八女慎司

八女慎司

最近の記事

さらに審査に付すべき旨の審決

この条文を覚えておられるだろうか。拒絶査定不服審判の審決には「特許審決」、「拒絶審決」の他に、この「さらに審査に付すべき旨の審決」がある。 しかし、あまり見かけないでしょう。今回はそれを見てみます。 最新の案件 最も新しい「さらに審査に付すべき旨の審決」(以下、160条審決と呼ぶ)は2018年。もう5年も160条審決は出ていないようだ。 進歩性欠如による拒絶査定に対し、補正と審判請求が行われた。しかし、この進歩性判断に用いる主引例の表示に誤りがあり、さらにこの補正は新

    • 技術分野と29条・36条の傾向

       先日、審査官ラボさんが発表した一発特許査定率のグラフを見た。  一発特許査定は少数派だ。つまり審査請求された出願のうちの大半は、何かしらの拒絶理由が通知される。  拒絶理由と一言でいっても様々あるが、どういったものが打たれているのだろうか? 例えば新規性・進歩性か、記載要件かで、拒絶理由の性格も違えば受けたときの対応も違う。ここでは、29条系と36条系の拒絶理由の通知率を調べてみた。  対象は2015年1月1日以降の出願に対する、最初の拒絶理由通知とした。調査日は20

      • コロナ特許の一番乗りはだれ?

        この記事は、知財系 Advent Calendar 2021の参加記事です。 はじめに知財業界ではコロナの影響でリモートワークが当たり前になりました。知財の仕事は、独りで書類と向き合う作業が多いので、知財とリモートワークは相性がいいのではないでしょうか。リモートワークバンザイ\(^o^)/ コロナが終息してもリモートワークは続けたい! さて、2019年末から始まった新型コロナのパンデミックですが、早2年が経とうとしています。特許出願は1年6月で公開されるので、新型コロナ関

        • 米国特許の新規性と非自明性はこう判断されるらしい

           この記事はパテントサロン主催の知財系ライトニングトーク #14 拡張オンライン版 2021 秋 の発表です。  米国特許の特許要件として新規性と非自明性がありますが、米国の非自明性は日本の進歩性より厳しい印象があります。米国審査基準の厳しさなのでしょうか。審査官の属人的な厳しさもあるように感じます。  そこで、USPTOの審査官の研修資料から、新規性と非自明性に関する資料Combined 102 & 103 Workshop Training (Summer/Fall 2

        さらに審査に付すべき旨の審決

          米国企業の特許明細書を分析してみた

           この記事は、知財系ライトニングトーク #12 拡張オンライン版 2021 春の参加記事です。  日頃、外国出願人による日本語明細書を読んでいて、読みづらいなあと感じています。日本語として不自然だからというのもありますが、そもそも外国出願人の明細書の構成が、日本の出願人の明細書の構成とは違うのかもと気になりました。  また、日本の出願人が米国に出願する場合には、通常、日本語明細書をそのままの構成で翻訳して出願します。その観点でも日米の明細書の構成にどの程度の差異があるのか知

          米国企業の特許明細書を分析してみた

          10年後の弁理士の年齢分布を予想してみる

          知財系 Advent Calendar 2020の12日目です。 この記事では、将来の弁理士の年齢分布を予想してみたいと思います。 弁理士会では、弁理士年齢分布を公開しています。2020年の分布は次のとおり。 40代がボリューム層になってますね。では10年後はどうでしょうか。みんな+10歳になるので、50代がボリューム層になりそうですね。でもそれでは新規登録者と登録抹消者による増減が考慮されていません。そこで、2015年と2020年の年齢分布から登録者・抹消者の人数を導い

          10年後の弁理士の年齢分布を予想してみる