受発信可能なユーザー参加形態をとるWeb3.0を中心とした観光情報の受発信が 「鍵」となってくる。特に、「スマートフォン(スマホ)」は、片時も離さず持っている現代人に と っ て、必 要 不 可 欠 な も の で あ る。ス マ ホ を 活 用 し たSNSに お い て、「ブ ロ グ」か ら 「Instagram」等のビジュアルコミュニケーションにシフトしている。画像へのハッシュタグを 付ける等は勿論のこと、「SNS映え」する画像が、誰もが想像しないような影響を与えることも 理解し、上手に連携・活用していくことが求められる。
、「都道府県」レベルでのデスティネーション・マーケティング行う際に、「ホーム ページの多言語化」を推進することが必要不可欠である。  中国繁体字や中国簡単字での案内は観光客を誘致する場合、必須の言語である。高い観光消費 が見込め、また、エリートビジネスマンをターゲットとするためにも、ドイツやフランス、ロシ アなどに対してもプロモーションを展開する必要がある。まだ観光市場として、開拓が十分に行 われていない状態である。さらに、インドネシア語、ロシア語、ベトナム語でのホームページ閲 覧を中心に、アラビア語、マレー語、ヒンディー語でホームページが閲覧することが可能になれ ば、訪日旅行者数を増やす機会を創造することになるものと考えられる。
、多言語化での観光情報の提供には直接関係が無いように思われるかもしれな いが、何よりも、「日本のホスピタリティ」と「安全」の素晴らしさを強調する必要があること を述べておく。訪日した外国人旅行客の「47.8%」が「大変満足」、「44.8%」が満足と答えてい る。つまり、訪日外国人旅行者の90%以上が満足して、帰国していくのである。通常の「口コ ミ」は勿論であるが、SNSを活用して、日本での旅行体験が世界に拡散される。ただ単に、デス ティネーションの「ソフト」、「ハード」の観光資源が良かっただけではなく、日本人との接点、 「ヒト」との関わりも含めての体験すべての評価だと言えよう。ホスピタリティは直接の観光資 源にはならないが、「日本人」に対するイメージの良さは、旅の満足度、リピーターの確保、良 い情報の拡散に大きな影響を及ぼすものと考える。今後は、この観点を含め、検討していきたい。