米国企業の特許明細書を分析してみた
この記事は、知財系ライトニングトーク #12 拡張オンライン版 2021 春の参加記事です。
日頃、外国出願人による日本語明細書を読んでいて、読みづらいなあと感じています。日本語として不自然だからというのもありますが、そもそも外国出願人の明細書の構成が、日本の出願人の明細書の構成とは違うのかもと気になりました。
また、日本の出願人が米国に出願する場合には、通常、日本語明細書をそのままの構成で翻訳して出願します。その観点でも日米の明細書の構成にどの程度の差異があるのか知りたいですね。
そこで、本記事では、GAFAM(Google, Amazon, Facebook, Apple, Microsoft)のソフトウェア特許の明細書の構成を調べてみました。各社1件ずつ見た結果を示しますが、精度はあやしいので、軽い気持ちでお読みください。ちなみに選び方ですが、なるべく短いのを探しました!
以下、各社の明細書の構成(かっこ内は段落番号)です。
Google: 特表2021-504772
技術分野(0002)
発明の概要(0003-0006)
背景技術、課題(0009-0011)
システム構成、機能構成(0013-0022)
情報処理フロー(0023-0029)
表示画面(0030-0032)
ハードウェア構成(0034-0047)
Amazon: 特表2020-530220
背景技術(0002)
発明の概要(0005-0020)
システム構成、機能構成(0022-0042)
情報処理フロー(0043-0063)
ハードウェア構成(0064-0077)
リクレーム(0080-0099)
Facebook: 特表2019-528599
技術分野(0001)
背景技術、課題(0002)
発明の概要(0005-0007)
効果(0008)
システム構成、機能構成(0009-0042)
表示画面(0043-0050)
情報処理フロー(0051)
Apple: 特表2019-526094
技術分野(0002)
背景技術、課題(0003-0004)
発明の概要(0005)
効果(0006)
システム構成、機能構成(0017-0033)
表示画面(0034-0047)
情報処理フロー(0048―0068)
ハードウェア構成(0074-0088)
Microsoft: 特表2020-533664
背景技術、課題(0001-0003)
発明の概要(0004-0007)
システム構成、機能構成(0011-0057)
表示画面(0058-0065)
情報処理フロー(0066-0082)
ハードウェア構成(0083-0091)
リクレーム(0092-0097)
以下、各項目ごとに総括してみます。
・背景技術、課題
5件とも背景技術は記載されています。しかし、先行技術文献を記載している出願は1件もありませんでした。日本は先行技術文献の開示が明細書の記載要件とされているので、日米の特許法の違いによるものですね。
また、4件には従来技術の課題が記載されていますが、Amazonの出願には課題らしき記載が見当たりませんでした。ストーリーがわかりづらいですが、余計な課題を書いて権利範囲が限定解釈されるのを避ける狙いでしょうか。
・効果
効果をまとめて記載している出願もあれば、明細書全体に効果を散らばせている出願もありました。いずれにせよ基本的には効果は記載するのが一般的のようです。
・システム構成、機能構成
日本の明細書で頻出の○○部という機能部は登場しません。これも日米の文化の違いですね。
・情報処理フロー、表示画面
情報処理フローと表示画面の説明は日本の明細書と同様ですね。
・ハードウェア構成
5件とも実施形態の序盤でシステム構成、機能構成が記載されています。ここでハードウェア構成にも多少触れられているのですが、4件は明細書の最後にハードウェア構成を詳細に記載するスタイルでした。発明のポイントではないからでしょうか。
以上、米国企業の明細書を分析してみましたが、全体的な構成としては日本の明細書とあまり変わらない印象です。ハハハ。読みづらいと感じでしまうのは、結局、日本語として不自然だからかもですね。